01章:決断
テイルズっぽい話を書きたかったので、妄想ながらゲームのシステムっぽいものを補足的な説明として書いていますが、造語を除けば、本編とは全く関係ありません。
01章:01*蹂躙
サクラメントの神隠しが流行ってから十年。炭鉱夫として一人前のつもりになっていたクガは、ディーノの誕生日を境に、彼を捜しに行きたいと予てから考えていた。最近は帝国内のゴタゴタが増えている所為か、連合諸国との衝突も減っている。特に二年前に第三日女が戦争被災地への慰問中に襲撃され、死亡してからは第一と第二日子の独裁と圧政が始まり、対外的な衝突は減り、膠着状態になっていた。
だが、ディーノを捜したいと相談したところ、両親は反対した。かつて我が子が行方不明になったかのように悲しんだ姿を見ている手前、クガは勝手をするのに二の足を踏んでしまう。加えて、戦争が膠着状態になった都合、その縮小した市場の影響から敗残兵と言う失業者も増やしている。だから、心配のあまり両親は見当違いにも二つ隣の村がそのような敗残兵の襲われたと告げ、クガを思い止まらせようとした。
平行線を辿る議論に飽き、苛立ったクガは家を後にした。とは言え、一人前を自称しても、両親を見限るだけの覚悟はない自分にも腹が立ち、ディーノを捜したいと言う気持ちとの間で葛藤する。気付けばかつてディーノが姿を消した森に来ていた。様々な柵と予断、葛藤と覚悟に折り合いも付けらずにいると、両親と喧嘩したらしいと聞き付けたディーノの妹のノノアがやって来た。
今でも兄の事を心配してくれて、ありがとう。と告げるノノアがクガに向ける好意が、兄へのそれに重ねたものだと理解しているクガは返す言葉もなく、一方で結果何も出来ていない自分を改めて突きつけられながら、森を後にする。
が、森の出口も近づいたとき、ノノアの頭が弾け飛んだ。同時に組み伏せられるクガ。本当に敗残兵がいたらしい。六人もの男がいた。三人がクガを組み伏せ、二人がノノアを羽交い絞めにしている。ひとりは目も空ろでノノアに襲い掛かろうとしていた。暴力やか、陵辱か。何れにせよノノアと言う個人が蹂躙されようとしている中、何とか拘束を解いたクガは、何時の間にか手に武器を持っていた男が振り上げる、爪のような暗器の前に飛び出した。が、その爪の勢いを止めることも、往なす事も出来なかったクガは、その爪の胸に受け止める事でしかノノアを庇えなかった。
01章:02*連行
次に目が覚めたとき、クガはベッドの上だった。聞けば敗残兵に襲われたところを、その敗残兵を追いかけていた連合諸国所属の騎士達に助けられたようだ。どうやらノノアも無事のようだ。見た目に怪我を負っているものの、陵辱されたような雰囲気……全てに絶望したような雰囲気はない。ホッと胸を撫で下ろすクガに、騎士団小隊のひとりでもあるクジャタ・ヤルヴィレフトが代表して事情を説明した。
敗残兵はマテリアル・イーターと呼ばれる次世代の特殊兵装を持っていた筈が、それがなくなっていると言う。襲われた直後からの記憶はないものの、敗残兵との最後に立ち会ったクガとノノアにはその行方を知る可能性がある。率直に言えば盗んだ疑惑もあるそうだ。身に覚えはないが、無実を証明するにも、任意の協力と言う建前で彼らに従わなければいけない事に変わりはなかった。
仕方なくと連行される事となったクガとノノアが向かうのは、パシャジャウン川の流域に並ぶかつての工業地帯の一角、連合諸国の管理下にある施設だった。途中の村と街に寄り、凡そ八日の行程になる。既に町の外に用意してあった、まるで連行する為に誂えたような荷台の車に乗り、クガとノノアは目的地へと護送される事となった。
道中、クガとノノアは血清を打たれた。敗残兵は戦地から逃げ延びた都合、不衛生な場所で何らかの感染症を患っている可能性もあり、その抑制剤らしい。確かに間際の敗残兵の目は血走っていた。健康とは言えないのは間違いなさそうである。負傷の有無もあるが、体調も芳しくないような気がした。
