よろしくな。
完結でございます。
「おっはよ!」
「さようなら」
「いや酷くない!?」
朝っぱらからうるせぇんだよ耳元で。
……嘘です俺の耳元には奴の肩より下しかありません。デケェんだよチャラ男。
先日、俺はこの金髪野郎にプロポーズされたが、男が男にプロポーズされて嬉しいと思いますか? 一部の人を除いて気色悪いだけだろ。
そもそも身長デカすぎて怖えだけだしあまり近付かないでほしいくらいだ。怖いんだよ。デケェんだよ。
今日は高校のイベントで林間学校擬きが行われるらしいが、擬きって何だ。しっかりしろ。
とにかく遠征し自炊したりして何か……過ごすだけだ。1日だけな。
一体何の意味があるんだかさっぱり分からん。
だけどまあ……こいつと離れられるってだけで良い、か。
──何だろう、一瞬坂上が遠く感じた……?
意味分からんな。
俺はデカいバカを放って高校へ向かった。
────高校では林間学校へ行く為のバスが一台だけ準備されていた。
……ちょっと待て。林間学校に行くのは一年生全員だから5クラス合計150人いるんだぞ。どうやって行くんだ一台で。
先生に問いかけたら『80人くらいがバスで他は徒歩』というふざけた答えが返って来た。
80人で乗るバスもクソ狭いだろうが徒歩で行かせるのはどうかと思うんだよ。バカか。
この感じだと林間学校擬きを行う場所も狭そうだな。バスせめてあと一台くらい用意しとけ。
……因みに俺はバスでその上座れた。徒歩の皆さんお疲れっす。
「よし、6時前までに飯の準備を終えろよ! 昼飯は各自弁当を持参した筈だ! 解散!」
解散! じゃねぇだろおい。
弁当は言われたけど何をどうやって夜飯の準備をするんだよ。そして何をやれば良いんだよ。飯食って寝るだけか?
説明が少しも足りてねぇんだよ。教師辞めちまえ。
とりあえずクラスの委員長に話を聞いてやる事をやった。薪割ったり校内? 清掃したり。
俺達は何しに来たんだよ。何も勉強してねぇぞ。
山奥で過ごす何かか。それに成りきるのか。
「本庄君ちょっとこれ手伝ってくれる?」
「ん、ああ……」
どこのモブが話しかけて来たかと思ったらちょこちょこ出て来る名2だった。本名川名真名。
見辛えな。
名2が運んでいたのは風呂に使う薪だった。いやどんだけ薪使わせんだよ。
俺は一通り運び終えると名2を無視してとりあえず部屋に戻ろうとした。
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「ねぇねぇ、あのいつも一緒に居る金髪で長身の先輩って、どんな関係なの? 凄く仲良さそうだけど」
「それって……坂上の事か?」
「心底嫌そうな顔しなくても……」
凄く仲良さそうって……そんな風に見られてんのか。マジで最悪だな。
あんなバカと仲良いとか……まあ悪くはねぇけど。
「アイツは家が近いただの幼馴染みだよ。一方的なクソうるせぇバカだ」
「そ、そうなの? でも二人見てると、ただならぬ関係なのかなぁとか思ったりしちゃったり……」
何か興奮してんぞコイツ。気味悪いなおい。
ただならぬ関係って何だ? ただの幼馴染み以外に俺らって何だ?
