30 過去も別世界
おまたせ?
信号弾が上がった場所についた。
思ったより被害は少ないようだ。
一般人よりも身体能力が高いだけはあるな…。
強化外骨格が無いのに、よくやってくれている。
「5人ひと組で戦え!かけた分はカバーしあって確実に倒せ。この際クラスなんて関係ない…互いが互いをカバーしろ!」
「「了解!!」」
まぁわかっていたことだが、ボクの言うことより、生徒会長のストレバの言うことの方がしっかりきくよな…。
隣にいたフレアとカイはすぐに生き残りの正規軍の援護に入った。
「みんな!他に生存者はいる?」
「おい!みんな!総司令と∑部隊の隊長が来たぞ!」
「やっぱり無事だったか!さすがだな!」
さて…こちらもいくか…。
リミッターを全部外すか…試験もかねて。
身体中の血液の流れが早くなり、全身に引き裂かれるような痛みが走る。
ぐったりとした身体を起こし、目を開くと目が赤く光る。
これでボクは平常値に戻った。
「耐久性…反応速度…クリア…システムオールグリーン…」
さて手加減はどこまでいけるだろうか?
「シグマ・レン…この度…敵勢力の掃討を開始します」
「全員撃ち方止め!一気に後退しろ!!」
「セーフエリアまで後退!!このままだと巻き込まれるかも!」
何かを感じ取ったのだろうか?
ストレバとクウカ、カイとフレアは、いっせいに指示を出して、部隊をセーフエリアまで避難させた。
「前方向に味方の生体反応、及び死体反応なし…」
手を横に薙ぎ払うように振った。
━━━ズン━━━
その時…時間が止まったように、誰もが感じただろう。
ほんの一瞬の瞬きの間に、目の前が砂の更地になったのだから…。
「は…?」
「いっったーい!はぁ…腕が…フレームがぁ………。って、あ〜…ほとんど消し飛んじゃっちゃったか〜。力加減すると逆に力が入って、身体に負担かかるし…威力も大きくなるのか…。うーん…理論上だと上手くいくはずなんだけどな〜」
右腕が使い物にならなくなった…。
コレはιに始末書を書かなくてはいけなくなったな…。
右腕を外し、新しく再生させる。
「化け物…」
1人の生徒が呟いたのが聞こえた。
「はは…それがどうしたのさ?化け物だから何?キミもさ…これぐらい耐えれるようにならないと、この先、生きていけないよ?」
「なにいって…!?」
ほら…だって…これぐらいじゃ壊れないもん…。
ぽつぽつとクローンが再起動して起き上がる。
赤く目を光らせながら。
「やっぱり…ボクたちの兄弟だね…」
「はは…こんなにも…しぶといんだね?」
「カイの世界より…すごい先の未来の技術だからね〜」
「そんなことより、おい…レン…どうしてこんなことになったんだ?」
「おそらく魔道装置の暴走だと思うよ。クウカの世界じゃ、魔力なんてロストテクノロジーでしょ?まぁ…運が悪かっただけだよ〜。どんなものでも100%は無いからね〜」
さて…敵も態勢を立て直してきている。
「おい、お前ら…実戦訓練の続きだ。アレを一匹残らず殺れ。ちなみに…勝手に死んだら殺すからね」
「指揮官の命令だ!ボサっとするな!さっさと戦闘形態をとれ!」
ストレバが叫ぶと、一気に士気が上がったようだ。
「関節か、目を狙え。それじゃぁ…頑張ってね?ボクはあの人たちみてくるから」
今の生徒たちは恐怖でいっぱいだろう。
敵の壊されたヘルメットから覗かせる顔が、あまりにもボクに似ているからだ。
「クソが…なんで…アレと似てるんだよ!」
「白い悪魔だ!!」
「クルナァァァァァァァァァァァァァァァ」
まったく、騒がしいヤツらだ。
「一体ぐらい持ち帰ってもバレないよね?」
「ちょ…っ、まて、やめろ委員長…冗談だよな?」
「ほら…捕まえたー!」
「いいな〜。私も捕まえようかな〜」
Fクラスのクラスメイトは、なんか楽しそうだ…。
みんな喋りかけて来ないだけで、人気はアイドルなみだったらしい。
よかったねタウ。
「わたくしも混ぜて下さい!」
生徒会長も仲間に入った。
さっきのあれはどこへ行ったのやら…。
そんな生徒達を背にして、セーフエリアに向かった。
「皆、今までご苦労だったな。あまりにも犠牲者が出すぎた。各地の救援も…もう、困難だろう…」
「我々、正規軍は現時刻をもって解散する。異論は無いな…」
上層部も全滅、守るものも無くなり、住む場所も無くなったのだ。
こっそり隊列の後ろに潜り込む。
「これから…どうするんですか?」
「私たちは…どうすれば…」
不満の声が聞こえる。
この世界の崩壊はもう始まっている。
「ボクが保護するよ」
全員の目線が集まった。
「アンタは…!?」
「レン…お姉ちゃん!」
「レン…?」
「ボクが今拠点にしてる世界に行けば…みんな助かると思うよ〜」
「できるのか?そんなこと…。というか…どうやって行くんだ?」
「救難信号はもう出てるから後は…待つだけだね〜」
「ボクはいいけど、ココに残りたいって言うやつは…いないよね?」
カイがそう言うと、ザワザワし始めた。
「まぁ…そこまでこの世界と変わらないから安心してよ」
「まて…他の三世界はどうなるんだ!?」
「ここと同じく滅びるか、歪になるだろうね〜。いや…正常なんて存在しないか…。正史というものも、モノの数だけあるからね〜。ボクの選択がキミ達にとって正しいとは限らないし…。言い出したらキリがないよ?」
未来が見える全知全能でも、他人からしたらそれは違う未来になるのだから。
「まぁ…ボクは準備に取り掛かるよ」
さて…あのクローン達はどれぐらい生き残ってるだろうか?
