06 共有ストレージ
もう少し書きたかったけど二話に分けます。
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私の名前は[シグマ・π]
騎士のコスプレをしたシグマタイプだ。
時空歪曲の爆発が起こったとき、『私たち』は最後尾にいた。
私たち…そう私の他に[シグマ・ξ][シグマ・ο][シグマ・ρ]がいた。
「これ…マズくない?」
「こうゆう時どうするんだっけ?」
「とにかくバフかけておけば大丈夫でしょ」
どんなことが起きても、私たちは離れない。
マスターが遊び半分で作った[パーティー機能]はそうゆう物だ。
「意識が飛びそうかも…」
「レン姉…大丈夫かな?」
「あの人なら大丈夫でしょ」
「だけどこの身体は持ちそうにないよね?」
「そうだね…こうなるとどうなるの?」
「私たちはプログラムじゃないから…身体が壊れたら誰かの体に転生するんじゃない?」
たしか、そんな話をマスターから聞いた。
「こことは別の世界行く可能性が高いけど、ボクたちだけは同じ世界に行くよね?」
「そのはずだよ?」
「それなら安心だね」
「転生ってどんな感じかな?しっかり記録しないと!」
青白い光が身体を包み込んでいく。
ああ…ファンタジー系の世界に転生するのであれば、本当の騎士になりたいな…。
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怯えと苦しみ…。
アンデットの時とは違い、私自身が初めて感じた感情だ。
目を開けると、知らない男が私の首を絞めていた。
私は不思議と冷静だった。
男の胸元に手をあてて、掠れた声で呟いた。
「おいで…[聖剣s・ρデスサイズ]…」
金色に光る粒子が、男の胸元を突き刺し、聖剣を型どり、黒く光る粒子がその剣の先端に、死神の鎌の刃を型どった。
私はそれを両手で支え、男を蹴り飛ばした。
その男は胸から頭にかけて真っ二つになった。
「なっ…!?」
「なんだこいつ…化け物か!?」
男の仲間だろうか?酷く怯えた表情を見せている。
辺りを見回すと二人の大人の遺体があった。
私はそれを見て怒りと悲しみを覚えた。
この身体の記憶からして、あの二人は親だったらしい。
「あ…あ…ああああああああぁぁぁ…」
泣き叫びたい…苦しい…痛い…。
私は武器を構え、男達に飛びかかった。
宙を舞う血と肉片…音の無い酷い叫び…。
ほかから見ればそれは、地獄絵図だっただろう。
一瞬で片付いたが、私の身体は悲鳴をあげていた。
この身体には、まだ馴染んでないらしい。
そんなことよりも、親の墓を立てないと。
私は親の遺体をかついで家を出た。
身体の記憶をたどりに歩いていると、景色がいい丘に着いた。
ここはよく、家族みんなで遊びに来ていた場所だ。
ここにお墓を立てよう。
二人を埋め終わったので、一度家に戻ることにした。
家の中は先程と変わってなかった。
まず男達の死体を調べると 、家紋の入った短剣が見つかった。
その家紋には見覚えがあった。
「[グラノーツ帝国]の暗殺貴族…」
グラノーツ帝国…元いた世界でも聞いたことがある。
ああ…そうだ…。
あの国は、よく[真似っ子]する国だ。
こちらの世界でも、似たようなことをしているらしい。
それなら…そこを滅ぼすために、これからどうしようか?
そう考えながら、壁に飾れれた一本の剣を見上げた。
父親の剣だ。
この家の貴族の位を表す剣でもある。
今の私には必要のないものだと思うが、親の形見として持っていこう。
私は荷物をまとめた。
もうこの家には戻ってこないだろう… 。
油をまいて、家の外に出て火を放つ。
こうゆう時に[θ]が居てくれたら、一瞬で灰になるのに…。
向かうのは[王都エクエール]。
近ごろ、『グラノーツ帝国と戦争をする』という噂が流れている国だ。
この機会は、利用させてもらおう。
私は、燃え朽ちる我が家を背に、王都へと足を進めた。
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「巫女様〜、巫女様〜、どこにいらっしゃいますか?」
「ここだよ〜」
「巫女様‼そんなところで何をしているんですか!?危ないですよ!早く屋根から降りて来て下さい‼」
「ことわる!ここの方が村全体を見渡せる。それに景色もいいし」
そう言って私は辺りを見渡した。
「やはり…この世界は、元いた世界に地形が似ているな」
元いた世界の地形に合わせると、ここは…おそらく時空歪曲の爆心地だろう。
この世界では、忌々しい生物兵器工場ではなく、和風な大きな里になっている。
やはり、別次元の世界線だろう。
調査をしたいと思うが、[聖炎の巫女]というものになってしまったので、この里を出られないでいる。
「巫女様〜…そこを動かないでくださいね?捕まえますから‼」
「[ユカリ]ここに登ったら危ないよ?」
「その言葉そっくりそのままお返しします‼」
彼女はユカリ…私の小さい頃からの傍付きだ。
少しドジっ子だから、登ってきてほしくなかった。
「うわぁ‼」
あっ…やっぱり落ちた。
私は建物を飛び降り、空中でユカリをキャッチした。
「だから危ないっていったのに…」
「巫女様のせいですよ」
「『巫女様』ねえ…。私がいつそんな名前になったのかな?」
「うっ…いじわるです!」
「本当の名前で言ってよ?」
地面に着地してユカリを地面に下ろした。
「いつも言ってるじゃん。二人だけの時は名前で言ってって…」
「…様…オミクロン様…」
「いい子だ…よしよし」
「うう…」
ユカリの頭を撫でると目線をそらして恥ずかしそうにした。
「それで、なにかあったの?」
「あ…そうでした![中央国家サァーディア]がグラノーツ帝国の兵士を連れて、こちら側に進軍しているという情報が隠密隊から入りました」
「そうか…サァーディアがグラノーツと組んだか…。だが妙だな…あの誇り高きサァーディアが、そうそうアイツらに力を貸すはずが無いはずなのだが…」
「少し前、中央国家サァーディアの国王が病気で位をおりたという話が本当ならば…」
「そうだとしたら…内情を今すぐ捜査しなければ!休暇を取らせたいとこだが…悪いが、隠密隊に行かせるしかないようだな」
「はい、急ぎ連絡します」
私の指示を受けると、ユカリはすぐさま伝書鳩を隠密隊に向けて飛ばした。
「オミクロン様はどうされるのですか?」
やっと外に出られる。
遠くから自分と同じ気配を感じる。
ああ…楽しみで仕方がない。
「私は…正門前で出迎えの準備をしよう」
そう言って私はユカリの返事を待たずに、正門前へ向かった。
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