全然身に覚え無いので逆に何なのか聞き返して見た。
「BLだっり~! しない!? しない!? ねぇ! ねぇ!?」
「ふざけんな」
とりあえず手刀をかましといた。
マジで気分が悪くなる事言うんじゃねぇよ。言っておくけど俺は嫌な事なら女でも男でも容赦しねぇぞ。薪で殴るぞ。
誰がBLだバカかこいつは。
どこをどう見たらそんな風に見えるんだか……いや間違いなく坂上がしつこいせいだな。あのバカがベタベタしてくるせいだな。
本当に後でアイツぶん殴る。
「おお、丁度良い所に来たな本庄。ちょっと頼まれてくれないか」
「あ?」
────数学教師に頼まれたのは、山の麓に在る店で人数分の飲み物を注文して来てくれって事だった。そんくらい自分で行けよ。
山降りてくの辛いんだぞこの野郎。
相変わらずダメダメな教師共だ。事前に済ましとけ。
「山ん中は少し寒いな、五月だってのに」
山中はそこそこ冷え込む上、急な斜面があり足元は湿って歩き難い。本当に面倒くせぇ。
しかもこの山にはケーブルカー以外に登り下りする物が無い。
そのケーブルカーは登る時と帰る時しか使用してはならない決まりで、今は使えない。時間も合わないしな。
つまりはこの急斜面で泥道な山を気をつけながら進まなければいけないんだ。生徒を何だと思ってるんだうちの高校はよ。
昔から運動神経は大して良くなく、何も無い所で転んだりも結構する。
そして興味無い事は殆ど覚えない為こんな山の地形も知らねぇし……さてどうしたもんか。
もう既に道が判らねえ。
適当に下ってきゃ良いか。
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──でもよ、こんな甘い考えが大体危険を招く──────。
はい、落下。クソ痛え。
「あー、何メートルくらい落ちたんだ? 10メートル? 下にもう直ぐ着くかも……って、何も見えねえな」
ああ、道に迷った上に落下して結構痛えし泥塗れだし……最悪な林間学校────待って、今思ったら山だから山間学校で良いんじゃね?
我ながらアホな考えだ。
さてと、スマホとかは全部校内? に置き去りにして来たからなぁ。どうするべきか。
こんな山奥に誰かが居るとは思えねぇから無駄に叫ぶ事はやめたほうが良いな。
まあまだ朝だし、暫く帰って来なきゃ心配で捜しに来るだろ…………いや待て、あの教師共だからそれさえしてくれるかも心配だ。向こうのが心配だ。
──マズい気がして来たな。
────1時間以上は恐らく経っただろうが、未だに助けが来る気配は一向に無い。
まああんなアホ教師共だからな、『登山に1時間くらいかかるだろ』とでも思ってるだろう。この山そんな高くないから。
それに登る時はケーブルカー使えるんだから降りるのに時間かかっても登るのには時間かからねぇよ。
「しくったなぁ……」
ふと隠れんぼの記憶が脳裏に蘇る──こんな時に限って……いや限らずにも思い出すのはいつもアイツとの記憶。
何でだよ……って言っても、分かりきってんだけどな。
どんな時でも、苦しんでる時や寂しい時には坂上が傍に居た。居てくれた。
励ましてくれて、優しく笑ってくれて包んでくれて、俺を何度も救ってくれたんだ。感謝してる。
どんなに不恰好にあしらわれ続けても、振られ続けても何度でも諦めずに好意を伝えて来る。
そんなアイツの事が最初の内は本当にうざくて仕方なかった。
でも──そんなアイツだったからこそ俺は、ずっと傍に居たんだ。アイツを見て来たんだ。
「……何で認めちゃうかなぁ……」
そうだ俺は────
坂上の事が好きだったんだ。
昔も、今も、多分……これからも。
「助けてって言ったら、来てくれんのかな……」
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──って、思った直後俺の視界は薄暗くなり目の前にはジャージ……。
「捜したよ幸、無事で良かった!」
「マジで来たし!!」
「え? 何の話?」
「いや何でもねぇ」
超うれし……助かったけど超怖え!!
まだ誰にも気づかれてねぇ筈なのに来たよ! しかも凄い速さで見つかったよ!