「おおー!みんな頑張ったね〜。エライ!」
大勢の生徒の中から、Fクラスのみんなを見つけた。
あそこだけ様子がほかと違うようだ。
「捕まえたー!…って、本物だ〜!?」
いきなり視界が網目状になった。
こんな大きな虫取り網なんてどこから持ってきたのだろうか?
「えっと…誰だっけ?」
どこかで見たような…。
思い出せない。
「ネクロだよ〜!キミのファンの1人なのだよ!フフン!」
ああ…?
彼女ってこんな感じだったっけ?
もっと…こう…じめじめしていて、闇が深かったような…、触手も無いし…。
ボクの知ってるネクロとは全然違う。
そもそもなぜ彼女がここにいるのだろう。
「むぅ…ひどいな〜。キミがボクのことを連れてきたんでしょ?」
ああそうだったか。
「なんかやっぱり違う…。キミはボクの知ってるキミじゃないな…。ただイメチェンしただけかと思ったけど。彼女はどこ!!」
怒り…いや…これは…好奇心の感情だろうか?
ボクは顔に近づいてきた彼女の顔を、押し戻した。
「そうだよ?大正解!ボクはボクだけど、キミの知ってるボクじゃないんだ〜。キミの知ってるボク…今はタウだね〜、彼女は今ごろゲーム三昧してるころだろうね〜」
「なるほど〜。だからキミはタウの代わりに来たんだ〜」
「少し違うね、ボクがこの身体に早く慣れるためと、ボクの方が優秀だとタウが判断したからこうなったんだよ〜」
本当は、今にでもあの子達に会いに行きたいのだから…。
「えっと…じゃあ、レンが創ったクローン?」
「クローンじゃないよ?ボクはね、別の世界のシグマ・レンだから」
「なるほど…興味深い…」
そう言いながら、ネクロの目線はボクの胸を凝視している。
「気になる?」
「へ…?!いや…そういうつもりじゃ…?!」
「これが終わったらいいよ?」
「…いいの?」
ふむ…こんな表情もするのか…。
「なぁ…レン。あっちはどうなったんだ?」
「一緒に連れてくよ。ここはもう終わるだろうし…」
「大丈夫なのか?さっきみたいにならない?」
「大丈夫だよ〜?…うん…もう少しかな〜?」
敵ももう殲滅した頃だろう。
集合の指示の信号弾を撃つ。
生徒全員が一斉に集まってきた。
「みんな、ご苦労さまだね〜?まぁ…計画とは違ったけど、犠牲もない事だし…演習はこれよりひどいことしようとしてたから…。まだ簡単でよかったと思うよ?」
大多数の生徒はゲッソリとした顔と絶望と恐怖が入り交じった顔をしていた。
まぁ、これが普通というやつだろう。
他の少数は少し疲れた顔をしているだけで、後のカウンセリングはあまり必要ないみたいだ。
一部は異常なほどピンピンしてるやつもいるみたいだが…。
「そろそろか…。みんな〜休むならセーフエリアで休んでよね?ほら、早くしないと置いていくよ〜」
ボクは生徒達を引き連れて、カイの所に向かった。
セーフエリアに向かうと、カイがボクに気づき手を振ってきた。
「レンお姉ちゃん〜!こっちの準備はできたよ〜」
「レン…じゃなかった…カイ姉…あの人が?」
「そうそう〜かっこいいでしょ〜」
あの子達もいる…懐かしい姿だ。
みんなキョトンとした顔をしている。
「1人足りないね…まぁ…そうか…」
ボクはフレアの方を向いた。
「?」
今の彼女にはもう関係ないことだ。
「みんなは救援が来るまで休んでていいよ?それとこのエリアから出ないでよね〜」
生徒達を解散させておこう。
少し好奇心というか…気になることがある。
「さてと…ちょっと失礼…」
「ふぁ?!まっ…」
ボクは、カイの横にいたこの世界のαを脇に手を入れ掴まえた。
この世界のこの子達はあの子達と同じなのだろうか?
