重力レンズ考古学
天文学がはじまって以来、天は地上に向かって下降をはじめた。見上げること、遠くを見ることしかできなかった観測と計測は、視点を投げ上げることで地上に向かって照射されるようになった。観測と計測と記録で地上が飲み込まれた先で、逆照射された観測が見てきた筈の風景を、まだ誰も見ていない風景を映し出す。
高妙38年9月、残暑で弛んだ肌を引き締める澄んだ午前0時2分、天保観測院望遠鏡は1000光年離れた宇宙空間に鏡を発見する。鏡面性天体と名付けられたその天体は、正確に2000年前の観測地を映し出していた。