プロローグ
ーーさぁ、準備は整った。青年はそう思ってほくそ笑んだ。
外では雷が轟く中、『魔王城』と呼ばれる場所の謁見の間で、2人の男女が相対していた。
女はボロボロの格好で倒れ込み、男は何事もない様子で玉座に座り、独り言の様に語り始めた。
「いやね、僕の妹がさ、幼馴染の男と良い感じなんだよね。妹に彼氏が!と思わんではないんだけど、16歳だし、相手の男も妹が好きで、強いし性格良いし人望もある奴だから良いかなって。だから、僕としても妹の恋を成就させてあげたいわけ。たださぁ、その男は妹の騎士なんだけど平民あがりなんだよね。王族と平民が結婚って、普通は無理じゃない?だからどうしようかなと思ってたんだよね。」
とうとうと語る彼に、女が口を開いた。
「一体、何が言いたいの?私は貴方に敗れた。早く殺しなさい。」
そんな女の言葉など聞いていないように男は話続ける。
「そしたらさぁ、君たち魔族が攻めてきてくれたわけ。そこで僕は考えました。『彼を勇者にして魔王討伐の功績を挙げさせれば良い』と。」
女は疑問を口にした。
「魔王たる私をすでに貴方が討伐したじゃない。一体何を言いたいのかわからないわ」
女の疑問に男が答えた。
「討伐?僕は君を討伐してないし、する気もないよ。お願いを聞いてもらおうと話し合いにきたら、君たちが襲撃してきたもんだから、仕方なくお仕置きしただけ。」
女は引き攣った顔で言う。
「お仕置きって、、、一応私は歴代魔王の中でも最強と言われているし、部下達も人間よりも大分強いはずなんだけど、、、、。」
女は続ける。
「それで、貴方は私に何をさせたいの?魔族は強者絶対。私は貴方に従うわ」
女の言葉に男は満足そうに頷き、目的を話始める。
「うん、話が早くて助かるよ。さっきも言ったけど、目的は『妹の想い人に魔王討伐の功績を挙げさせて、結婚できる状態にする』こと」
あとね、と言って男は続ける。
「僕は王様になりたくないんだ。あ、僕は王位継承権が第三位なんだけど、兄2人も王様やりたくないらしくて。僕に弟はいないし、法律的に妹は王様になれないから、このままだと僕にお鉢が回ってきそうなんだよね。」
男の話に女は疑問を口にする。
「それなら仕方ないじゃない。私は何もできないわよ。」
女の否定に男は答える。
「ところが何とかなる方法がある。僕の国って、元々は初代魔王を討伐した勇者が建国したらしいんだよね。だから、王位は基本的に男子が継承するんだけど、例外として“勇者”は最優先で王様になるんだよ。加えて、王族の女と結婚が必須となっている。」
ここまで聞いて、女はようやく理解した。
「なるほどね。勇者に私を討伐させて、貴方の妹と勇者を結婚させて王位を継がせるのね。妹さんも相手の男も貴方も万々歳ということね。」
男は満足そうみ頷き続けた。
「理解してもらえて嬉しいよ。じゃあ、協力してもらいたいから、これから詳しい話詰めようか。なぁに、君たちにとっても悪い話にはしないから」
そう言って、男は満面の笑みを浮かべた。
初作品です。続きが気になってくれる方がいれば続けようと思います。