18 ボクはキミでキミはあの子…そしてあの子はボク
η視点
今月中にあと何話出せるかな〜。
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ボクは、η。
ボクは、スライムだった。
なんでも食べてしまうスライムだった。
なんでも食べてしまうから…、ボクには友達がいなかった。
家族もいなかった…。
ある日、一人の少女を食べた…。
いや…食べてしまったのだ。
食べた瞬間に意識が消されそうになった。
だが、ボクは『なんでも食べてしまうスライム』。
少女の意識ごと全てを飲み込んだのだ。
裂けるような痛み…。
焼き切れそうな熱…。
どれも感じたことの無い痛みだった。
痛みに耐えながら、眠りにつく。
最悪だった。
次の日、目が覚めると目線が変わっていた。
手足もある。
「起きたんだね?」
となりから、声が聞こえた。
ボクが食べた少女に似ている。
「あ…あ…」
殺されると思った。
なぜなのだろう。
分からない。
「大丈夫…キミはもうあの子じゃないんでしょ?」
ぎゅっと抱きしめられた。
ダメ…食べてしまう。
そう思ったが、捕食が行われない。
「あれ…大丈夫…?」
「キミは生まれ変わったんだよ?あの子を取り込んだことによって…」
生まれ変わった?
「ああ…名前を言い忘れてたね?ボクの名前はシグマ・レン。キミが昨日食べた少女を殺し…いや…救いに来た、軍人さんだよ?」
軍人…。
ああ…これは…ぼくが食べた彼女の記憶だろう。
人を見境なく殺している彼女に対して、武器を取り反撃している軍人の人たち。
ボロボロになりながらも、必死に耐え抜く人たち。
ボクにしては考えられない…。
「キミが食べて終わり!…ならよかたんだけど…。証拠が無いとダメなんだ〜。だからさ…」
殺気を感じるが、身体が動かない…逃げられない…‼
「その首もらうね?」
レンと名乗った少女は、容赦なくボクの首をはねた。
「これで…よし…。死んだふりはしなくていいよ?」
…あれ…生きて…いる?
「今の身体に引っ張られているね…?キミは元々スライムでしょ?スライムはコアを破壊しないと死なないんだよ?」
ああ…そうだった…ボクはスライムだったんだ。
「その体…不便でしょ?少し手を加えてあげるから、ボクのところにおいでよ…」
ボクは差し出された手を握った。
彼女なら…大丈夫だと。
降下中の突撃用ポット内でふと思った。
ずいぶんと懐かしい記憶だな…。
『ボクはキミであり、キミはボクである。しかし、キミがボクになりきる必要は無い。その方が、色々な体験ができるだろう?』
レン…いや…お母さんが言った言葉だ。
━━━ドスンッ━━━
到着したか…。
武器や装備の確認?
そんなもの、ボクには不要なのだ。
全てを食べるからだ。
喰らうの方が正しいか…。
ポットの扉を喰らい、すぐさま近くの敵に抱きつく。
「イタダキマス♪︎」
身体に黒い粒子を纏わせ、液状にして優しく包み込む。
すると、瞬時にエネルギーに変換されて、跡形もなく消え去る。
「つぎは…道を開こっか?」
両腕に黒い粒子を纏わせて、渦を作り、前方に放つ。
射線上の敵は一瞬で飲み込まれ、ドロドロになり、跡形もなく消え去る。
力は、増え続けるだけだと、いずれ耐えきれなくなる。
ならば、力同士をぶつけて相殺し合えば、無限に吸収できるのではないのだろうか?
その答えが今のボクである。
「よし先に行こっと!」
ギギィ…っと何かの動く音が聞こえた。
あれ?…耐えている?
これは興味深いな。
見た目は同じなのに、ほかのとは違うようだ。
「…損傷率は50パーセント…こんな場所で終わる訳には…‼」
一人の敵が辺りを瞬時に凍らせて、爆ぜさせた。
「ゲームのモンスターみたいだね…。ボクも人のこと言えないけど…」
一度攻撃を喰らってみよう。
「くらえ!バケモノめ‼」
腕で攻撃を受け止めると、逆に侵食されるように凍りついた。
へぇ…意外とすごいね〜。
ボクの侵食を上回るなんて…。
凍りついた腕を引きちぎり再生する。
「な…何を?!」
?
驚くことだろうか?
「何か、驚くことでも?」
「自分の腕を引きちぎるなんて…。なんてことを…‼」
「そんなに不思議なこと?」
亜空間を作り、相手に投げつける。
「クソ…バケモノめ…」
「キミもボクと同類でしょ?」
「貴様と一緒にするな!私は特別なんだ‼」
特別…ああ…よく見ると…あの子にそっくり…。
あの時…食べてしまったあの子に…。
少し確認してみようかな?
「確かに…特別なんだろうね?」
「何…‼」
彼女に瞬時に近づいて、黒い触手を地面から出して拘束する。
「は…離せ‼」
ガルルル…って言ってきそうなほど怒ってる。
ボクは彼女の胸の装備を引き剥がした。
「……っ‼」
彼女が赤面する中、ボクは型式番号を確認する。
[アルファタイプ・アルファ型・セブン・η・世紀軍仕様]
…やはり、あの子と一部同じ型番か…。
それにしても、この敵たちが世紀軍か…。
不思議なこともあるものだ…。
同じ読み方の軍同士が戦っているのだから。
「…早く…殺してください…」
「?やだよ…だって…キミに興味が湧いたからね〜」
「…くっ!」
『くっころ』というやつだろう。
まぁ…かわいいけど…ボクの方が可愛いからね〜。
「さてと…そろそろ時間だし…。深淵で待っててね〜?」
黒い粒子で彼女を包み込む。
「いや…!イヤ…!やめて…‼」
黒い粒子が消えると、彼女の悲鳴は聞こえなくなっていった。
「目的地は…っと…。おお…ピンポイントじゃん‼」
何もしないで、待ってるのは暇だな〜。
そうだ、お人形さん遊びでもしよっか!
ボクは、黒い粒子でパペット人形を両手に作り、みんなを待っている間一人で遊ぶことにした。
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