先ずは最初の村に到着した。クガの両親が言っていた敗残兵の被害を受けて間もない村だ。感染症の未病か、或いは血清による影響か。体調をやや崩したクガとノノアの為、一行は補給の為だけのつもりの滞在を、一泊に代える事とした。一応、嫌疑を掛けられている手前、クガとノノアは静養中にも関わらず監視が付いている。他の騎士は若しかしたら残っているかもしれない敗残兵を探し、聞き込みなどをするそうだ。
その晩、クガは熱を出した。一向に下がらない。うなされる一晩を過ごした。迎えた朝、聞き込みをしていた騎士らから敗残兵が依拠としていたらしい廃墟を探索する旨が告げられた。クガとノノアは宿に残し、仮面騎士のゼレノフ・レンダールと中年くらいのユージン・ランデスゴークが監視に付いた。
体調も戻ったクガに対し、ユージンは立会いをしてみるかと提案した。敗残兵も然り、道中でクガらを庇いきれない事もあるだろう。加えて、今の時代、戦う術を覚えている事に損はないと言う話だ。ゼレノフは微妙な面持ちだったが、クガにとっては願ってもない機会である。ディーノを探すと言う目的の下、世界を旅するにはやはりプロフェッショナルの技術は会得したい。後学の為、保身の為、目的の為の手段として、ひとつでも多くのものが欲しかった。
01章:03*戦闘
病み上がりである事も言い訳にならない。炭鉱夫として鍛えた体も無意味だった。結果、クガが無様な姿をさらしてしまった頃、敗残兵の依拠へと向かっていたほかの騎士達が戻ってきた。既にもぬけの殻で残った者は近くの山へと逃げ込んだらしい。マテリアル・イーターの行方も知りたい為、また、目的地への途中でもある為、村を出た後、そのついでに寄る事となった。
山はかつて信仰の対象にもなった険しい道程だった。主に厄難級の害獣が徘徊しており、致傷級もいるらしい。だが、連合諸国所属の騎士団だ。致傷級の害獣も相手にはならなかった。遺跡らしき瓦礫を横目に整備された?獣道を進んでいた時だ、足元から上下に揺れる大きな地震が起きる。三道は崩れ、一行は二手に分かれてしまった。目的地である遺構は共に離れた道から進めるようだ。クガとノノア、ゼレノフとマリア・シェスターク、カロル・カルリークの五人だけとなった。
さすがにクガとノノアを同じように監視し続けることは人数的に難しいと判断したゼレノフは、ノノアの護衛をクガとカロルに任せる事にし、取り急ぎ目的地の遺構へと向かい、歩き出した。戦いは下手ながら何とか騎士らについて行くクガ。何故か左腕が重たい。ユージンとの打ち合いの影響かもしれなかった。
合流した一同は敗残兵がねぐらにしていたらしい遺構に付いた。が、そこには致傷級の害獣がいただけだった。道中に出くわした害獣よりも大きく、見るかに残虐、且つ攻撃的な姿だった。案の定、一行に襲い掛かってくる害獣。騎士達も苦戦している。戦力外の上、庇わなければいけないクガとノノアが邪魔なようだ。そんなときだ。害獣の攻撃がノノアに襲い掛かる。クガがまた同じように身を挺して攻撃の前に立ち塞がった。
害獣の爪がクガを切り裂……??いたかと思われた。だが、その爪を受けてもクガの左腕は切断されていない。皮膚こそ貫いたが、腕は残っている。一瞬、何が起きたのか分からないクガの目のまで、まるで別の生き物のように動き出した左腕は膨張し、増殖した。怯み、本能的な恐怖に気圧されるように後ずさりする害獣に、クガの左腕が襲い掛かった。
01章:@*害獣について
私が妄想するテイルズの新作と言うコンセプトなので、ちょいちょいゲーム的な世界観や設定、仕様などを補足します。
この世界ではいわゆるモンスターを害獣として括っています。広義では人の社会にとって有害なものとして定義されており、厄難級、致傷級、損失級、災害級、殃禍級と分けられます。順に被害が大きくなり、これとは別に伝説級、神話級と言う特別な害獣もいます。
