おひめさま、といれにいきたくなる
「はい、ひめちゃん、おかあさま!!どうぞおめしあがりください!!」
メイドに手伝われながらルズクが入れた紅茶が、テーブルに座る姫とリージンの前に差し出される。
リージンがそれを軽く口に含むと、満足したようににっこりとした笑顔で娘の頭を撫でた。
「えっへへー♪」
その満面の笑みを見ながら、姫はこの紅茶の香りをどこかで嗅いだことがあるのを思い出した。
かつて高価な茶葉として誰かから飲まされたことがあり、その時は甘くしっとりとした味だった気がする。
「んくっ.....え、ぅぇ....!?にが、ぃ......」
「あらあら、姫様にはまだお砂糖が必要みたいですわね」
だが今の幼い彼女の舌にはそれは合わなかったらしく、むせた口元をメイドにナプキンで丁寧に拭かれた。
「ルズク、本当に姫様を無理やり連れてきたのではないでしょうね?」
「ちっ、ちがうよー!姫ちゃんがデリアちゃんとおさんぽしてたから、いっしょに『おちゃかい』しよーって!!!ね!?」
ツイテンールの青い髪と腕をパタパタと振り回しながら必死に弁明するルズクに、姫も言葉を重ねる。
「そ、そうなのっ、ルズクちゃんと、あそびたくなって......」
「何かの途中だったのではありませんか?何か忘れてることはございませんか?姫様?」
クスリと笑い問いかけられる、しかし姫は大きく柔和な目をきょとんとさせ小首を傾げるだけだった。
「ふふっ、それでは今日はこのままこの子の部屋にお泊りになられてはどうでしょう?」
「えっ、やったーー!!!!!ひめちゃんとおとまりだー!!!ひゃはー!!!!!」
リージンの提案を聞いた途端、満面の笑みで両手を広げぴょんぴょんと飛び跳ねるルズク。
「それじゃあルズク、お風呂の準備をしてきなさい。」
「はーーーい!!!!」
一目散に部屋の扉を開けて出ていく幼いサキュバスの後を、メイドが一礼をして追っていく。
それをぽかんと眺めながら、姫は砂糖をたっぷりと入れてもらった紅茶を口につけた。
「相変わらず我が子とは思えない、落ち着きのない子ね」
ふふっと笑いながら、二人きりになった部屋の中でリージンは冷めかかった紅茶を飲み干した。
「でも、ルズクちゃんはとってもいい子なの。いつもわたしのおててを繋いでくれて、まるで、おねえちゃんみたいで....」
心のそこから嬉しそうな幼い笑顔でルズクのことを楽しそうに語る幼いサキュバスをリージンは微笑ましく見つめていた。
しばらくすると彼女は、笑顔のまま姫の小さな体躯をそっと抱き上げ、驚いた表情の姫をそのまま膝の上に座らせた。
美しさと優雅さを兼ね備えた彼女の膝にちょこんと愛らしく幼いサキュバスが座ると、それはまるで絵画のような雰囲気を漂わせる。
「.......?」
大きくくりくりとした琥珀の瞳でぽかんとリージンを見つめる幼いサキュバスの頭に、そっと手が添えられる。
その瞬間だった。姫の視界に一瞬砂嵐のようなものが走り、頭のなかの靄が消えていくような感覚が駆け抜けた。
「あっ....っ!!!」
すると一瞬前の呆けた表情が嘘のように険しくなり、身体を暴れさせてその膝の上から逃げようとする。
「いいのかしら?私がこの手を離したとたん、あなたはまた可愛い幼稚なお姫様に戻ってしまうのよ?」
その言葉に動きを止めると、彼女はキッとリージンの顔を睨みつけた。それに構うこと無くリージンはそっと彼女の頭のティアラに指を這わせた。
「ふふ、とってもお似合いですわよ。これのおかげでそろそろ色んな影響が出ているのではなくて?
.....『自分の本当のお名前』は?」
心底愉快そうな邪悪な笑みを浮かべながら、膝の上に座る幼いサキュバスに問いかける。
「.....っ.....」
それを聞いた途端彼女の表情が更に険しさを増し、睨む目つきが鋭くなった。
「ふふふ、もう思い出せないのでしょう?....『生まれた所』は?『あなたのママ』は?」
「....黙れ.....!!」
彼女の頭の中に浮かぶのは自らの少女趣味の部屋と、自分を優しく撫でてくるクイーンの顔だけだった。
どれだけ頭の中を探っても本当のことが思い出せない。その苦悶の顔をもう片方の手で優しく撫でられる。
「うふふふ、あの愚かな魔法使いを人形にして、呪いをかけるだけでここまで上手くいくなんて....愉快で仕方ありませんわね」
「....なっ....貴様が、デリアをっ...」
口元を隠しながらくすくすと笑うその顔を、幼いサキュバスは見開いた目で見つめた。
「実に無様な最後でしたわ。いまわに何と言ったと思う?
