51選定の儀へ
「選定の儀の準備ができました」
「わかりました」
とうとう呼ばれ、聖女クラス全員で連れ立って聖堂へと移動する。
ここからは学校の行事ではなく、国の行事になるため、シェリたちは着替えていた。
「とうとうやな」
「スッキリするといえば、スッキリするのかしら」
先頭を歩くのはセボである。クロンと軽口を叩きながら、足を進める。
彼女が身にまとうのは紫のドレス。帝国の王族しか切ることを許されていない高位の服装だ。デザインとしてはシンプルでレースや刺繍は最低限になっている。
その後ろに付き従うのはサーヴァ。セボと同系色のドレスを身にまとっているが、彼女のものより色が濃く、その代わり刺繍が多く施されている。
目立たないようにしているものの、見るものが見れば力を入れていることは一目瞭然だった。
(セボさんがサーヴァさんに位の低いものを着せるわけないものね)
サーヴァは従者であり、セボの影に徹する。同じ位の服装をさせることはできなくても、手がかかった服を着せることでバランスをとったのだ。
相変わらず、よく頭が回る。
シェリは感心しながら、その後ろを歩くジャンヌとクロンを見る。
ジャンヌは薄い水色のドレスを身にまとっていたが、形が違う。スレンダーな肢体を引き立たせるように流れるようなラインを作っていた。
足元もシンプルでこの中では一番動きやすいだろう。
(着飾ることより、動きやすさをとったわね。あの下に短刀ぐらいありそうで怖いわ)
普段からジャンヌは腰に剣を佩いている。
家宝であり、強さの証明らしいのだが、女子でその格好は目立つことこの上ない。
いつだかにはドレスにもつけようとしたので、シェリは慌てて止めたのだ。
クロンは面白そうに笑っているだけだった。見ているくらいなら止めてほしいところだ。
(クロンは卒のない着こなしね。流行を取り入れつつ、自分に一番似合うものをしっかりと選んでいる)
今、王都では布を豊富に使う部分と肌を露出する部分の対比が激しいものが流行していた。
だが貴族の間では品がないと口さがなく言う者もいる。
それに比べ、クロンのドレスは対比を重視しながら、顰蹙を買うような派手さはない。きちんと自分のドレスに取り入れている。
そしてーー
「シェリさま?」
シェリの前を歩いていたイオが小さく振り返る。
止まったことに気づいたようだ。少しだけ空いた距離を早足で詰める。
イオの姿はシンプルな白と淡いピンクのドレスだった。
散りばめられた刺繍とフリルが可愛らしさを強調している。
「とても、よく似合っているわ」
「これ、シェリさまに教えてもらったお店で作ったんですよ」
イオが笑う。
それはとても愛らしくて、可愛らしいのだけれど、この場面で笑っていられる心の強さに驚くばかりだ。
「そう、役に立ったなら嬉しいわ」
「はい!」
「ほら、二人共行きますえ」
少し 距離の開いた二人にセボの声がかかる。
目の前には大きな扉。聖堂と廊下を区切る正面扉だ。レリーフが一面にあしらわれており、いつもは開放されているため、閉じた状態で見ることは少ない。
この先で、シェリたちは選定を受ける。
そう思うと否応なしに緊張感が増し、シェリはしばらくレリーフを睨みつけていた。
歌謡祭の結果を踏まえた選定の発表はもうすぐそこだった。
*
六人が三人ずつ二列に並んだ。
先頭のセボが一番左、その後ろがサーヴァ。
真ん中にジャンヌとクロンが並び、一番右端に、イオを前にしてシェリたちティーア国が並ぶ。
縦に見れば、国ごとに並んでいる形になる。
「素晴らしい聖歌だった。歌謡祭の評価を含め、聖女選定の結果を伝えようと思う」
誰もが口をつぐみ、独特の静寂が聖堂を満たしていた。
シェリたちより前にあるのは祭壇だけであり、この儀式を見守る多くの教会関係者と貴族は聖堂の半分より後ろに配置されていた。
神官長であるジャルジュを伴って殿下が中央に立つ。滔々とした声が、聖堂によく響いた。
ついに、と思わないはずがない。
この瞬間のために、小さい頃からずっと努力を重ねてきた。
この一年は特に大変で、聖女の修行より、周りの仕出かしたことの尻拭いばかりをしていた気がする。
「この度の儀式を行う聖女は、バイオレットとする!」
その宣言が聞こえた時、肩の力が抜けていく。
シェリの人生の大半をかけたものが終わった。
今まで、本物の天才たちに囲まれてよくやってきた。嘘つき聖女が、ここまでこれただけで十分だ。
悔しさがないと言えば嘘になる。それでも、我慢して、受け入れようとした。
「……謹んで、お言葉」
「待って、流石にそれはおかしんやないの?」
「そうよそうよ。宝珠の輝きは見ていたでしょう?」
人が抗議したい気持ちを抑えて頭を下げているのに、この天才どもは少しも気にしないようだ。
シェリの声を遮るように言い放ったのは、セボとクロン。間違いえるわけもない。
殿下の前に立ち頭を下げることもなく堂々と文句を言っている。
いくら他国の王族だからと言って、ここまで文句を言えるのはすごい。
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