──まあ助かったから良いけどさ。
俺はおんぶされている時に坂上から発せられた説明で気分が悪くなった。
「実は同時刻にこっそりバスに忍び込んで付いてきたんだけど、途中で幸が見えなくなってもしかしてって思って捜してたんだ。遅くなってごめん」
「ああ……急に寒気が」
「え!? 大丈夫!? 温めてあげようか!?」
「やめろやめろやめろやめろ」
本当にゾッとするわコイツ。ストーカーみてぇ。
──でもなぁ……あんまり、もう嫌に感じねぇかも知れない。むしろ、何か、有り難みを感じると言うか。
とにかく、本当に今回は助かった。
何となく顔を見せたくなくなった俺はその大きな背中に顔を埋め、こいつに対して精一杯の感謝を告げた。
「ありがとう、助かった」
「ううん、どういたしまして。無事で良かった」
本当に本当に面倒くさいし気持ち悪いししつっこい奴だけど、絶対に声には出さないけど────
好き……だぞ。坂上。
その後はまさかの坂上を入れての山間学校。
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────ああ、体中が痛え。酷い目に遭ったわ。
「本庄、起きろ。そろそろバス出るぞ」
「マジかよ、体中痛えのに……」
昨日落下で今日帰るとか体力的にかなりキツイんすけど。たく、誰のせいでこうなったと思ってんだ。
俺が壁に寄りかかりながら歩いていると、玄関っぽい場所に坂上が待っていた。
どうやらバスまでおぶってくれる様で、その上席もとっといてくれてるらしい。気が効く奴だ。
優しくて、でもキモくて……いや、それがコイツなんだろうな。
俺は無意識に微笑んだ。
「サンキュ、頼むわ」
「幸……!」
ん? 何か坂上が震えている……目を輝かせている……鼻血出してる……!?
おいどうしたコイツ。
「おい、大丈夫かおま……」
「可愛いいいいいいい!!」
「いってぇえええキメエエエエエ抱きつくなあああああ!!!」
全身痛めてる奴に普通全力で抱きつくか!? コイツ本当に頭おかしいんだろうな! 超痛え!
何だ!? って感じで皆目を丸くしてるし、名2を含めた何人かが感動してるし本当に最悪だコイツ!!
俺は坂上の両腕を振り払って自力でバスに向かう。
「さっさと乗れ全員! あの変態が乗る前に出せ!」
「幸!?」
全員が乗った直後にバスは即発車。意外と俺の言う事聞いてくれるんだな運転手さん。
車内で女子共にすんごくキラキラした眼差しで礼を言われたが全て無視。本当に最悪だ。
このデカブツが居なければ俺は変な事に巻き込まれる事は殆ど無かっただろうに、これじゃ変な噂が立ちそうだ。
……ん? 横にデカブツ……??
「うわあ!?」
「ちょ、声デカいよ幸」
「何で俺より奥に座ってんだああああ!?」
「いや、言っちゃ悪いけど幸足遅いから……」
そうだった俺足遅いんだったわ。忘れてた。
あーあ、つまり俺は気付かずにコイツの隣に座った訳か……。
「いやぁ、幸の愛の告白、すっごく感動したなぁ」
一瞬で車内中がザワついた。因みに俺もザワついた。
何の話だ!? 俺がいつお前に告白した!? いつ俺が声に出した!?
騒然とする中、ふと気付いた様に人差し指を立てた坂上は、詳細を声に出す。
「俺の脳内に直接『好きだよ』って送られて来て、それが幸の声だったんだ」
「どんな妄想してんだテメェは!!」
「愛のテレパシー!?」
「違えだろアホ女子!」
やっぱコイツに気を許すべきじゃなかった。
どうも夢愛です!
『身長40㎝の差だそれがどうした AB』、完結しました!
変な終わり方でしたね(笑)
前作の方が倍以上長かったですね。あんま思いつきませんでした。
このシリーズは恐らくもう作られないんじゃないかなぁと思います。
それでは、全く人気は出ないですが終わりにします!(笑)
ありがとうございました!
※エブリスタのをコピペしました。