損失から上は個人ではなかなか太刀打ち出来ない規模と被害になり、災害級は都市規模、殃禍級は国家規模の被害が出ることもあると思ってください。ただ、強さとイコールではないところも有り、単に数が多過ぎてどうにもならないと言うケースもあります。
因みにゲーム的な話に例えると、クガのレベルが5くらいだとすると、騎士達は20か30になります。一般的なRPGと違い、戦闘してもレベルは上がりません。また、リアリティを出す為、強い奴は強い、弱い奴は弱いようにして欲しい。
まだ、この時点では全員が武器を使って戦うだけです。魔法みたいな、或いは特別な武器みたいなものは登場しません。もちろん、騎士各々に得物が違ったりはします。
各フィールド、ダンジョンには独自の生態系があり、大抵、無数の○○級の害獣とそれより上の少数の××級で構成されている。××級を全滅させてしまうと、生態系が崩れ、○○級が幅を利かせ、凶悪化、繁殖し、以前とは状況が変わります。よくRPGで初期のダンジョンとかに戻ると、雑魚ばかりで目新しさがないとか、いろいろあるので、プレイヤーのレベル制限や雑魚の変化などを入れて欲しいなと思ってみたり。
ゲームを作る上で、こう言う面倒な仕様が、どれだけプログラム的に面倒なのかは知りませんが、妄想なので、その辺は適当にお付き合いください。
01章:04*虚実
拘束具がクガの自由を奪っていた。気づけばベッドの上。どうやら施設には到着していたようだ。左腕の異形化は既に収まっているものの、騎士団は警戒心を解かなかった。左腕の暴走と言うしかない状況は、騎士団の話によれば消えたマテリアル・イーターの影響との事だった。だが、そのマテリアル・イーターが何なのかは分からぬまま、今に至っている。
施設と言っても複合的な研究所と言った雰囲気だ。ノノアとは分かれ、軟禁状態にある中、怪しい風体をした学士を名乗るロジオーン・アニキエフらに検査されたクガ。その体に取り込まれたマテリアル・イータに関わる真実も告白された。
敗残兵を追いかけていたと言う騎士団の話は嘘だった。実は敗残兵としてクガの村に現れた彼らは帝国から逃げてきた亡命者と被験者、そして連合諸国のスパイだそうだ。帝国が新型のマテリアル・イーターを開発したとの噂を下に連合諸国は動いていたらしい。つまり盗み出そうとしたそうだ。どういう過程を経、クガの町にまで来たのは分からないが、彼らが帝国から逃亡の末に行き着いたのだろうとの事だった。
マテリアル・イーターは進化する武器。人に寄生し、擬態し、適宜に変態し武器化する生物的な特徴を有する兵器だ。故に人の免疫機能との相性があり、調整しなければ時に中毒症なども起こす代物である。人から他人への移動はまず考えられない。にも関わらず、クガにマテリアル・イーターが移動した。しかも負傷に伴う移動の為、損傷した体を補っている可能性もあった。検査の結果では重要な臓器を補完している事も分かった。
可能性としてはクガへの移動も一応は考えていた為、血清も道中で打ち、予防措置もしたが、従来のマテリアル・イーターの摘出手術は不可能らしい。モノが物だけにそのままにして置くわけにもいかない。連合諸国の兵器関連の最高機密であり、緘口令だけでも足りない。監視か、秘密保持の為、隔離、軟禁もありうる案件との事だった。
クガの選択肢は限られている。死ぬかもしれない可能性も覚悟の上、マテリアル・イーターを摘出するか。その場合、無事だとしてもマテリアル・イーターと同化した左腕は間違いなく失い、且つ肉体への何らかの後遺症も残るだろう。もうひとつは素直に監視下に置かれるか。先ほどの話を聞く限り、実験の被験者か、その研究に従事する者としての暮らしが考えられる。
だが、クガには三つ目の選択肢が思い浮かんでいた。連合諸国の正式な騎士……は烏滸がましいだろうか。それでも傭兵として、マテリアル・イーターの所有者として戦争に参加する。偶然にも得た武器を効果的に使い、少しでも自身に有利なものとして理解し、交渉に使うべきだった。クガは言った。自分は戦士になると。
