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最近さ。

2018年8月30日に更新した模様。諦めたとか書いてあった。

 坂上から告白されて一週間……二週間と過ぎた頃だった。

 俺は幼い頃の記憶を無意識に辿っていたんだ。


『もーいーかい!』


『まーだだよ!』


 ──懐かしい景色だ。俺と坂上が隠れんぼをしようとしている。てかしてる。

 恐らく5、6歳くらいの頃だと思う。

 そう考えると長い付き合いだな。


『もーいーかい!』


『もーいーよ!』


 この後俺は坂上の事を探しに向かうけど、途中で林に入り込み道に迷ってしまう。それ程幼かったんだろう。脳が。

 だけど────


『幸! ここにいたの!? さがしたよ!』


『悠くーん!』


 ──坂上が俺を見つけ出してくれた。

 鬼が捜されるって、そんな隠れんぼ聞いたこともないな。あるわけ無いか。そりゃ隠れんぼじゃねぇ。

 この時、何を血迷ったのか俺はコイツに恋をしてしまったんだ。

 マジで何考えてんだか。


 でも、そんな気持ちを忘れるべく日々を過ごして行き、本当にもう友人以外の何でもないと思ってる。

 そもそも、男同士で好きになるとか気持ち悪いだろ。

 だから俺は、坂上との距離を置き始めたんだ。


 ──いつも通りの学校、いつも通りの景色。俺はヘッドホンをいつも通りつけている。

 誰とも会話はしない。必要無いからな。

 ……コイツ以外とはな。


「幸、宿題ちゃんとやってる?」


「お前と違ってな」


「授業受けてる?」


「たった今な。テメェ教室戻れ」


「気にしない気にしない」


「先生、コイツ追い出してくれ」


 担任の田中先生が坂上のデカさに怯えてるので俺が襟を掴んで廊下に放り投げる。重いなクソ。

 てか授業中に来んじゃねーよバカか。

 名2の質問責めは全て無視し、放課後の図書館へ向かおうとしたら──廊下で坂上が待ち伏せしてやがった。邪魔くせぇ。

 コイツどんだけ暇なんだよ。


「何の用だよ」


「デートしようよ」


「脳外科行って来い。一人で。じゃあな」


「待ってよー」


 坂上をスルーして行こうとするが、そのドデケェ身体の長え腕が行く道を邪魔する。ぶん殴られてぇのかコイツ。てか力強えなおい。

 諦めて振り向くと、コイツはとびきりの笑顔を見せる。

 決してときめいてないからな。断じて。


「ショッピング行こう!」


「あっそ」


 結局振りきれなかったのでついて行った。

 迷惑な奴だ。たく。

 ─────────────────────

「コレ幸に似合いそうだね!」


「そうか、お前の脳内は花畑のようだな」


 女物の服を手にしてはしゃぐバカの顔面にストレートを打ち込む。

 結構本気で。

 コイツ絶対バカだろ。男にんなもんが似合う訳ねーだろクソ変態野郎。


 ……ヘラヘラしてんな。


「幸何も買わないの?」


「買いたい物なんて別に無いからな。もう良いだろ、帰るわ」


 腕掴まれた。急に掴まれると痛ぇんだけど?

