第1話 に、に、2度目!?
「ふぁ〜。」
とあくびをした。
何か引っかかった。
なんか声が高くなっていた。
よく見てみると昨日より視界が低い。
少し胸の方も触ってみる。
けどあまり分からなかった。
私はお風呂場に行って裸になり、風呂場にある大きな鏡の前に立った。
鏡を見ながらもう一度自分の胸を触ってみる。
「んっ。」
と甘くて変な声が出た。なんか変な感じ。
胸はわかりずらいけど少し膨らみがあった。
体中隅々まで触ってみた。
体のラインもしっかりあるし、肌も柔らかい。
間違いない女の子に戻ってる。
あと一つ、身長が縮んだ。
中学三年生になった時の男子の時は163cmあったのに、多分今は145cmないくらい。
そういわゆるロリっ子になったらしい。
理解をしてから服を着て
「ママ!ママ!」
と叫びながらママのいる方へ向かった。
「美蘭その声。も、もしかして…?」
「う、うん。自分でもよく分からないけど戻ったみたい。」
「やったじゃない!でも背が小さくなっちゃったわね。新しい服一緒に買いに行く?」
「うん!行く!」
とまあ、服が必要になったので買いに行くことになった。
男の子の頃の服はぶかぶかすぎるので、小学校の頃に着ていた少し小さめの服を着ていくことにした。
上は半袖下はスカートって組み合わせで。
ショッピングモールに行くと人が大勢いた。
女の子の戻ったとはいえ昔の恐怖感が消える訳でもなく、私はすこし身構えていた。
「美蘭?どうしたの?」
「ちょっと…人が怖くて…。」
と言い私は周りをキョロキョロと見回す。
「大丈夫よ、もうあんないじめより酷いことなんて起こらないから。」
「で、でも…。」
分かってる。分かったてはいるんだけど体があの時のことを忘れてくれない。
「美蘭、いくよ。」
ママは私の引き洋服屋さんへ入った。
そこでママは私にいろんな服を着せて、似合うって言っていた服を全部買っていた。
フリフリが着いた服やスカートからズボンまで。
大人の財力やばいなと思った。
家に帰るともう12時を過ぎていた。
「ママー、お腹すいちゃった。」
「今から作るからちょっと待っててね。」
「はーい。」
食卓の椅子に座り昼食ができるまで待つ。
待ちながら私は女の子に戻った幸福感と、これからどうするかの不安感に覆われていた。
「はい、おまたせ。」
「ママ、ありがとう。いただきます!」
スパゲティーだ。
食べ始めたはいいんだけれど、少し食べた時多いかなと感じた。
「ママ、ごめんなさい。少し多いかも。」
「あ、そうだね。美蘭、女の子に戻ったものね。体も小さくなっちゃったし。多ければ残しておいていわよ。母さん食べるから。」
「うん!」
ま、予感的中で食べきれなかったわけだけどね。
はぁ…、何気に小さい体も苦労するんだな。
小さいと可愛いとか言うけど実際は違うと思う。小さくて顔が可愛いから、愛でたくなるほど可愛く感じるんだ。
でも私は自分では平凡だと思う。
昼食を食べ、私は部屋に戻る。
最近色々あって、あまり絵を描いていなかったから久しぶりに描こうかな、なんてね。
私は久しぶりにベットに背中を任し、絵を描く。
ブランクがあって上達してた絵が、あまり上手く書けていなかった。
絵が半分くらいかけた所だったかな。
(ピンポーン)
とインターホンがなった。
今は午後の2時前。
こんな時間に誰だろうと思った。
インターホンの後の数秒後に私の部屋に来た子は、
「やっ美蘭ちゃん。」
隆二くんだった。
「りゅ、隆二くん!?じゅ、受験は?」
「え?僕受けないけど?」
「え、え、でも。なんで?」
「それは秘密。」
「えー。」
と私はびっくりしてついつい戻ったことを伝えるのを忘れていた。
「美蘭ちゃん、もしかして。」
「ん?何?」
「いや、女の子に戻ったのかなって。」
「あ!うん!今日何故か起きたら戻ってた!でもなんで気づいたの?」
「うーんと、声とか、顔立ちとか、体のラインとか?」
