22 自我捜索
またせたな!
(まってるかしらないけど)
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ボクは、ιに研究室につれてこられて、フィギュア用のベットに下ろされた。
そして、背中にあるUSBを記憶回路に繋げられた。
いきなりどうしたのだろうか?
「レンレン!準備はいい?」
「明日やるって…、ああ…そうとも言ってられなくなったか…」
ボク達は、色々な問題を抱えている…行動は早く起こした方がいい。
その方が、被害が少なくて済むだろう。
「そうそう…だから…さっさと終わらせちゃおうよ〜」
「了解…始めて…」
「それじゃぁ、少しおやすみ…マスター…」
ιがボタンを押すと、視界が一瞬で途切れた。
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[不明ログ]
恋というものは時に人を変える。
そう…長年殺したかったアイツのように…。
『もう少し早く会っていたら変わっていたのだろう…』
そんな言葉は、もう必要ない…。
だって、ボクもアイツも変わったのだから…。
みんなを失った、あの時空歪曲の爆破…。
ボクは、あの出来事で全てが変わった。
まるで…フレアを撃った、あの時みたいだった。
ボクは、あの子達を探し続けた…。もうそこにはいないとわかっていても…。
全てをやり直せるならと過去に行こうとした。
禁忌を破ろうが、知ったことではない…あの子達のためなら…、どんなことだってしてやる。
だが、過去には行けなかった。
いや違う…過去には行ったが、そこが別世界線の過去だったのだ。
力には代償が必要…。
永遠も無限も無い…。
時空歪曲の爆破の放射線を受けた身体が完治しないまま、さらに負荷をかけたせいで、身体の一部は完全に溶けて、形を保てなくなっていた。
このままでは再生も阻害され、思うように動かせないだろう。
私は転移したその場から、動けなくなっていた。
大雨が降り出し、水滴が傷口に入り込む。
痛覚を和らげる機能が暴走して、身体中に痛みがはしる…。
ボクは死ぬのだろうか?
それは、何度も経験した感じとは違う…ほんとうの死だろうか?
つめたい…
ボクは、スクラップのように眠りについた。
一年だろうか…いや1ヶ月だろうか?
日にちの感覚が無くなっていく。
そんなときに、誰かがボクのそばにきた。
「これは…、試作品では無いな…。まさか…。だとすると…やはりアイツはこの手の中に収めておきたいな…」
どこかで聞いたことがある声…。
ああ…音声資料で聞いた声だ…。
アイツの声だ…。
あの男の声だ…。
そもそも、アルファタイプが大勢いるのも、アイツが原因なのだ。
混乱を生み出した…全ての元凶…。
無駄な争いを生み出し、戦場を変えてしまった。
その争いは、今も終わらない。
技術は人から人へと渡る。
それが『一つの世界』の枠を超えているのだから。
終わらない。
終わらせられないのだ。
だから、ここで殺らないと…。
だけど、身体が動かない。
「異常値を観測したからきてみたが…。こんな掘り出し物があるとはな〜。やはり、上のやつらはあてにならない」
そう言って、男はボクのことを担いだ。
「とりあえず…見つからないように…あそこに連れていくか…。ん?…ああ…大丈夫…何もしないさ」
どこに連れて行かれるのだろうか…。
ダメだ…意識が保てない。
数日いや…数ヶ月後だろうか、ボクは綺麗なベットの上で目を覚ました。
「知らない天井…?」
「第一声がそれですか〜?」
隣を見ると、ボクに似た顔をした、メイド服を着た少女が寝転がっていた。
「お客様の寝顔を観察しておりました」
むぎゅうっと抱きついてみる。
身体は動く…よかった…回復してるみたいだ。
「う…あ…あの…心の準備が……」
抱き心地は…硬い…。
ほとんど金属なのだろう。
「あ…あの…!そこはぁ…ダメ…」
これは…知ってるモデルと少し構造が違うか?
まぁいいか…それよりここはどこだろうか?
「ねぇ…ここがどこだかわかる?」
「あ…えーと…ここは『メルメシティ』にある『委託メイド事務所』です」
委託メイド事務所…こんな場所において、どんなつもりだろうか?
しかし、似た顔が居るのは、隠れるのにうってつけか…。
ガチャっと部屋のドアが開かれた。
「何をしてるのですか[ケイト]?!」
入ってきたのは、また似た顔をした少女である。
「[メイド長]!これは…その…」
「まったく…」
メイド長と呼ばれた少女が近づいてきた。
「その子を離していただけませんか?」
「いやだと言ったら?」
「それなら、離すまでここにいますよ?」
「そう…なら…」
むぎゅう…
「へ?」
少しランクは上なのだろうか、抱き心地がいい。
硬い冷たいボディーもいいが…これはこれでいいな。
「ちょっ…どこ触って…」
「うん…これはいい…。あの子たちと感触が似てるな」
「目覚めたみたいだな…どうだ…そいつらは?」
本能的に武器を出して、声の主に飛びかかる。
「くっ…‼」
「マスター!」
銃口を相手の額につける。
ああ、どうしようか?
