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いつの間に

『AB』とは『アナザーボーイズ』の略です。

 どうも、 俺は本庄幸太です。

 今日で高校1年となった俺はいつもの様に朝飯を食って外に出た。

 俺は基本的に人と接するのが苦手で、 常にヘッドホンで音を遮っている……その為周りからは地味だのなんだの言われ続けた、 興味はないけどな。


 中学は面倒くさくて途中から不登校にはなったが、 勉強は余裕で出来る、 別に嫌いじゃないし。

 高校で同じ学年になる奴らの脳に期待だな、 またバカばかりだったら競い甲斐がねーからな。


「お! 相変わらず艶々の黒髪いいね幸! 」


 背後から元気よく突っ込んで来たのは幼馴染みのチャラ男、 坂上悠太(さかじょうゆうた)

 金髪が目立つ奴で、 明る過ぎるから最近は一緒に居たく無くなって来た程うるさい。


「ああ、 先行くな」


「いやいや一緒に行こうよ」


 面倒くせぇ何でコイツなんかと一緒に登校しなきゃならねーんだよ。

 ヘッドホンで遮るか。


「こら! ダメだってヘッドホンしながら歩いたら! 」


 坂上は俺のヘッドホンを没収した、 それ学校に着いて返さなかったら命ねーからなお前。

 ……それにしてもコイツ急に異常な程身長伸びたな、 俺と何㎝差だよ。


「なあお前身長いくつだ? やけにデケーけど」


「194㎝だよ」


 いやデカいデカい、 怖いわ。

 そんなでけーのかよ、 俺身長伸びなくて154なのに……40㎝も差がありやがる、 コイツは怪物か。

 俺はデカすぎる隣の金髪に少し恐怖を抱きながら学校へと歩みを進めた。


 校舎に入ると同時に坂上からヘッドホンを奪い取り、 そのまま教室へ向かった。


「うおっ、 ちっちぇ」


 教室で俺にぶつかって来た男子生徒は大抵こう言う、 何故なら皆170とかある中俺だけ格が違う低さだからな、 クラスで1番小せーよ。


 俺は黒板に書かれている席に座り、 今まで同様にヘッドホンをし周りと自分を隔離した。

 こんなんじゃ友達が作れない? 気にすることは無い、 別に必要じゃ無いからな。

 これをきっかけに坂上の奴も離れてくれたら1人集中して勉強が出来るんだけどな。

 ────────────────────────

「おいー、 お前らの担任になる田中だよろしくー」


 おい、 俺は今の瞬間に高校生活が不安になったぞ、 教師があんなダラけた奴でいいのか、 良いわけねーよ。

 田中先生は今日、 入学式の日程を配り始めた。

 まあ、 一般的なのと変わりようはない……いや待て何で入学式3時間もやるんだよ、 長いよ。


「君、 本庄君だよね? 私川名真名! よろしく」


「ん? あ、 ああ……」


 俺がプリントに文句をつけていると右の席から見知らぬ女が話しかけてきたが、 名前に『名』が2つも入ってるよ、 変わってるな。

 俺は適当に相槌をうち、 先生の方へ顔を向けた。

 入学式で何故かバンドの発表を見る事になった俺達新1年生はとにかく呆然としてそれを終えた。

 いやこうなるわ。


「ねーねー本庄君って頭良いの? 」


 またコイツか、 暇なのか? いちいち話しかけてくんじゃねーよ名2。

 俺はまた適当に相槌をうった。


「もー、 とりあえず報告。 後ろのドア見てみ? 」


「ん? ドア? 」


 右手を腰に置き左手で何かを指差す名2を見てその方向に目線を向けると、 そこにはドアに完全にぶつかりそうな金髪のチャラ男が居た。

 ……坂上、 何で来た。


「幸! ちょっと話そうぜ~」


 アホには口で言っても意味がないので、 俺は仕方なくそのアホについていき教室を出た。

 坂上は別に自由に入って良いわけじゃないのに勝手に相談室に入り、 急にその場に倒れ込んだ。

 汚い。


「校長の演説だけで50分だぜ? どう思うよ」


 あのハゲそんな話してたのか、 それよりバンド1時間の衝撃が凄くて忘れてた。

 ずっと立ちっぱなしで辛かったけどな。


「この高校毎年毎年校長の話がめちゃくちゃ長いんだってさー」


 この世の終わりとでも言うように坂上は転がり回る、 だから汚いんだよ。

 絶対指摘されるからな。


「何で黙ってんの、 別に襲いやしないって」


「んな事1ミリも思って無かったしお前のデカさで襲われたら恐怖の度が凄いから絶対やめろよな」


 因みに坂上と俺は同級生じゃない。

 坂上は今年転校して来ただけで高3なんだ、 何でわざわざそんな時期に転校したんだか……。

 バカを極めてるな。

 ────────────────────────

 先輩という威厳が全く無いけどな、 ただただガキっぽいだけだ。


「どうせ話だろ、 勉強に集中してりゃいいだけの話だ」


 俺はヘッドホンを付けながらその部屋を出た。

 アホに構ってる暇は無いんだ、 サボるなら自分1人でサボればいい。


 ────。

「おお! 流石だな本庄、 お前は将来有望だ! 」


 授業の内容なんか簡単すぎてすぐ解ける、 だからどの教師にも言われる事だが、 生徒共は良く思ってないだろうな。

