02 エラーコード
いつの間にか…
もう12月…
課題が終わらない…
シグマ・レン…それがボクの名前だ。
ボクを設計した人の名前に[レン]と入っていたので、この名前がつけられた。
その上につけられた[シグマ]は型番みたいなものだ。
アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、 エプシロン、ゼータ、イータ、イオタ、カッパ、ラムダ、ミュー、ニュー、クシー、オミクロン、パイ、ロー、シグマ……
アルファからエプシロンまでがあの人たち、兄妹。
その他のは……その兄妹の[代わり物]だ。
そして、 ボクはその集大成である。
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「シグマ・レンって…あの英雄の?!」
驚いた声が響き渡った。
「英雄…?」
首を傾げる。
身に覚えがない…ボクが知ってる英雄はあの人たちだ。
きっと、まだ忘れている記憶があるのだろう…
「この世界を救った英雄がシグマ・レン…つまり…アンタと同じ名前だ」
「心当たりがありませんね…忘れていることも多いですが…世界を救った覚えはないと思います。人違いですよ…きっと…」
ここに来る前、自分は何をしていたのだろうか…それも定かでは無い…
だが、これだけはわかる…
それは、ボクでは無いと…
「そういえば…あの人って正規軍やめた噂あたっけ?」
「そうだな…なかったはずだ」
「それじゃあこの子は、未来から来たのかな?」
「…未来…?」
━━━ドコーン━━━
そう言いかけた瞬間、目の前廊下の天井が大きな音を立てて崩壊した。
「何だ‼」
クーロは身を構える。
土煙の中には少女の人影があった。
それが見えた瞬間、ボクは天井を見上げていた。
「そいつから離れろ‼」
クーロが銃をこちらに向けているのが見える。
一体何が起こっているのだろうか。
「やっと…見つけた…」
身体がミシミシと音を立てている。
すごい力で抱きつかれているのがわかった。
正直痛い…
「この子…全然離れない…」
ランが少女を無理やり離そうとした。
「邪魔しないで…じゃないと…殺すよ?」
まるで昔の[自分]を見ているようだった。
[自分]?
何かが引っかかる…
ああ…そうだ…この少女はボク自身だ。
ボクが創った最高傑作…
ボクの[もう片方の目]を持つ特別な存在。
デザートカラーのマント、青黒い髪とエメラルドグリーンの右目、そして声…
間違えなく彼女だ。
[シグマ・Σ]…ボクの代わり…そして…あの人たちの代わりでもある。
ボクは彼女の頭を撫でた。
「ごめん…どれだけ待たせた?」
「あれからー年間…探しつずけていた…」
「そっか…ボクはそんなにも寝てたのか…」
それを聞いたΣは驚いた顔をした。
「何があったか覚えてないの?」
「うん…」
「レンはボクにこの目を預けてみんなの指示も任してからー人だけ敵の施設に突っ込んでいったんだ…その後に爆発と共に時空歪曲が起こったんだよ…それに巻き込まれてこの世界に来たんだよ〜」
「そうだったんだ…他の子も居るのか」
「全員は揃ってないよ…別の世界に飛ばされたかもしれない…」
「それで今は何処にいるの?」
「[始まりの場所]だよ〜この世界にもあったから」
[始まりの場所]ボクの家だ。
ボクが産まれた場所でもある。
「目的は決まったから…そろそろ離してくれる?」
「あ…ごめん…嬉しすぎてつい…」
「それから、二人にも謝ってよね…」
ボクは少し離れた場所にいたクーロとランに手招きをした。
「大丈夫だったか?すごい音してたが…」
「大丈夫だよ。自分自身の力で壊れるはずないじゃん」
「自分自身ってどういうこと?」
「この子はボクが作ったボクのクローンの一人でね、最高傑作なんだよ〜」
「最高傑作…なんだ…」
ランは横目でΣを見た。
Σは謝るタイミングをうかがっていた。
ボクだと見せない一面だ。
「その…いきなりごめんなさい…」
「大丈夫だよ〜それより…こんなものが落ちてたんだけど何かわかる?」
ランが見せてきたもの…それは大きなスライムのような眼球だった。
「お前…よくそんな気持ち悪いもの触れるな…」
「プルプルしてて気持ちいですよ〜」
思い出した…あの人のクローンの一部だ…
彼女を保護するのがボクたちの任務だった。
たしか名前は…
「[デロータ]…」
「その名前…聞いた事があるけど何だったけ?」
「終末戦争を引き起こした奴の名前じゃなっかったか?」
「一人だけだったのに軍を壊滅状態にさせた…ていう情報があった…」
「英雄に倒されたはずじゃ…」
英雄…もう一人の自分に倒されたのか…
そう思うと、どことなく胸が痛んだ。
「でも…英雄譚に出てきたのは人型だったような…」
「英雄譚?」
それは、もう一人のボクの物語。