26 誤帰宅任務
はい…お久しぶりです…。
夜マグロです。
社会人になり…仕事が始まったので…
更新ペースはいつもと変わらず不定期です。
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眩しい光が収まり目を開ける。
「ここに…戻ってきたか…」
ログアウトした場所だ。
タウは他の子達の設定に付き合ってるし…そのあいだ何してようか…?
後ろからムギュっと誰か抱きつかれた。
この感触は…。
「ファルシール?」
「…!!」
彼女を抱いて、頭を撫でる。
落ち着く…。
「バレちゃいましたか…。ふふふ…」
「ほかのみんなは?」
「ギルドで待ってますよ」
ファルシールがボクの手を握った。
「それでは…行きましょうか」
どうしたのだろうか?
彼女の手が少し震えている。
ああ…この感じは…。
「胸騒ぎがする?」
「え…?どうして…って愚問でしたね」
「怖がることは無いよ?僕達はそのためにいるのだから」
「はい。頼りにしてますよ」
そう話しているうちにギルドについた。
扉を開けて中に入ると、大勢の冒険者が集まっていた。
「人間がおおいね…」
そっとファルシールを抱き寄せる。
「…あっ!レン様こちらです!」
人ごみの中から手を挙げてぴょんぴょんとはねているのが見えた。
フェネスティーだ。
人ごみをかき分けたどり着くと、あの3人がいた。
ハイカ、ザビー、マナノだ。
「やっと来たか…!」
「何があったかだいたい予想はつくけど…」
「アイツがダンジョンの中で大発生してるらしい…」
「何十人かもう犠牲になった」
思ったより、まだいい方だ。
「なら、さっさと始めるか〜。そろそろ準備も終わっただろうし…」
ギルドの扉が強く開かれる。
「待たせたな…!」
「一度言ってみたかっただけでしょ…!」
「ボクまで来ちゃったけどいいのかな?まぁ…元はと言えば…ボク達の存在が原因でもあるのだからいいのか…」
ε、θ、ηの3人…∑はお留守番か…。
他には…雨お姉ちゃんも来たのか。
彼女がいれば早く終わるだろう。
「なんでオレたちまで…」
「いいじゃないですか〜隊長のお守りですよ〜」
「兄貴まさかビビってるのか?」
「わたしが不満か?」
ああ…アプルと…ラン達も来たのか。
「おまたせ〜」
「ご苦労さま、タウ」
これでみんな集まった。
「そうだ、ファルシール。偵察ドローンはどう?」
「そうですね…ダンジョンの中層までは確認しました。ただ…肝心の最深部がジャミングで…」
「ああ…まぁ大丈夫でしょ!」
周りからの注目も痛いし…さっさと行くか…。
「ちょっと待ってくれ」
「どうしたの?ハイカ?」
「ほんとに大丈夫か…?」
ああ…特殊作戦用のボディースーツとアーマー、ヘルメット…。
明らかに、この世界の雰囲気には合わないのだ。
「大丈夫だよ?彼らは強いから…」
「その事じゃなくて、あんたの事だ…」
ボクのこと?
なんだろうか?
「顔色が悪いぞ?」
「そう?」
特になんともないのだが。
「さぁ…行こうか…」
「それではお気をつけ行ってらっしゃいませ」
フェネスティーとファルシールに見送られながら、ボク達はギルドを出てダンジョンに向かった。
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作戦の内容は簡単だ。
敵を無力化して対象を保護する。
まずはダンジョンの状況確認。
モンスター…いや、魔物か…。
1体も姿はない。
「暇だね〜」
「いつもならこんなに歩くことも無いしね〜」
ハイカ達がいることで歩くことになったのだ。
おぶって走る手もあるのだが、ダンジョン内では狭い場所もあるので却下となった。
「それにしてもレンの装備は、それで大丈夫なのか?」
「普段着の方が動きやすいから、これでいいんだよ」
こうして話しているうちに、何事も無く中層に入った。
中層に入ってからは、生臭い血の臭いがするようになってきた。
生き物が沢山死んでいるのだろう。
「警戒した方がいいのかな?」
「まだ大丈夫でしょ」
進んでいくうちに血の臭いも濃くなっていく。
少し広いエリアに出た。
「ここら辺から、警戒していこう」
各自で武装の確認をする。
「銃を使うのか?弾薬が入ってる」
「ああ…そうだよ。魔銃じゃないのはびっくりしたか?」
「まぁだって…弾薬だと高価だからな」