01章:05*訓練
ノノアと再会したクガ。ノノアも覚醒したクガのマテリアル・イーターの影響を受けているとの事だった。被験者から移動する際、その一端がノノアに突き刺さり、寄生したようだ。彼女の額の一部の皮膚は硬化している。目も青から銀の虹彩に赤が混じったものへと変わっていた。
帝国産の新型マテリアル・イーターの詳細はまだ分からない所もおおいが、基本的な仕様は同じようだ。ひとつ、人の体に寄生し、擬態し、適宜に武器へ変態させる機能。ひとつ、屠った対象からその一部を吸収し、蓄積、鉱物や貴金属などの結晶化を体内で行える事。ひとつ、その生成物を使い、武器の成長にも使える事。もちろん、鉱物として排出し、売る事も可能だ。マテリアル・イーターの効果で肉体的な強化、補助もあり、常人よりも力がだせるなどの基本的な仕様は同じだそうだ。
先ず、最初に覚える事はマテリアル・イーターの任意な発現だった。次は利き腕ではない方に付いたマテリアル・イーターを使いこなす事など。訓練の相手をしたのは主にカーギル・ダランベール。クガを連行した小隊のひとりである。彼の話によれば、マテリアル・イーターの所有者は術式が使えなくなるらしい。マテリアル・イーター独自の生理的な単純な思考が術式のテキストを阻害する傾向にあるからだ。
訓練を繰り返す内に、ノノアの影響を与えているマテリアル・イーターの断片の効果も分かってきた。彼女自身はクガと同じように戦線へ出すことは難しいものの、サポーターとしては優秀な機能を持っている。一方のクガは炭鉱夫としての実績から肉体的な部分は完成されつつあった。ただ、戦闘に於ける技術は拙い。新型のマテリアル・イーターの能力で多少補われるところもあるものの、新米もはなはだしいものだった。
最低限の基礎を学んだ後、問題視されたのは、先に起こったようなマテリアル・イーターの暴走の件だった。調査は進んでいるものの、時間はかかる。そこでクガのマテリアル・イーターの全容を把握する為の、それでいて戦線へ出すのに足りるかどうかなどの判断を下す為の、且つ経験を積ませる為の様々な実地訓練を行う事となった。
主に害獣駆除など中心に実地訓練をこなし、漸く新兵くらいの心構えが出来上がった頃、連合諸国から連名でひとつの指令が下った。クガに参加する義務はなかったが、状況と評価からクガにも参加が薦められた。任務の内容は帝国が北部に位置する独裁国を介し、鉄の森から希少な鉱石を輸入しようとしているその詳細を突き止め、場合によっては排除しろというものだった。
01章:@*サブクエスト
ゲーム的な例えだとこの辺はフリーシナリオで、サブクエストの数をある程度こなすとメインが進みます。メインイベント以外ではレベルは上がりません。メインをクリアすると、レベルが上がり、ポイントが与えられ、任意のステータスに割り当て、強化します。キャラクターはメイン、マテリアル・イーターはサブで強化と言う感じです。サブクエストの攻略数や選択肢の可否でその程度も変わります。但し、マテリアル・イーターは宿主であるプレイヤーのレベルに比例し、強化の上限が付きます。
従来のテイルズだと拠点を中心に活動するというのは少なかったように思います。況してやフリーシナリオはなかったかと。据え置き機しかやった事ないので断言は出来ませんが。直前のプロットでも書いたように、マテリアル・イーター持ちと、術式(魔法)も使える一般武器持ちに仲間のタイプは大別されます。また、初期に加える事の出来るメンツのイメージは以下のようになります。パーティーにいるからメインキャストとか、そういう邪推・推測が出来ないようにして欲しいなぁと思います。Mは男、Fは女です。既に登場した人物が殆ど。MEはマテリアル・イーターの略称。