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5-3. ご安全に!

 しばらく行くとエレベーターがあった。ガラス製の様なシースルーで、乗り込んでよく見ると、壁面はぼうっと薄く青く蛍光している。汚れ防止か何かだろうか? 不思議な素材だ。

 出入口がシュルシュルと小さくなってふさがり、上に動き始めた。すぐに宇宙港の全貌が見えてくる。直径数キロはありそうな巨大な輪でできている居住区と、中心にある宇宙船が多数停泊する船着き場、そして、眼下に広がる巨大な(あお)い惑星に、夜空を貫く天の川。これが神の世界……。なんてすごい所へ来てしまったのだろうか。

 居住区は表面をオーロラのように赤い明かりがまとわりついていていて、濃くなったり薄くなったりしながら、まるでイルミネーションのように星空に浮かんでいる。そして、同時にオーロラの周囲にはキラキラと閃光が瞬いていて、まるで宝石箱のような(きら)びやかな演出がされている。

「綺麗ですね……」

 俺がそうつぶやくと、

「宇宙線……つまり放射線防止の仕組みじゃ」

 と、レヴィアは説明してくれる。

「え? じゃ、あの煌めきは全部放射線ですか?」

「そうじゃ、宇宙には強烈な放射線が吹き荒れとるでのう……。止めて欲しいんじゃが」

「止められないですよね、さすがに」

「ヴィーナ様なら止められるぞ」

 レヴィアはニヤッと笑って言った。

「え!?」

 俺は驚いた。この大宇宙の摂理を女神様なら変えられる、という説明に俺は唖然(あぜん)とした。

「ヴィーナ様は別格なのじゃ……」

 レヴィアはそう言ってひときわ明るい星、太陽を見つめた。

 科学の世界の中にいきなり顔を出すファンタジー。サークルで一緒に踊っていた女子大生なら神の世界の放射線を止められると言うドラゴン。一体どうやって? 俺はその荒唐無稽さに言葉を失った。


「そろそろ着くぞ。気を付けろ! 手を上げて頭を守れ!」

 いきなり対ショック姿勢を指示されて焦る俺。

「え!? 何が起こるんですか?」

 気が付くとレヴィアの髪の毛はふんわりと浮き上がり、ライオンみたいになっていた。そうか、無重力になるのか! 気づけば俺の足ももう床から浮き上がっていたのだ。

 到着と同時に天井が開き、気圧差で吸い出された。

「うわぁ!」

 吸い出された俺はトランポリンのような布で受け止められ、跳ね返ってグルグル回ってその辺りにぶつかってしまう。

 無重力だから身体を固定する方法がない。回り始めると止まらないし、ぶつかると跳ね返ってまたぶつかってしまう。


「お主、下手くそじゃな。キャハッ!」

 レヴィアはすでに車輪の無い三輪車みたいな椅子に座っており、こちらを見て笑う。

「無重力なんて初めてなんですよぉ! あわわ!」

 そう言ってクルクル回りながらまた壁にぶつかる俺。

「仕方ないのう……。ほれ、手を出せ」

 そう言って俺はレヴィアに救われ、椅子を渡された。

「助かりました……」

「じゃぁ行くぞ!」

 レヴィアは椅子のハンドルから画面を浮かび上がらせ、何やら操作をする。

 すると、二人の椅子は通路の方へゆっくりと動き始めた。

 空港の通路みたいなまっすぐな道を、スーッと移動していく俺たち。

「うわぁ、広いですね!」

「ここはサーバー群の保守メンテの前線基地じゃからな。多くの物資が届くんじゃ」

「サーバーに物資……ですか?」

「規模がけた違いじゃからな、まぁ、見たらわかる」

 ドヤ顔のレヴィア。


 すると向こう側から同じく椅子に乗った人が二人やってくる。

「ご安全に!」

 レヴィアが声をかける。

「ご安全に!」「ご安全に!」

 彼らも返してくる。俺も真似して、

「ご安全に!」

 そう言って、相手の一人を見て驚いた。

 猫だ! 顔が猫で猫耳が生えている! 俺は思わず見つめてしまった。

 猫の人はウインクをパチッとしながらすれ違っていった。

「お主、失礼じゃぞ」

 レヴィアにたしなめられる。

「あ、そ、そうですね……。猫でしたよ、猫!」

 俺が興奮を隠さずに言うと、

「お主、ケモナーか? 我も獣なんじゃぞ」

 そう言ってウインクしてくるレヴィア。

「あー、ドラゴンはモフモフできないじゃないですか」

 するとレヴィアは不機嫌になってバチンと俺の背中を叩く。

「おわ――――!」

 思わず横転しそうになってしばらく振り子のように揺れた。

「お主はドラゴンの良さが分かっとらん! 一度たっぷりと抱きしめてやらんとな!」

 そう言って両手で爪を立てる仕草をし、可愛い口から牙をのぞかせた。

「お、お手柔らかにお願いします……」

 俺は言い方を間違えたとひどく反省した。

 

 それにしても猫の人がいる世界……、とても不思議だ。実は俺も頼んでおけば猫の人になれたのかもしれない。次に機会があったらぜひ猫をやってみたい。

 俺はそんなのんきな事を考えていた。レヴィアがとんでもなく無謀な計画を立てていることにも気づかず……。


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