『いずれあの人が、貴様たちを葬るわ』ですって。その人が、小さいサキュバスになって子供と仲良く遊んでるのを見るのはどんな気分かしら。ねぇ?デリアちゃん?」
「きさ、まっ....」
幼いサキュバスの膝の上にすわるクマのぬいぐるみを、つんつんと青白い指でつつく。
その指から庇うようにぬいぐるみを抱きかかえると、幼い顔に似合わない殺気と憎悪を込めた目であざ笑う顔を見上げ、睨んだ。
「今は、貴様らの思い通りだろうが...いつか....」
そのあざ笑う顔の笑みが、一瞬が深くなる。
「このおまじないをといてっ、ママたちをやっつけるんだもん!!....っ!」
忌々しい呪いを解呪して、殺さなかったことを後悔させてやる。そう言い放ったはずの口は意思を裏切り、舌足らずで子供らしい幼稚な言葉になってしまった。
咄嗟に手を口でシルクグローブに包まれた手で塞ぎ、頭からリージンの手が離れたことに気づいた。
睨みつけていたその顔も、胸の底から沸き上がってくる不安さと見下されてる幼い恐怖に耐えきれず俯いてしまう。
あれだけ頭の中で湧き上がっていた怒りが水のようにするりと抜け落ちていく。壁の時計が何時を示しているのか、わからなくなっているのに気づく。
「ふふ、そろそろお風呂の準備も終わったことでしょう。
自分よりもはるかに年下の、それもあなたが侮蔑していた魔物と一緒にお風呂をお楽しみくださいませ。ゆ う しゃ さ ま....ふふ♪」
「ひ、ひゃぁぁっ.......」
小さな体躯を抱えたままリージンが急に立ち上がると、地面が一気に離れたことにとてつもない恐怖を感じてしまい口から幼い子どもの悲鳴が漏れてしまう。
そのうえ、先程まであれほど憎悪をむき出しにしてた相手の胸にぎゅぅっとしがみついてしまっていた。
自分の情けない姿に吐き気すら覚えたが、彼女にできる抵抗は二体立つ甘く優しいリージンの香りに魅了されないように理性を堪えることだけだった。
結局、何の抵抗もできず、抱きかかえられたまま幼いサキュバスは風呂場へと連れられた。
「はい、姫ちゃん、ばんざーいして!!」
今はもう一匹の下着姿のサキュバスに、されるがまま自らの華やかなドレスを脱がせてもらっている途中だった。
だがその顔は太陽のように明るいルズクとは対象的に、可愛らしい丸い顔が苦々しく歪んでいた。
ぶるるっ....
「.....あっ....」
「んにゃ?」
下着姿となった身体が小さく震えたと思うと、幼いサキュバスはぽっこりとした下腹部を抑え、もじもじと柔らかい太ももを擦り合わせ始める。
先程たくさん飲んだ紅茶のせいか、服を脱いだ肌寒さと共に狂おしいほどの尿意が彼女を襲い始めた。
「あわわ、ひめちゃんこっちきてこっち!!」
あっと思うまもなく手を握られ、トイレへと連れて行かれる。その間にも歩く度に振動が膀胱にひびき少しでも気を抜けば決壊しそうになってしまう。
情けない姿を晒している屈辱や、トイレに行くことすら世話をされている羞恥も全ては尿意の前では霞んでいた。
早くこれから開放されたい、その子供らしい一心で個室のドアを開け、股間を覆うそれに手を――――。
「....あっ、やっ、そうだっ、おむつ......」
幼いサキュバスは、自分がそれを履いていたことすら忘れてしまっていた。ルズクにそれを見られていたこと、そして布おむつをどうやって外せばいいのか今の彼女には理解できず、頬を真っ赤に染めて涙目で必死に引っ張る。
だがまるで一向に脱げる様子は無く、尿意だけがどんどん切迫していく。
「あー...やっぱり脱げなさそう?」
ひょっこりとルズクの顔が扉から飛び出てくるのを見ると、びくっと身体を震わせた。
ちょろっ....
「あっ....やっ、やだぁっ、いやっ.....」
「だいじょーぶだから!!....はいっ!!」
小さく水音が聞こえたように感じた瞬間、めくるように彼女の手で布おむつが剥がされ、もう一匹のサキュバスはすとんと便座の上に座っていた。
ほっと安心すると同時に、自分がひとりでそれを脱ぐことすらできなかったこと、ルズクに自らが付けていたおしめを握られてることにひどく羞恥を覚えた。
「にゃはーよかったよかったー!それじゃあ終わったら言ってね!!」
「.....ぁっ...ま、まって......」
「はえ?」
自らのそれを手に持ったまま、ドアの向こうの消えようとした彼女を無意識に引き止めていた。
トイレの個室という狭い密室の空間に、一人ぼっちでいることは今の彼女の幼い精神にはとても無理だった。その幼い恐怖を抑えきれず、口から漏れてしまう。
そしてそれをルズクはすぐに察してくれた。ドアをぱたんと閉じ、姫のぷるぷると震える小さな手をそっと握り大きな笑みで彼女を安心させようとする。
(なんだ....これ....おかしい....こんな、トイレなんかで....)