と隆二くんが言った瞬間、何か恥ずかしくなってそっぽを向いて体を隠してしまった。
「ちょ、美蘭ちゃん。なんでそっち向くの?」
「え、だって。こんなちっちゃいし…。」
「ん何が?」
「言えないよ。」
「もしかして胸…」
「ちがーう!」
反射的に振り向いて叫んだ。
「身長だよ、身長!もう!」
「あ、ごめん、ごめん。言われていれば身長縮んだね。」
と隆二くんは笑って言った。
「う、うん…。」
「もしかして気にしてるの?」
「そりゃね。男の子の時あんなにあったのに、戻った瞬間こんなに縮んでたら…ね。」
「美蘭ちゃんは戻りたくなかったの?」
「そうじゃないけどさ。」
「いいんじゃないかな、ちっちゃくても。美蘭ちゃん可愛いし。」
「ばっ。隆二くん何言ってるの。私が可愛いわけないじゃない。」
「そんなことないさ。」
気づいたら顔が熱くなっていた。多分私の顔は赤くなっている。可愛いなんて男の子から言われたことが無かったからか、それとも…。
とそんなこと考えていた時、心臓の鼓動が早くなっているのに気がついた。それも男の子の時とは違う遥かに別な何かだ。
(あ…。私いつの間にか隆二くんを好きになってたんだな…。)
この時ようやく気づいた。男の子の時は同性ってことで、何かが引っかかっていたのかもしれない。
多分小学生、いや下手したら幼稚園児からかもしれない。
とにかく私はいつの間にかこうなっていた。
「美蘭?どうした?顔真っ赤だぞ?」
「べ、べ、べ、別に何も。」
「ならいいんだけどな。」
「そ、それよりもさ!なんで受験しなかったの?」
「それはだな…。ったく秘密ってさっき言っただろ?」
「ご、ごめん。」
「ま、いいか。美蘭にも関係あるしな。」
私は驚いた。隆二くんが受験しなかった理由が、まさか私と関係あるなんて…。
「え?私に関係がある…??」
「うん、だから言ってやんよ。それはだな…しようと思って。」
その時トラックが通って声がかき消されて重要な所だけが聞こえなかった。
「ご、ごめん。もう1回お願い…。」
「だからな、美蘭と一緒に就職しようと思って。」
「へ…?」
私は訳が分からなかった。
「え、なに、どういうこと?」
「美蘭このままだと高校も行けないだろうからさ。ほらあんなことがあって同い年くらいの子に恐怖感あるんだろ?」
「それはそうだけど…。なんで就職なの?来年一緒に学校とかじゃなくて。」
私がそう言うと隆二くんは下を向いて少し黙った。口を開くと、
「わりぃ、考えてなかった。」
「えー!?」
なんてとぼけるものだから思わず叫んだ。
「ま、本当は理由があるんだけどな。」
「だーかーらー!その理由ってなに!」
「まあまあまあ、落ち着けって。今話してやるから。な?」
「あ、ごめん。」
いつの間にか隆二くんの顔が目の前にある状態になっていた。途端に顔が熱くなって、隆二くんから離れた。
「そ、それで。なんで就職なの?」
「さっきも言ったが、美蘭は同い年くらいの子に恐怖感あるだろ?」
「う、うん。」
「確かにそれだけ考えたら学校でもいいかもしれない。だけどな、お前が今まで引きこもっていたのって学校にも幼稚園と重ねて恐怖を感じてたのかもなってな。」
「あ…確かにそうかも。今考えるとそっちも考えただけで体が震えちゃう。」
私は右肩を左手でもち左肩を右手でもって、背中を丸めた。
すると隆二くんは後ろに回って、抱きしめてくれた。
「だから、学校より就職して早めに社会に出た方がいいと思ってな。どうだ?美蘭?」
と隆二くんはボソボソと小さめの声で言った。
(隆二くん暖かいな。)
「う、うん。確かにその方がいいね。でもなんで、隆二くんまで?」
「そりゃお前1人じゃ心配だから。僕もやろうと思ってな。安心しろ!親には許可取ってきた。」
「じゅ、準備いいね。もし私が断ったらどうするつもりだったの?」
「それはその時考えるまでさー。」
「あ、あはは…」
なんか隆二くんの考えってすごいなって思った。