第一話 とりあえず死にました
初投稿作品です。
温かい目で見てください。
辺り一面見渡す限りに骨、骨、骨。
それも全部人の骨だ。頭蓋骨がこっちを向いていて怖い。
ここはどこなんだ?そもそもなんでこんなところにいるんだ?
なにも覚えていないし、なにも思い出せない。記憶がぐちゃぐちゃになっていてよくわからない。
でも、骨が見えるってことは目は見えてるってことだ。そしたら次は体。体は・・・なんとなく感じる。手足もちゃんとあるみたい。お!動いたぞ!よしよし。
ここは・・・ベッドか?うっわ、すごい豪華な感じ。装飾もなんだかピカピカ輝いてるし。なによりこのフカフカ・・・この世のものとは思えない。
体は、見た感じ普通だな。制服を着てる。特におかしなところはない。記憶もだんだん整理されてきたし。
名前は・・・そうそう!田中だ!田中士郎!高校生になって一か月!青春をこれから謳歌するんだ!ってあれ?名前を思い出したはいいけど、ここは僕の部屋じゃない。てか、青春を・・・謳歌する・・・はずだった。
はずだった。おかしい。なんで過去形になってる。いや、まず第一に人骨ってなんだよ。しかも大量に。おかしいだろ、これ。
僕、なんなんだ。なにをしたんだ。
いや、確か学校に向かってたんだ。いつも通りに朝ご飯を食べて、家を出た。だんだん暑くなってきたな、なんて思いながら歩いて、それから・・・信号無視をした車に跳ね飛ばされて・・・それから・・・
「まさか、僕死んだのか!?」
「ええ!そうよ!死んだの!いらっしゃい!死が集まる場所へ!」
このベッドは、本当にこの世のものではなかったみたいだ。
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「あの?あなたは誰なんです?突然人に死んだとかいって。失礼ですよ?」
「なによ、事実なんだから失礼じゃないわ。あなたは死んだの。自分で言ったじゃない」
まあ、車に跳ね飛ばされたのは僕も思い出した。そこから先のことはわからないけど、死んだのかもしれない。
だが、それにしてもこの少女はなんなんだ。人が死んだのがやけにうれしいみたいじゃないか。僕は知らないうちにこの少女の恨みでも買ったのか?
見ているだけで吸い込まれそうな碧い瞳。宇宙のように真っ黒で、サラサラと流れる川のように艶やかな長い髪。整った目鼻立ちになかんかスタイルのいい体。
着ているドレスは真っ黒で、ところどころに宝石がちりばめられた豪奢なデザインだ。
あれ?この女の子ひょっとしてすごいかわいいんじゃないか?なんか人間離れしたものを感じてしまうくらいだ。
「なによ?じっくり眺めちゃって。そんなに私はかわいいかしら?」
「いや、確かにすごいかわいいです。さっきは突然失礼だとか言ってごめんなさい」
「ふぇ?わ、わたし!か、かわいいの!?ほんと?ねぇほんと!?」
なんだ?いきなり顔を真っ赤にして。ひょっとして、言われたことなかったのかな。すごくかわいいと思うのだが、違ったかな?
ああ、いやいやそんなことよりだ。この場所のことだ。つい少女のかわいさに惑わされたが、まだ僕には知らなくちゃいけないことがある。
「あの、ここってなんなんですか?死んだってところまでは認めますけど・・・って、聞いてますか?」
「私かわいいって・・・私はかわいい・・・そう、かわいいのね私。うふ、うふふふふ」
「あの・・・すいませーん」
「っ!?は、はいっ!き、聞いてます!」
何で敬語になったんだろう。というか、まだ顔赤いぞ、この子。なんなんだ?結構残念な子なのか?
でもとにかく教えてもらわなければ。ここのこと、そして死んだはずの僕がなんでこんなことになっているのか。
「もう一度聞きますけど、ここはなんなんです?あと、僕はなんでこんなことに?」
コホン!と少女は一回せき払いをして、僕をビシっ!と指さした。
「あなたには私の眷属となってもらうため、死者の淀みが集まりし我が冥界に来てもらったわ!」
ん?なにを言っているのだろう?この子。冥界っていうのはまあ百歩譲って認めるとして、眷属ってなんだ?聞いてないぞ、そんなこと。そもそもこの子一体何なんだ?最初からここにいたみたいだけど。もしかしてこの子も死んだのか?