自然とその手をぎゅっと握り返してしまう。もう何回も慰め、握られた手は彼女の心を否応なしに安心させた。
二匹のサキュバスがトイレで手を握りあったまま、数秒の時が流れた。
「....姫ちゃん.....もしかして、でない?」
「....う、うぅっ.......,」
なんという無様だろうか、一人は怖いとトイレの中に一緒にいてもらい、そのうえ手まで繋いでもらってるのに、今度はその姿を見られてるという羞恥心から思うように排尿できなかった。
あまりの間抜けな己の痴態に幼いサキュバスは顔から火が出そうになってしまう。
「うーん....あっ、そうだ!!」
するともう一匹のサキュバスは便座に座る彼女の後ろに回り込み、そのまま彼女の震える小さな身体をそっと抱きしめる。
困惑の文字を浮かべる顔のとなりに口を近づけ、耳元で甘く優しい声で呟いた。
「だいじょうぶだよ姫ちゃん。ほら......しー、しー」
「....えっ.....な、に.....」
「いーからー、はい、しー、しー」
「やっ、やだっ...そんなこども、みたいな.....」
突然のルズクの言葉と行動に驚き、まるで赤子をあやすような幼児言葉に顔を真っ赤にして首をふる。
だが耳元で囁かれるその甘い声は、身体の奥底に響くような気さえしてきた。消えかけた尿意が再び姿を表し始める。
「恥ずかしくなんかないよ、いっしょににしー、しーって言お?はい、しー、しー」
(ふざけるな.....こんな、こんなこと.....!!)
「し.....しー、しー.....ぁっ...?」
耳元で囁かれる単調な幼児言葉に憤慨しそうなはずなのに、幼いサキュバスの身体は自然とそれを反芻するように口ずさんでしまっていた。
咄嗟に小さな手で口を押さえようとするが、後ろから伸びてきた手が下腹部がそっとさすりはじめるとそれどころでは無くなった。
軽くその手が柔らかなお腹に沈むと、狂おしいほどの尿意がますます切迫していく。
「だいじょうぶ...力抜いて....しーしー♪しーしー♪」
「し、しー...しー♪しーしー♪」
それに加えて耳元で囁かれるルズクの声と、自らの口が勝手に楽しげに幼児言葉を唱えるたびにガマンができなくなっていく。彼女の言う通りに排尿してしまいたいという欲望が大きくなっていき、繰り返される度に頬が勝手に緩み目が潤んでいく。
嫌だ、こんな子供の、魔物の前でなんて絶対に死んでも嫌だ。霞んだ理性の必死な叫びに、潤んだ目を痛いほどぎゅっとつむった。
だがそんな心とは裏腹に、口は嬉しそうに幼稚な言葉を唱え続け、すぐそこまできた限界に身体はぷるぷると震え始める。
「しー、しーーーーーー.........♪」
その瞬間、ほんのすこしだけ強くルズクの身体が押し付けられ、抱きしめられ、そして少しだけ強くお腹に指が沈む。
ぶるるるっ
「.....あぁっ....♪」
綻んだ口から、心底嬉しそうな、気持ちよさそうな声が漏れた。
耐えろ、と一瞬浮かんだ言葉は、緩みきった口から涎と共にこぼれ落ちる。
「うんうん、よく出来たね姫ちゃん♪はい、しーーー♪」
「あ、ああう…♪しぃいい♪しぃぃぃ....♪」
ちょろちょろと小さな水音がトイレの中に響き渡る、自らの秘所から黄色い液体が溢れ出る。
鋭敏になった嗅覚が特有の香ばしいニオイを感じ取り、それをルズクにも嗅がれてることに羞恥で胸がいっぱいになる。
魔物の手で、その前で、自分の半分もないような年齢の幼児に、排尿させられている。
恥ずかしさが爆発しそうになるのに、圧倒的な開放感と快感に流されてしまった。
溢れ出るそれを止めようとしても、未だなれない女の身体の排尿をコントロールすることが出来ず、気持ちよさに身を震わせるだけだった。
「えらいえらい♪しーしー出来たね、すごいよ♪」
そう言って頭を優しく撫でられると、開放感と気持ちよさ、恥ずかしさでいっぱいになってる頭に安心感まで加わり、何も考えられなくなってしまう。
「えへ、えへへ....♪しぃぃぃぃ.....♪」
気がつけば身体がくねり、その手に頭をすりすりと擦りつけ始める。その間にも排尿は続き、涎が垂れた口からは幼児言葉と笑いが漏れる。
自分が何をしているのか理解できない。ただ気持ちいいとしか考えられない。
(えへへ.....ルズクに....おしっこ、させてもらうの....はずかしいけど、きもちいい......♪)
その幸せそうな顔からは、忘れまいと決意した勇者としての自覚や魔物への憎悪などは完全に消え去ってしまっていた。
そのあと、汚れた股間を拭いてもらうことから、再びおむつをつけられることまで彼女はルズクにされるがままだった。




