表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/96

6-7. 空飛ぶ伝説の宮殿

 しばらくして吹雪が収まり、ヴィーナが言った。

「ふふっ、もういいわよ!」

 目を開けると、巨人は居なくなり、宙を舞っていた女性たちも皆フロアに降りて自由に動いていた。それぞれ、長きにわたる異常な拘束からの解放に感激している。

「うわぁぁぁん!」「やったわぁ!」

 長き囚われの時を経て、今、彼女たちは自分の人生を取り戻したのだった。喜び、抱き合う彼女たちの歓喜の声は胸に響く。

 あの、赤いリボンだけのブラジャーをしていた子も喜んで抱き合っている。俺は思わず涙ぐんでしまった。


「良かった……」


        ◇


 ドロシーはビキニアーマーで褐色の肌の女の子を見つけると駆け寄った。

「あのぅ……」

 褐色の彼女は不思議そうにドロシーを見つめ、言った。

「どなた……ですか?」

「覚えてないと思うのですが、実は私、あなたに助けられたんです。私だけでなく、あなたの勇気でみんなが救われました」

 そう言いながら、ドロシーは涙をポロリとこぼした。

「え? 何のこと? ヌチ・ギの野郎はいつかぶっ飛ばしてやると思ってたけど、ずっと動けなかったのよ?」

「その想いに……、助けられました……、うっうっうっ……」

 ドロシーは感極まって泣き出してしまった。

「おいおい……」

 褐色の彼女はちょっと困惑したが……、優しくドロシーを抱きしめた。

「良く分かんないけど、ここにいるみんなは私が助けたってこと?」

「うっ……、うっ……。そうなんです」

「ははっ、そう言われると悪い気はしないね」

 そう言ってドロシーのを優しくハグした。

 ドロシーは、彼女のしっとりとした柔らかい肌に温められ、心から安堵した。


 褐色の彼女は周りを見回し、

「あれ? 男が一人いるぞ……」

 と、つぶやいた。

 すると、ドロシーは急いで離れて、

「あ、あの人はダメです!」

 と言って、真っ赤になった。

 褐色の彼女は、

「あはは、取らないわよ」

 と、うれしそうに笑った。


        ◇


 ヴィーナは歓喜の声の上がる彼女たちをうれしそうに眺め、

「じゃぁ、レヴィア、彼女たちを(ねぎら)いなさい」

 と、指示した。

「ね、労うってこんなにたくさんをどうやって……?」

 青くなるレヴィア。

「ん、もうっ! 役に立たないわねっ!」

 ヴィーナはそう言うと扇子をぐるっと回した。


 ズズーン!

 轟音を立ててホールの上半分が吹き飛んだ。


 いきなり現れた青空に唖然(あぜん)とする俺たち。

 陽が傾いてきて、遠く南アルプスの山々も(かげ)って見える。


「シアン、船呼んで、船」

 ヴィーナはシアンに声をかける。

「まーかせて! きゃははは!」

 楽しそうに笑うとシアンは腕を振り上げ、腰をキュッキュッと回し、不思議な踊りを踊った。

 すると、空に漆黒の闇がブワッと広がり、ウネウネと動き始める。何だろうと思ってみているとやがてそれは空を覆いつくす巨大な影となり、次の瞬間、ズン! という重低音と共に巨大構造物が姿を現した。


「へっ!?」

 ヴィーナは素っ頓狂(とんきょう)な声を上げる。

 その巨大構造物は一つの街がすっぽりと入りそうなサイズで、ゴウン、ゴウンと重低音を発しながらゆっくりと頭上を動いている。


「あんた! これ、私ん()じゃない! 私が言ったのは『船』! こないだ作った宇宙船呼べって意味よ!」

 ヴィーナはシアンに怒る。どうやらシアンはヴィーナの自宅を持ってきてしまったようだ。


「あれ? きゃははは!」

 わざとやったのか何なのか、シアンはうれしそうに笑った。

 巨大構造物は前方上側がガラス造りの巨大パビリオンのようになっており、下半分と後部は純白で全面に宝石がちりばめられていた。それはまるで真っ白な砂浜にルビー、サファイヤ、エメラルドの巨大な宝石をばらまいたような質感で、宝石は自らもキラキラと発光しながら美しい輝きを無数に放っていた。そして、金色のラインが優美に船首から後部にかけて何本か走り、まさに空飛ぶ宮殿という(おもむ)きだった。

 これがヴィーナが住む居城……、俺はそのあまりの現実離れした美しさに言葉を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