身体の隅の隅まで手探りで触る。
「次…」
β、Γ…と、次々と同じように触っていく。
彼女たちはボクが触り終えると、とろけるように体制を崩していった。
自分自身の弱点は変わってないみたいだ。
「なにか気になることでもあった?」
「同じかな?って思ってね?でも、やっぱりおもしろいね〜。ボクのところのあの子達と少し違うから〜」
「そうなんだ〜。会ってみたいな〜」
「ボクも早く会いたいんだけどね…」
ああ…寂しいという感情が出てきている。
不思議なものだ、今になって強く出てくるのだから…。
「不安か…多くを考えすぎたかな…」
「興味深い目をしてるね〜」
カイの目に映るボクはどんな表情をしているかボクには分からなかった。
━━━ギュコーン━━━
という音と共に一帯が大きな影で埋め尽くされた。
「なんだ?!」
「敵か?!」
「まさか…これ…。いや…そうか…あの人ならやりかねないか…」
元いた世界の小大陸一つを船として動かすとか…。
さすが、雨お姉ちゃん。
こんなものを、どこに隠し持っていたのだろうか?
「じゃじゃーん!みんなのアイドル!天音 雨が助けに来たよ☆」
そう言いながら降りてきたと思ったら、ボクの背後から抱きついてきた。
「おひさ〜って言っても、そんなにたってないか〜」
「そうですね…」
「むぅ…つめたいな〜」
「ジョーダンだよ!まぁ…半分は…」
「うんうんそうだよね〜…って、半分!?」
キラキラとした雰囲気を出しているのに、顔は疲れている。
まったく…かわいい顔が台無しだ。
「そんなことより…来てくれたのは嬉しいけど、どうしてきたの?最近全然休んで無いんじゃない?」
「だって、かわいい妹のピンチだったから…。それに、あっちはあっちで手一杯だったから、動けるのがボクくらいだったんだよ〜」
「そっか…大体分かった。それじゃぁ、後はボクたちに任せて、ゆっくり休んでてね」
「え〜」
「ここで休んでいいから」
胸に顔を押し込み抱きかかえる。
「!?!ん…すぅ…Zzz…」
「これでベルトをして…よし」
さてと、みんなに指示を出すか…。
「雨…お姉ちゃん?!」
カイが気づいたようだ。
「ボクのだからね?」
「うん…分かってる…この世界線ではもう会えないから」
「まぁ…助けに行きたいなら、これが終わったあとに行けばいい」
「そうだね…」
とりあえず集合の信号弾を放つ。
さてとどれぐらい時間がかかるだろうか?
「レン…ソレは?」
「ああ…クウカ、一番のりだね〜。これはねお姉ちゃんだよ。さっき声が響いてたでしょ?」
「え…?」
「ほら」
「大丈夫なの…これ…?」
「ボクの胸の中で寝てるだけだよ」
「ああ…深く考えないようにしておく」
そう話してるうちに、大体集まってきたようだ。
「ストレバは…残りのヤツを呼びに行ったか…」
「こっちは全員集まったよ」
「ん…カイわかったよ…。それじゃあさきに乗り込んでてよ」
「どうやって乗るの?」
ああ…そうか…。
ボクは手で船に合図を送る。
するとガイド用の光線と共にワープエリアが作られた。
「あのエリアに入れば中に入れる、後は中の人の指示にしたがって」
「わかったよ。それじゃぁ…お先に失礼するよ」
兵士達が各々頭を下げる。
中には敬礼するやるもいた。
改めて見ると、見知った顔ばかりだ。
最後にカイが船の中に入るのをボクは見届ける。
「さてと…こっちはまだか…」
明らかに時間がかかりすぎている。
こちら無線をかけようか。
「…つながらないか」
集まったやつだけでも中に入れておこう。
「みんなは、先に中に入ってて…。クウカここは頼んだよ」
「ああ…わかった」
「あとこれも…」
雨お姉ちゃんをクウカに預けて、アーマを着用する。
「それじゃぁ、いってくるよ」
あいつらはどこまで行ったのだろうか?
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