感謝すべきか…、ここで引き金を引くべきか…?
もちろんボクは…銃を下ろした。
「殺らないのか?」
「お前じゃないから…」
「そうか…」
「悪かったね…いきなり押し倒しなんかして」
「ああ…大丈夫だ。それより、元気そうでなによりだよ。キミのことが心配で他のことに手がつかなくてね?」
この世界でも…同じことをしているのだろうか?
この子達がいるのでだいたい察しがつく。
「ああ…そうだ…しばらくここにいてくれないか?…仕事を終わらせて来るからね?」
そう言いって答えも聞かずに部屋を出ていった。
ふむ…やはり、ボクの知ってるアイツとは程遠いな。
助けてもらった恩返しでもしようかな。
それから半年がすぎた。
ここでの生活もなれてきた。
ここでは、ボクを含めて14人のメイドが働いている。
「まさかあの時のお客様が、私たちと同じメイドになるとは思いもしませんでした〜」
「そうですね。しかも、あなたとは違い働きものですし、教えることもほとんどありません」
「メイド長…それは…」
「間違ってはないでしょう?」
「はい…がんばります…」
「よろしい…まぁ…今のままでいいですよ…」
「それって…どういう…」
一人が、壁にもう一人を押し付け、顔を近ずけて口ずけをする。
そんな二人を影からこっそりと見守る。
メイド長の[エース]とあのときのメイドのケイトだ。
二人はいい感じだ。
昔を思い出す。
あの子たち…とくに…∑を可愛がっていたな…。
ああ…ダメだ…こんな思考のときは、いつも…ろくなことが起きない。
ご主人様…いや…マスターは、大丈夫だろうか?
時計を確認する。
今日はこっちに来るって言ってたのに、遅れるのはおかしい。
迎えに行くか…。
フードを被り、外に出る。
相変わらず、スチームパンクのような街並みは変わらない。
今日は大雨だ…。
あのときに似ている。
急がないとな…。
高く飛び上がり、街全体を見渡す。
路地裏にあの男がいるのが見えた。
複数人の何かに囲まれている。
あれは…アルファタイプ…!?
「やっぱり…この世界にも…」
弾丸のように突撃をして、間に割って入る。
「大丈夫ですか?マスター?」
出血が酷い…早く終わらせないと!
「その声は…!逃げろ…狙いは…お前だ…」
そう言って、マスターは倒れた。
「なれてますよ…そんなこと…」
武器を異空間から取り出す。
ハンドガンサイズの、フルオートで対物ライフルの弾丸を発射する銃だ。
「さて…殺るか…」
相手は五体…。
いつもより簡単だ。
リハビリにはちょうどいいだろう。
襲いかかってきた一体を銃で殴り壊し、ほかのやつらの頭を全て撃ち抜いた。
死体を異空間に放り込む。
ああ…返り血でドロドロだ。
そんなことより、マスターを安全なところに運ばなくては…。
ボクは、マスターを担いで事務所に戻った。
「レンとマスター!?」
「[エイト]!早く治療の準備を‼」
「わかった‼️」
八番目のメイド、エイトに治療の用意をしてもらう間に、応急処置をする。
だいぶ損傷が激しい。
設備も無いから…仕方ない…あれをするか。
「一応ベットは、空けてきたよ」
「ありがとう」
急いでベットに寝かし、固定する。
まずは異物を取り出して…。
足りない肉の部分は、さっきのアルファタイプのやつを使おう。
今の状況だと、魔法を効率的に使うにはこの方法が1番いい。
細胞同士が拒絶反応を起こさないように、ボクの血も流し込む。
安定している…大丈夫だ…。
治療は上手くいった。
念のため、包帯でぐるぐるまきにしておこう。
「ふぅ…これで大丈夫だろう…。少し身体を洗ってくるか…」
部屋を出ると、ほかのメイド達が心配そうに待っていた。
「マスターは?」
「大丈夫だよ…あとは目覚めるのを待つだけだから」
「レン…その…どうやって治療したの?」
「どうって…魔法でだけど?」
「え…」
まずかっただろうか?
「魔法…使えるんだ…。絶滅したって聞いたけど…。レンはすごいな…」
「それじゃ、ボクは身体洗って来るからね」
そう言ってその場から離れた。
身体はまだ万全じゃないか…。
動きが鈍るし、まともな判断ができなくなる。
それにしても、あのアルファタイプ…この世界のものじゃないな…。
浴槽に深く浸かりながら色々なことを考える。
マスターを殺そうとした、マスターは狙いはボクだといった。
やはり調査してみた方がいいか…。
マスターが働いている場所は、軍関係の場所だ。
何をしているかは、だいたい察しがつく。
たしか、軍は新兵を募集してたはずだ。
探るのにはうってつけだろう。
マスターが目覚めたら報告しよう。
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