12 ボクはキミでキミはあの子…そしてあの子はボク
戦闘シーンとかほとんどないから次回書こうかな。
少しの間、沈黙が続いた。
「まずは自己紹介からだな…。アタシの名前はハイカだ。見ての通り獣人族だ」
「盾役をしているザビーだ」
「魔法少女マナノだよ〜」
こちらも自己紹介をしよう。
「ボクの名前は、シグマ・レン…見ての通り新人だよ?」
「あはは、お姉ちゃんは新人だけど能力はあボク以上でしょ?あ…ボクはタウだよ〜。シグマ・タウ。自称ベテラン冒険者をやってるよ〜」
「みなさんご存知かもしれませんが一応…。わたしの名前はファルシールと申します。シスターをしております」
「あれ?どうしてシスターさんがこちらに?」
「わたしは異世徒様の案内役ですから」
「へぇ〜…って異世徒様って誰なの?」
「レン様のことですよ?」
「一応…ボクも異世徒なんだけどな〜」
「お母様は別ですよ?…って今はこの話しをしている暇では無いのでは?」
「後から聞かせてくれるか?」
「はい」
さてと、自己紹介もすんだことだし、例の話に移ろう。
「それで、誰が話してくれるの?」
「あたしが話す…」
「大丈夫か?」
「ああ…少し楽になった…」
ハイカはすぅっと息を吐いて話し始めた。
「アレは二日前のことだ、アタシら[鎖ヲ絶ツモノ]が[始まりの世界樹]のダンジョン探索に行った時の話だ。カヅハがドラゴンを倒して数分後の出来事だった…。アイツが現れたのは…」
「アイツ?」
「蜘蛛型の四足歩行の古代兵器と、その上に座る不気味な少女だ…。カヅハはアレを見た瞬間、アタシらに逃げるように言ってきたんだ…」
「それで逃げて来たと…」
「何もできないなら…邪魔になるぐらいなら逃げるしかできなかった…」
「そうなんだ」
それにしても、不気味な少女と四足歩行の兵器か…。
おそらく兵器の方は、ボクが見たことあるアレの同型機だろう。
少女の方はどうなのだろうか?
「その少女の顔を見た?」
「ああ…アレは…あれ?よく見たらアンタにそっくりだったような…?」
「となると…アレがいるのか…」
だいたい敵が見えてきた。
ただ、敵の目的が分からない。
「早くしないとやばいことになるかも!」
「どういうことだ?」
「アレは[アルファタイプクローン]ボクとは別につくられて、大量生産された最悪の兵器…。違法生産せれて悪用されるのがほとんどなんだよね。それとっしょに四足歩行のやつでしょ?あの兵器は、おそらくだけど…ボクやタウとかまたまた似たような存在とか…そこら辺の存在を、捕まえるか殺すかするために作られた最新のやつだと思う」
「古代兵器なのに最新なのか?」
「ああ…おそらく、また別の世界線からおくられたものだろうからね?」
「ちょっとまって…カヅハちゃんは、あなた達と関係があるの?」
ああ、その話をしていなかったな。
「彼女はボクがつくったボクのクローンだよ。つまり、ボクの子供なんだよ〜。クローンと言っても、一部性格と遺伝子だけだけどね〜。それが転生した時に、記憶と一緒に引き継がれるようになってるんだよ〜?だけど記憶は…」
「えぇっ…まって…頭が追いつかない…」
冒険者たちは、こんらんしている。
「お姉ちゃんってさ、すごい保険るよね〜。ボク、ファルシールにはそこまでしてないかな〜」
「それでも…失うものがあるから怖いよ…」
どんなに強くても、どんなに抗おうとも、そこに存在があるのならば、いつかは消えて無くなるものだ。
どの世界にも永遠はない。
だって、永遠になるには実体も、自我も、他者も無くして一つにならないといけないから…。
「あの子たちの記憶に出てきた…アレに関係があるのかな?」
「あの記憶にあった人物…アレが別のボクならば、世界を超えることぐらい可能だしね〜。人を送り込んだ可能性があるねこれは…」
タウが、何かを思いついたようだ。
「…そうだ!ファルシール、この世界全体にある探索用の小型ドローンのデータ集めて」
「はい!わかりましたお母様〜」
ファルシールは返事をして透明なフォログラムの端末を出した。
端末といっても機械的なものではなく、魔法的なものだ。
「ちょっと…いいか」
ハイカが小さな声で、話しかけてきた。
「もう整理できた?」
「ああ…だってアイツ…カヅハとは付き合いが長いからな…。だんだん変わっていったアイツのことも、まじかで見てるし…」
「ずっと一緒にいてくれたんだね、ありがと」
「なんか…恥ずかしいな…。カヅハ言われてるみたいで…。アタシはアイツのこと何も分かっちゃいなかったんだな…」