 あと力強えっつの。

 つーか側から見たらどんなんなんだろうなこの状況。

 男が二人で女物の洋服の場所に居るよ。ただの変態って思われそうだな。

 変態はコイツだけで充分だろ。


「コレ買ってくるからちょっと待ってて~」


「……おう」


 ため息をつきながら店前のベンチに腰をかける。にしても暑いな。五月で。

 帰っちまうか……いやでも後々しつこくされても迷惑だからな。仕方なく付き合うか。

 暑いけど。

 ヘッドホン壊れねえかな。大丈夫か。


 五分程して坂上が出て来た。

 帰ろうとしたけどまた腕を掴まれ、今度は飯を食いに行こうとレストランに連れてかれた。

 コイツ……人の都合一切考えねぇな。


「どうせ暇だろ?」


「いや勉強したいんだがよ」


「しなくても出来るでしょ。幸は」


「…………」


 お前はやらなければ出来ないだろうがクソチャラ男。お前こそ帰って勉強してろ。

 やっぱ昔の俺はどこかおかしかったんだろ。

 こんなバカを好きになる奴なんて変な奴しかいねぇよ。昔の俺は変だったんだよ。昔の俺はな。


「……何だよ」


 気付いたら、めちゃめちゃ見られてた。

 ジロジロ見んな気色悪い。


「幸、俺ならお前の事守ってやれるよ?」


「そうか。良かったな」


 急に何言い出すんだコイツ。バカか。バカだ。

 そもそも守ってもらわなくたって全然平気だわ。昔の俺とは違うんだよ。

 泣き虫だった俺とはな。

 身長は低いけど。


「ねぇ、本当に俺じゃダメ?」


「……何が」


「付き合ってくれない? 結婚ヤダ?」


「当たり前だろ。さっさと脳外科行け」


 そして帰って来るな。

 男同士で結婚なんてしたって考えてみろよ。どうなると思う。

 周囲からは変な目で見続けられるぞ。その上噂にもなる。

 気持ち悪がられるし……最悪だぞ。

 ……ん? ちょっと待てよ。

 何でだ? そんな事にならなければ良いとでも思ってるのか俺は。な訳無い無い。

 ───────────────────────

「……幸、どした?」


「いや何でもねーし」


「そ?」


 ……何でもない……訳ではないんだが、そう言うしか無いだろ。

 何か急にコイツに対してなんか、気持ち悪くなってきてるとか、な。

 そんな事言ったら嫌われ……いや別に良いだろ嫌われたって。むしろ嫌われてーよ。

 こんなに好かれてたら気持ち悪ぃよ。

 幻滅されて結婚なんて言われないようにしてぇよ。

 ──だけど何だこの……何つうか、がっかりさせたくないっつうか。うーん。


「本当に大丈夫? 幸」


「大丈夫だっつうんだよ」


 大丈夫だ。何も無い。そう言うことにしておこう。

 そうしよう。


 ──帰り道にある公園。その奥には秘密の道がある。

 昔迷ったのは、そこの道の奥でだ。

 人が一人入れる程度の幅しかなくて周りは草木で覆われている。その先は二つに別れる路がある。

 右に行くと俺が昔迷ってしまった林へ繋がり、左へ行くと森の中にある澄んだ泉へ辿り着く。

 その泉は普段人が入る事は無い。大人なんて入れる幅、殆ど無いしな。

 つまりはチビや子供の特権……かな。


「昔から、ここによく来てたよなぁ」


「そうだな」


 懐かしいな、何年振りに入ったんだか。未だに水は綺麗だ。

 ……てか良くその図体で入れたなコイツ。


「辛い事とかあったらすぐここに来てた。俺達の隠れ家でもあったよね」


「ま、やる事は何も無いけどな」


 踵を返した坂上は笑顔でいる。


「何か悩みがあるなら、泉へ投げ込めばいいよ」


「悩みをどうやって投込むんだよ」


「いや、物理的な意味ではなくてね」


 つまりは泉に向かって悩みをぶち撒けろという事だろう。んなこたぁ分かってる。

 だが悩みの元凶であるコイツの真横でそんな事が出来ると思うか? 絶対辞めた方がいいと思う。

 絶対何か言われる。

 ……いや、何も無いならどうだっていいか。

 俺は一歩泉へ近付くと、周りの空気を吸い込んだ。


「最近、幼馴染みに対する意味不明な感情が蘇ってきてる!! うぜぇからどうにかなんねぇかー!?」


 我ながら、何て大雑把なんだと心から思った。

 もうちょっと言い方あっただろうよ。

 そして隣にいるデカブツを見てギョッとした。

 ───────────────────────

「幸、それって俺の事? そしてその感情ってもしかして……!!」


 目を輝かせた金髪が感動している。気持ち悪ぃ。マジで。

 何だよ? 何だよもしかしてって。おい。何か知ってんのか?

 言わなくていい、そして知らないでくれ。絶対に。

 近付かないでくれ、抱き付こうとしないでくれ、泉に落とすぞ。


「幸ー!」


「……!!」


 飛びかかって来た金髪チャラ男を泉へ突き落とし、俺はその中から出た。

 マジで鳥肌立ったわ。

 あんな幼馴染みヤダわ。気持ち悪いしよ。

 ──今はまだ絶対にアイツを好きにならないが、後々が心ぱ……いや無えわ。アイツは好きになれねえわ。

 害虫を飼う方がマシだと思う程キモかった。

 さてと、どうしたもんかねぇ……。

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