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 殿下の頭の痛い発言を無理やり切り替える。

 出てしまった命令は拒否できない。

 ならば、無事こなせるように準備をするだけだ。

 

「……図書館に行きましょうか」

「図書館ですか?」

「ええ、そう。まぁ、ついてきて」

 

 ピンときていない顔をするイオにシェリは理由を説明する。

 聖女候補が討伐した魔物については、毎回報告書が提出される。

 場所や魔物の種類、討伐方法など、研究にも使われる資料だ。 これを書くのも聖女候補の義務と言えた。


「聖女伝説は幅広く出ているけれど、魔物討伐の報告書もあるのよ」

「知りませんでした」

「まぁ、普通、読む必要はないからね」


 シェリはイオに肩を竦めて見せる。

 騎士から出されるものと聖女が書くものがあり、当然、専門性は騎士のものの方が高い。今回イオには騎士の書いたものを読んでもらおうと思った。

 聖女と魔物の話は伝説となり、劇として民衆にも広く伝わっている。

 この国の住人であれば、誰でも好きなシーンの一つや2つあるものだ。


「あ、このシーン、好きです」

「神の降臨と聖女の契約ね。いろんなバージョンがあるのよね」

「そうなんですか?」

「そうよ。時間があるとき、読んでみるといいわ」

 

 図書館から引っ張ってきた本を寮に持ち込む。とりあえずと選んだものだったのだが、その量は思ったより多かった。

 図書館の職員にも手伝ってもらって、やっと運べたほどだ。

 目の前にどんどんと積まれていく本に、イオは少しだけ目を白黒させていた。

 通常であれば、小さい頃から、聖女関連の本を読み込んでいく。

 それから実践となるわけだが彼女には時間がない。

 シェリは本の山に手を置きながらイオに尋ねた。


「さてと、イオは討伐についてどれくらい知っているのかしら」

「まだ、聞いたことしかありません」


 本が積まれた机の前に座り、小さく首を横にふるイオは、素直な学生をそのまま絵に描いたような姿だった。

 その瞳は真剣な色を帯びている。聖女の仕事である魔物討伐では少なくない負傷者が出る。

 シェリは死者が出ないことを目標にしている。

 負傷者ゼロも目指したいが、とてもじゃないが言えなかった。

 イオの場合は、彼女の力自体、聖属性だ。聖属性ならば治癒も行える。

 被害も少なくできるだろう。

 

「あなたの場合、魔物さえ連れてきてもらえれば、討伐は簡単だと思うわ」

「そうなんですか?」

「聖属性は、魔物に一番有効とされているの。それほどダメージを与えなくても、消すことができるはずよ」


 イオに教えるために、魔物討伐の基本的な流れを図にして書く。

 

「まずは発見」


 これは騎士によって行われている場合がほとんどだ。

 聖女候補はその場所に行き、情報の確認を行う。


「次が追撃ね」


 これは、魔物に攻撃を加え、弱らせることだ。方法は人によりけりで、シェリの場合は騎士との連携が大切になる。

 ジャンヌやクロンなどは、属性も攻撃的だし、彼女たち自身の攻撃力も高いため、自ら追撃に加わっている。


「最後に消滅」


 文字通り、魔物の消滅だ。

 普通の動物と違い、魔物は体など何も残さずに消える。


「やることが一杯ですね……!」

「やらなきゃ、被害が大きくなるからね」


 説明しながら、やるべきことを書いていく。

 あくまでシェリがやっていることだ。他の聖女候補たちがどうやっているかは知らない。

 イオは小さく唸りながら、シェリが書いた聖女のやるべきことを眺めている。

 その姿がまるで小さい子供のように見えて、シェリは小さく微笑んだ。

 真面目なのは良いことだ。

 自分たちが失敗することで、街にも民にも被害が出てしまう。


「基本的には騎士の人たちが、魔物について特徴や攻撃などを調べておいてくれるわ。それを元にどうやって追撃をするか、作戦を立てる感じね」


 現場に行かなければわからないことはたくさんある。

 魔物の特性や騎士との連携はもちろん、見ないと地形や足場はわからない。いくら地図の情報があるとはいえ、雨が降っただけで足場の状況は変わる。地形自体が変わっていることだって、ざらにあるのだ。


「できるかな」


 一通り、討伐の流れを学習する。

 すべてが終わったあと、イオが不安そうにこぼす。

 それはいただけない。シェリにとって、魔物討伐とはしなければならないことなのだ。

 何より、シェリはイオならできると確信していた。


「できる、できないじゃなくて、するのよ。私達にできるのは、どれだけ準備するかだけ」

「……そうですよね」


 まだ不安そうな顔をする。

 シェリは大きく息を吐き出した。

 ぴくりとイオの肩があがり、苦笑する。


「不安なのはわかるわ。でもイオなら大丈夫よ。私も手伝うしね」


 ぽんぽんと背中を叩く。

 視線を合わせるようにして、にっこりと微笑む。

 強張っていた肩から力が抜けるのが分かった。


(力になれれば、いいのだけれど)


 手伝うなんて言っておきながら、どれだけのことができるというのだろう。

 イオの力は強い。

 自分にできるのは、彼女が不安にならないようにサポートするくらいだ。


「とりあえず、週末は買い出しに行きましょう」

「はい。よろしくお願いします!」


 少しだけ元気を取り戻した姿に、頷く。

 週末はローブや食料、袋、防寒具などを見に行くことにした。

 イオはシェリ以外からも魔物討伐の話を聞いているようだ。

 聖女クラスで珍しく話の中心にいる彼女をシェリは遠くから見守っていた。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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