 こんな1人だけ特別待遇されてたらよ。

 それに将来なんて考えた事もねーしなぁ……。

 俺が考え込んでいると、 急に机に思い切り手が置かれた……明らかなヤンキーが4人立っていた。


「お前ちょっと来いよ」


 ……まあ暇だからいいか。

 俺は言われるがまま校舎裏へと連れてかれた、 そこには更に2人ヤンキーらしき男達が待っていた。

 まるで作者の時を思い出すようだ。


「何か用か? 」


「テメェ調子乗ってるからとりあえずリンチ決定な」


 何だ、 ダメじゃないかこの高校。

 害虫が大量に住み着いてるぞ、 しっかり掃除しとけよなぁ……ほらゴキブリだ。


「テメェ舐めてんのかどこ向いてんだコラ」


「いや、 悪い虫が居てな」


 俺は近付いて来る奴らを完全に無視して害虫を外へと追い出した、 これで良し。


「で、 臨時ニュースが何だったか」


「リンチだ」


 あ、 リンチか、 臨時ニュースじゃねーのか間違えた。

 間違える事がこんなに恥ずかしい事だとは思わなかった、 しかもこんなバカ相手に間違えるとは。


「で、 俺はどうすりゃいい? 抵抗した方がいいのか? 」


「自分で決めろや」


 んー、 自分で決めるのか……抵抗してどうするか、 抵抗しないなら後々有利かも知れないな。

 よし、 抵抗しないで居よう。


「んじゃあ抵抗はしない、 好きにやれ」


「腹立つんだよ!! 」


 ……抵抗はしないぞ。

 俺はとりあえず軽く首を傾け、 大振りな拳を避けた──抵抗じゃなくて首を傾げただけだぞ。


「舐めてんのかコラァ! 」


 大量の人数で俺に迫ってくる奴らの攻撃をしゃがむ、 靴紐を結ぶ、 スキップするなどで軽く避けていく。

 いや弱いしダサいなコイツら。


「オラァ!! 」

 ───────────────────────

 1人の蹴りが俺の背中にヒットしてガラクタの有る囲いの中に吹っ飛ばされた。

 うげ、 汚ねぇ。

 俺はそのガラクタの近くにとりあえず大事な物を隠しといた、 スマホとか壊されたらシャレにならないからな、 弁償させてもデータは帰ってこないからな。


「くたばれチビっ!! 」


 一斉にかかって来るが……まあ別に抵抗する程強くはないしな、 所詮見た目だけの連中だ。


「ちょっと待てよ」


「いてっ! 」


 ヤンキーの1人の腕が何者かに曲がってはいけない方向に曲がり始めている。


「いててててててて!!! 放せコラァ!」


「放せじゃないだろ、 何してんだお前ら」


 ……坂上だった。

 いや、 止めなくても変わらなかったんだが……慰謝料ふんだくれたかも知れないのに邪魔するなよ。

 まあ嘘だが。


「代わりに俺が相手してやるよお前ら、 彼はこういうの慣れてないからな」


「上等だ! 」


 ────。

 一瞬と言っても過言ではないくらいの早さで地面にヤンキー6人が転がった。

 こいつ強……。


「大丈夫か? 幸」


「ん、 まあな」


 見た目からしてヤンキーで無くとも不良には十分見えるけど、 もしかしてコイツは良くやってたのか?

 だとしたら少しショックだな……。

 坂上は俺の前にしゃがむと抱きついて来た。


 ……は?


「いやぁ俺ね、 昔から幸が狙われてると代わりに喧嘩してよく怒られたんだよ、 続けてたら強くなっちゃった」


 いや、 笑顔で言われてもな……それより俺の代わりに今まで相手してたのか……ちょっと申し訳無いな。

 にしても強くなり過ぎだろ。


「今回気付くの遅くて怪我させちゃった……ごめんね」


「いや、 お前が謝る事なんて何も無いと思うんだが……」


 どんだけショック受けてんだか、 今にも泣きそうな表情をしてる……泣くなよ迷惑だから。

 しかも高校生の最上級生だろ。


「俺は、 一生幸を守るから……!! 」


 ……んん? 『一生』? どーやって一生俺を守るんだ? おい。

 坂上は俺の両手を強く握り、 再び目力を込めて周りに聞こえないくらいの声で叫んだ。

 いや、 後ろのにバカ共倒れてるけどもな。

 ─────────────────────

「俺は幸が好きなんだ! 結婚して下さい! 」


 ナニイッテンダコイツ……は? 好き? 結婚してくれ? 頭わいてんじゃねーのか? ボウフラでも何でも、 この高校は虫ばかりだな。


 俺は坂上の手を振り払い、 脳天に手刀ぶちかました。

 坂上は暫くもがいたが、 諦めずに再び手を握ってきた。


「大好きだ! 結婚してくれー! 」


「一旦くたばれテメェ!! 」


 直後の鈍い音が木霊すると、 そこには先程まで倒れていた男達に1人が加わっていた。

 犯人である俺は早歩きでその場を離れていった。

 幼馴染みで、 アホで、 チャラ男で、 バカで……そんな奴に告白されて気持ちが悪い筈なのに、 顔が熱くなっていた。


「認めねーし……」


 俺と坂上の恋は不思議な始まり方をした。

 俺は絶対にあいつの事が好きだと認めたくねー。









 了

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