「あの子は使わなかったの?」
「カヅハか?あの子は自分で作ってたな。血を使って」
ああ、鉄血弾か。
血液から鉄を精製して弾薬に変える。
生物相手なら効果がある弾薬だ。
「獣狩りに使われた術だな…」
「そうだったのか…?!」
「獣狩りと言っても突然変異で自我を失ったもの達だ。魔物と変わりない」
獣狩りはどうしてもあの記憶が出てくるから、あまり思い出したくないな。
「そういえば、あの子と知り合ったのは牢の中だったけ」
「そうだ、奴隷商で知り合ったんだ。獣人狩りにあって…牢に入れられて…。そこであの子に会った」
「…」
「初めて見た時は、あの子は死体の様だった。だが…顔は笑顔だった。ずっと…。それが不気味だった」
「…」
「ある日冷たくなって、奴隷商等に連れていかれた。それから数日たつと戻ってきた。顔からは笑顔が消えて人形のようになった」
「…」
「その日から、ほかの獣人達が連れていかれては、発狂して戻ってきたり、凶暴化して戻ってきたりするようになった。アタシは怖くなった」
何かしらの実験か…。
「ついにアタシの番になった。だが…あの子が前に出て遮ったんだ…。目の前でボコボコにされて…顔が分からなくなるくらいに…」
「…」
「次の日…隣を見るとあの子がいた。何も無かったように…。目を覚ますといきなり『なんで、わたしはここにいるの?』って聞いてきた」
「おそらくだが…一度身体が死んだことによりリミッターが外れたのだろう。よくある事だ」
今の発言でハイカは少し引いたように笑った。
「なんだろう…やっぱり…アンタと話していると、あの子を思い出すな…」
「そりゃ…生みの親でもあるし…元がボクだからね」
遠くで赤い光が見える。
「ああ…敵か…!」
「どうする?壊す?」
「鹵獲できそうなら、鹵獲しよ」
雨お姉ちゃんもいることだし…。
解析はいくらでもできるだろう。
「長距離射撃用意…」
「バーン!」
「ちょっと…!タイミング合わせてよ〜」
はぁ…面白い…。
「…」
「どうしたの?」
「いつもこんな感じなのか?」
「いや…いつもと違うよ?完全に遊んでる」
「え…」
だって『ゲームの世界』として入ってるから。
「ほらほら〜どんどん来たよ〜」
「やっちゃえ〜!」
脚部を破壊、武装を破壊、システムを無力化…。
やりたい放題だな…これ…。
「あまりはしゃぎすぎて、本来の目的を忘れるなよ?」
「ヒャホーイ!」
聞いてないな…これ…。
「ボク達だけでも、先に進もっか?」
「ああっ…」
ハイカ達とタウを連れて先に向かうことにした。
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「ああ…戻ってきた…」
「ここで別れたんだ…」
まさにボス部屋と言ったところだろうか。
広い部屋に入口と出口があるだけのシンプルな部屋だ。
ここに来るまで数体の敵と遭遇したが、特に何事も無く、無力化してきた。
個体差はあったが、そこまで苦戦するほどでもなかった。
まるで…糸が切れたようだ。
指揮をされてない、ロボットと同じだ。
「あの奥が最深部…」
「地形変わってなければ…家と一緒か…」
「え…?」
ボクは奥へと足を進める。
よく知っている入口だ。
珍しく武器を構えながら、突入する体制を作る。
「えっと…わたし達はどうすればいいのかな?」
「後から来て…最初にボクが行く…」
自分でも分かる…今のボクは正気ではないと。
落ち着かない。
言葉にならない気分のせいで。
「ボクもついて行くよ」
「タウ…」
「左目になってくれる?」
「お安い御用だよ。ボクはキミだもん」
思考回路が重なり共鳴しあう。
「それじゃ…ここで待っててね?」
「ああ…アタシ達はこの先お荷物ってことか…」
「悪いね…ここの施設は特殊なんだ…」
「分かった…だが…約束してくれないか?…ちゃんと連れて帰ってきてくれ…」
ハイカに抱き寄せながらされながら言われた。
「ああ…大丈夫」
頭を撫でる…ネコミミも一緒に。
「…後で…覚えておけよ…」
「そんな嬉しいそうな顔で言われたら、期待しちゃうよ?」
「…!?って、さっさと行け!」
それじゃぁ行きますか。
ボクとタウは、武器を構えながら素早く突入を開始した。
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