31 過去も別世界
異変にここまで気がつかないことは、今まであっただろうか?。
セーフエリア内には、残りの生徒の反応が無い。
どこにいったのだろう。
まるで自分自身が、そのことを考えないようにしているような感覚に襲われる。
「まずいな…」
頭を殴り、正気を取り戻す。
ドクドクと血が滴り落ちる。
「はぁ…そういうことか…」
目の前に出てきた状況で理解する。
「久しぶり…いや…初めましてかな?ボク?」
ミリタリー系のメイド服を着た少女が、瓦礫の山に座っていた。
彼女の足下には、行方不明の生徒達が横たわっている。
彼女はボクだ…。
おそらく、何かあった未来のボクだろう。
「この崩壊間近の世界に、なんの目的できたの?」
「ボクなら話さなくても、読み取ってくれるでしょ?」
まぁ、やるのは簡単だからな…。
「キミのあの子たちを生き返らせるの?すべてが消えて無くなったから?」
「そう、そのためのデータ回収。だから、キミの子たち…α、β、Γもボクのところにいる…。
終わった返すつもりだったけど、あいにく今のボクは自由の身じゃないし…」
「そっか…いいよそのままで…。そういえば…キミは、ボクの本当の任務を覚えてる?」
「…今のボクには関係ないよ。あの人たちを裏切ったのだから…」
「ああ…まぁ…別にいいよ…。そろそろその子たちを返してもらっても構わないよね?」
「いいけど、一人で運べる?」
「?…手伝ってくれるの」
わざわざそんなことしなくてもいいのに…。
何かあるのだろうか?
違う次元のボクでも全てが一番近い位置にいるボクだ。
少し興味をそそられる。
「いいこと思いついた!」
「何?って…そんなことしても大丈夫なの?」
「大丈夫でしょ。だってキミはボクだから」
繋がった自分は裏切れないよね?
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「あ…戻ってきた」
残りの生徒を抱えた人影が一人、船に入ってきた。
「これで全員揃ったね!」
「それじゃぁ、この世界から脱出するよ〜」
雨お姉ちゃんは指揮官用の座席に座りながら待っていた。
この人にまた会えるとは思わなかったな…。
「じ〜」
「何か?」
「なるほどね〜、『レン』その子達は医療塔においてきて、あと何人かキミに話したい子がいるからお茶に誘うといいよ」
「了解…雨お姉様…」
ボクは生徒達を抱えてその部屋を出た。
「やっと…ボク達も動き出せるようになるね〜…。お兄ちゃん…」
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「あ…お疲れ様〜れ…レン姉」
「ιこそお疲れ様」
彼女はカイのιだ。
早速、カイの連れてきた衛生兵と医療塔で仕事をしているみたいだ。
「彼女達をよろしく」
「了解!ボクにまかせて〜!」
生徒達をιに渡して、ボクは艦内を見て回ることにした。
この船はもともと、移動要塞として作られたものだった。
計画はもちろんお蔵入り。
当時の技術では重力下の運用はできなかったからだ。
それに目をつけたのが天音 雨…。
彼女は技術的革新において、常に最前線に立っていた。
この船を作るきっかけになったのは、ボク達の下の兄妹たち…増えすぎたクローンのためである。
世界の外にばら撒かれた情報により、非正規のクローンがあちこちの世界で作られた。
パーツ、仕組みは違えど、外見はボク達にそっくり同じ。
時間が流れるほどソレは増え続け、世界の数ほど広まっていく。
排除か保護か解体か、ボク達にはその権利があった。
ボク達の罪というより、アイツのしりぬぐいだろう。
そんなアイツにボクの心が惹かれるとは思いもしなかったが…。
「…?」
肩を叩かれ振り向く。
「お疲れ様〜レンお姉ちゃん」
「アイツらも大丈夫そうでよかったな」
カイとクウカだ。
「うん?」
「どうしたの?」
「何でもないよ〜。…そうだ、ネクロが捕まえた子達、ここの施設で再調整受けるらしいよ〜」
「それにしても…ここ…、広くて迷子になりそうだな…」
「1つの小大陸だからね。娯楽施設から訓練施設、生産施設とかいろいろあるみたいだからね〜」
「そういえば…ここのヤツが仮面とかフルフェイスの装備つけてるのって、何か意味があるのか?」
「それは、ボク達に似た顔だからだよ?」
「え…まさか?」
この船にいる者のほぼ全てが、ボクらの兄妹たちでありクローンなのだ。
カイも、それには気がついてるだろう。
「そうだ、生徒達はどうなった?」
「ほぼ全員…招待された部屋にこもりっきりで、外に出てくる気配は無いな…。あんなことがあった後だとあれが普通だろ…」
「カイの方は?」
「こっちは大丈夫だけど…、士気が下がってるかな〜?今はみんなゆっくり休ませてあげたいけど…働いてた方が気が紛れるていう人もいるし…」
すこしなれておいた方がいいか。
もう来ないと思ってた休日を楽しもうとするか…。
「フレアも他の子も誘ってさ…遊びに行かない?」
「いいのか…?そんなことして…」
「ボクOKだよ〜!さっそくフレアに言ってくる!」
すごいスピードでカイはフレアを呼びにいった。
「元気だな…」
「若いね…あの頃のボクと大違いだ…」
「そうだな…オレもオマエも変わったな…」
本当にずいぶんと可愛くなったものだ。
なるほど、あの時殺しておいて良かったんだろうな。
そうなら…あいつも…。
はぁ…バカな考えだ。
全ては結果論でしかないのに。
「そうだ…アイツにも連絡入れておかないと…」
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