「我が冥界とか眷属とか・・・あなた誰なんです?というか、なんです?」
そういえばこの質問最初にしたけど、答えてもらってないな。
「いいわ、教えましょう。私は死神。ここに集まる死者の淀みを減らす役割を与えられた神よ」
「死神・・・もっと物騒な感じだと思ってましたけど、そうでもないんですね」
「物騒なわけないじゃない!ひどいわ、まったく。それで、眷属の話ね。あなたには私の依り代を守ってほしいのよ。そのために眷属にしたいの」
「守るって・・・その依り代ってのは、誰かに狙われてるんですか?」
「そうよ、私以外の神々全員にね。わけを詳しく話すと長くなるんだけど・・・聞かせておくわ」
そうして、彼女は自らの過去とこの状況に至る経緯を話しはじめた。
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私たち神々はもともと別の世界にいたの。私たちはそこで人間と協力して世界を動かしていたわ。
しばらくはそうやってきたんだけど、ある日飽きてしまったの。
神々はみんな死の概念がないから、うまくいきすぎた世界に飽きたのよ。だからこの世界にきた。次の刺激を求めてね。
でも一つ誤算があった。この世界には死者の淀みが多すぎたの。私たちは淀みに侵されると消えてしまう。だからこの世界で神は現界できなかった。でもそれじゃあ退屈だから、淀みをなんとかして減らそうと考えたの。それで生まれたのが私。淀みを減らすためだけに神々に生み出された神、それが私の正体。
話を戻すわ。神々は淀みを減らすことには成功した。けれど無くなることはなかった。増え続けたのよ、淀みは。え?前の世界はどうだったのか?淀みなんてなかったわよ、もちろん。神がいたんだから当然じゃない。
・・・続けるわ。神々は無くならない淀みを無くす究極の方法を編み出した。といっても、考えれば当たり前の話なんだけどね。そう、人間が死なないようにすればいいの。つまりは不老不死ね。よく聞く話でしょ?伝承とかであるじゃない。ああいうのは全部神々がわざと人間に教えたの。
でも不老不死化は簡単じゃなかった。様々な方法を試したわ。人間に伝説の木の実を取ってこいとか言ってそそのかしたりね。
で、結局今に至るまで不老不死は実現できなかった。まあ、成果は少しあったわ。人間が自発的に不老不死を求めるようになったことくらいだけどね。
私の年齢?乙女にそんなこと聞くなんて最悪よ。もちろん秘密にするわ。
で、ここからが重要よ。神々はいつまでたっても思い通りにならないこの世界にしびれを切らした。滅ぼすって言いだしたの。よっぽど失敗が悔しかったんでしょうね。でも私はそんなことさせたくない。今までたくさんの死に向き合ってきてわかったの。この世界の人間は素晴らしいわ。
死者の淀みっていうのはね、生きていた間の苦しみから発生するの。とても多かったし、すべてが苦しそうだった。でも同時に淀みを減らそうという光もあった。苦しかったからこそ、乗り越えようとして光を生み出すの。死んでしまうからこそ、必死で生きようとするの。そんな輝きを生み出せるこの世界の人間を滅ぼすなんて、許さない。だから私は神々に叛逆するの。
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「そのためのあなたってわけね」
「いや、そのためっていわれても・・・」
「なによ?察しの悪い人間ね」
いや!肝心なことがわからないだろう!叛逆するといってもどうするのかわからないし、なんでそれで依り代なるものが必要なんだ?
しかも神々は淀みのせいで現界できないのに、どう滅ぼすっていうんだよ。まったく、この子はどうにも抜けてる気がする。
「あ!なんか今私を残念なものを見る目で見たわね!」
「はぁ・・・見てないよ」
「タメ口になってるし!!別にいいけども!」
「いいんだ・・・じゃあ、まだ少し気になるんだけどいいかな?」
「今の説明で足りないことあったかしら・・・?まあいいわ。聞いてあげる」
「君はどうして依り代を必要とするの?それに神々は現界できないって言ってたのに、どうやって世界を滅ぼすつもり?」
「簡単よ。人間にやらせるの。自分たちの力の一部を与えてね。私は死んだ人間にしか干渉できないから同じ方法は無理。だから私が直接相手をするために依り代が必要なのよ」
「君は現界できるの?」
「淀みに対抗するために生まれたのよ?耐性があるわ」
なるほど、そういうことか。でも人が世界を滅ぼそうとするんだろうか。僕ならしないけど。
何か従わせるエサがあるんだろうか・・・例えば、不老不死とか。
「君の依り代を守るって、計画がばれたってこと?」
「ええ、そうよ。神々は私の依り代が完成する前に消す気よ。それをあなたに守ってほしい」
「わかった。やってみる」
「ええ、ありがと。じゃあ早速あっちでの計画を・・・って!はぁ!?いいの!?そんなにあっさりと」
「信用できない?」
「いえ、そういうわけじゃ・・・でも、もう少し迷ったりするんじゃないかと・・・」
自分でもそう思ってた。この話はまだ分からないことだらけだ。最初は混乱もした。疑ったりもした。でも、彼女の言葉を聞いて決めた。死んでしまうからこそ、必死で生きようとする。死に意味があるというのなら、それを彼女に証明してほしい。自ら死を選んだアイツを、認めてやってほしい。
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確かに彼女に協力するとは言った。それは間違いない。いまさら取り消す気もない。
だが、聞いていない。
「いきなり女子高生になるだなんて、聞いてないんだけどおおおおおおおおおおお!!!!」
どうやら前途は多難なようだ。
少し長いかなとも思いましたが、いかがでしたか。
次回は主人公がちゃんと女子高生になるのでお楽しみに。
誤字脱字等ありましたら、すみません。
近いうちに更新します。