「誰だってそうでしょ?聞かないと言わないことだってあるし、聞かれたくないことだってある…。それを聞いたところで、その人のことを百パーセント知ることはできないしね〜。いくら他の人が考えてることがわかるボクでさえ、九十九パーセントしか分からないもの」
「おまえ…」
ボクは、ハイカの頭を撫でる。
猫耳も一緒に。
「オメ…どさくに紛れて…どこ…触ってんだよ?!…」
そう口で言う割には、抵抗してこないな。
このまま、モフり倒すのも悪くないか…。
「あ…やめ…」
モフりながら頭を抱き、ボクの胸に押し付ける。
すはーすはー…という息遣いがだんだん早くなって、しまいには、スリスリしてきた。
本能には逆らえないか。
ぱっと辞めると、トロンと溶けたような顔をしながら、物足りなそうにこちらを見てきた。
「あとは、あの子が帰って来た時にやってもらってね?キミはあの子のご主人様なんでしょ?」
「…うぅ…わかった…」
少し燃焼不足ではあるが、アレを超えるとさすがにまずいだろう。
「さっきのは…やばかったな…」
「なにかが…高ぶってきそうでした…」
ザビーとマナノは、顔を手で押さえながら、指の隙間からこちらを見ていた。
「刺激が強かった?」
「いえ…もっとやっちゃっても…」
「そう?じゃあキミ達にもしてあげよっか?」
「それは…その…」
「冗談だよ〜。これ以上やるとさすがに、他の子達がまたうるさくなっちゃうから…」
「他の子達…。ああ…お姉ちゃんモテモテだもんね〜…」
「他の子には、タウも入ってるんだけどね〜…」
そう言ってボクは、タウとファルシールを抱き上げた。
「わわ‼びっくりした〜」
「ええ!なんですか?!」
「なんか、物欲しそうだったから」
何か足りない…。
そう思いギュッと抱きしめる。
「落ち着かないの?」
「たぶん…」
「わたしが癒してあげますから、大丈夫ですよ〜」
こころがざわつく…。
「やばい…な…」
頭が重たい。
ドス黒い感情がなだれ込んでくる…。
この感情は…あの時に似ているな…。
アプル…いや…フレアを殺した時に似ている…。
カヅハ…いや…κが、アイツらに消されそうだと思ったから?
いや…違う…。
このざわつきは、自分のものじゃない…?
いや…自分のもの?
わからない…。
落ち着かないと…。
平常心を保たないと…。
いつか、アイツらに殺される。
急がないと。
報復がくる。
すべてはあの子達のために、すべてはあの子達のために。
例え戦争が起きようとも、世界が一つに滅ぼうとも、あの子達のためならボクハ…。
自分ヲ壊ス…。
自分ヲ殺ス…。
ああ…うるさいな…‼
認めない…壊させない…殺させない…。
お前の思い通りにはさせない…。
これ以上ボクの中に入ってきたら、本体の中の全てを喰ってやろうか?
ねぇ…闇落ちしたレンちゃん?
これ以上ボクの子に手を出したら、分かってるよね?
分からないはずないよね?
別次元とはいえ、ボクなんだから…。
「お姉ちゃん…今のって…」
「タウの方にも手を出てきた?」
「少しだけだけど…」
「はぁ…これはお仕置きを、追加しないとだね」
「あの…何かあったのですか?」
ファルシールには影響は無いのか…良かった。
「ハッキングというか…洗脳というか…だいたいそんな感じのをくらったんだよ」
「タチが悪いのが…闇落ちした別次元のボク達なんだよね…」
「…敵なのですか?」
「今の状態だと敵だろうね〜」
「それで、これからどうするの?」
「そうだね〜、いったん戻ってあっちの状況も見ないと」
「目的の準備はいいの?」
「うん、同じ場所だから」
「[始まりの世界樹]だったけ?もしかしてそこが…」
「この世界での[始まりの場所]…。つまりボクたちの家だよ〜」
やはり、意識がなくても彼女は役目を果たしているのか。
「アンタら…帰るのか?」
「ちょっと状況確認してくるだけだよ。すぐ戻ってくる。ファルシール、ボクがいない間頼んだよ?」
「任せてください!お母様」
「またね」
ボクのたちは、手を振って別れた。
ギルドの扉を開けると、辺りは夕暮れ時になっていた。
「お姉ちゃん…あまり楽しめなかったね?」
「…そう見える?」
「いや…今の言葉は忘れて欲しいな…」
「ふふ…」
タウに手を引かれ、周りを見渡しながら歩くのは、なんだか新鮮な気分だった。
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