夏
掲載日:2018/07/06
あなたが存在する意味など知らないし、肯定する言葉も敢えて告げない。
誰かの喝采が、或は、陰口が、聞こえても。
僕はあなたのことを知らない。
光が、ブラインドの隙間から差し込んでいる通路で。
僕は、すれ違う人の顔を見ないようにしていた。
通り過ぎていく時間と、そして、振り返る時間。
あなたは、笑うだろうか。
あなたは、蔑むだろうか。
綺麗な景色を見たい、と思っても。
こんな姿じゃ、空も見えない。
行き帰りのバスに群がる人の中に。
僕は身を捻じ込むことも出来そうにはない。
重なる空を愛した。
降り止まぬ雨に恋した。
風が止まると悲しくてやりきれなかった。
頬杖をついて、溜息をついても。
それは別にそうしたいから、そうしていただけだった。
美しくありたい人の言葉が、時に誰かを傷つける。
それは、正しい言葉、正しい台詞、求められたもの。
それでも、それは、何ら意味をなさぬ無為な虚しいものに過ぎなくて。
涙は、ただ、蜻蛉のように消えた。
人は意味を求め過ぎて、それを何かに重ねる。
そして、ただ、つまらない言葉を口にする。
誰かを傷つけることも知らず、無邪気さとは程遠く。
夏の日には桜など存在してはいないような顔で。
誰かが、あなたを忘れる。




