エルフの国
エメラルまでは1週間くらいかかる予定だったが三日ですぐ近くまで来れたらしい。というのも、パンドラが言葉を解読してくれたおかげだが。
二日目にして、ティアとロイとはかなり距離が縮まった。もう友達みたいな感じだ。俺はあまり他人とコミュニケーションをとらなかったため、友達が少なかったが、この世界に来て早くも友を作ってしまった。
あれ?俺この世界のが向いてるのかな?まー、かなり活動してるから向いてはいないな。とか思うほどだ。結局どんだけか分からないが、まー悪くない。そんな感じ!
2日目からはロイが銃座につき、辺りを警戒し、ティアが望遠鏡で遠くを警戒するという布陣で、かなり車を飛ばしたことでかなりの距離を稼げた。そんなこんなで、エメラルの領土に入る事ができた。姫が乗っている事でかなりすんなり入国できた。
エメラルは、自然が豊かで、人々が自然と共存しているような美しいところだった。川が澄んでいて、空気が綺麗で、その辺にいる人が皆、美男、美女だ。ここは楽園か!?
「なーティア、この国のエルフは皆、美男、美女なのか?」
「んー・・・人族にはモテるわね。私たちにとってはコレが普通だからなー。」
「ふーーん。」
「そのぶん僕らエルフは敵が多いんだ」
銃座から降りたロイが席に座りながら会話に混ざってきた。
「エルフは高く売れるんだよ。奴隷として。・・敵が多いからこうして、エルフだけで集まって身を守っているんだ。少し閉鎖的になってしまっているのが傷だけどね」
そう言い少し寂しそうに笑うロイと表情が曇るティアを見て、なんとかしようとする自分がいた。おかしいなー。俺って全く何事にもやる気がない人間なんだけどなー。ま、同時にやりたい事は何でもやる人だけどな。
そうこうしている間に、お城が見えてきた。ここがティアとロイが住む城らしい。そこまで大きくはないけど、立派な城だ。それを引き立てるのが、綺麗に手入れされた美しいく広い庭園だ。門の前にハンヴィーを駐車し、城の敷地へと入っていく。
(ご主人様、5名の弓兵がこちらを狙っております。)
(穏やかじゃないね、撃ってきたら矢を打ち落とすだけでいいからね。)
(了解いたしました。)
敷地へ入り、少し姫から距離を置いた瞬間に矢が風を切りこちらへ飛んできた。すると矢がマモから少し離れたところで、まるで時間が止まったかのように停止した。矢の先端が陽炎のように景色が歪んでいるため、ナノボットを使ったのだと理解した。
音もなく矢を止めたため、二人は気づかずに城へと進んで行く。
(第二射きます。)
(うーん、次は避けれたりする?)
(かしこまりました。アシストします)
すると、敵の攻撃が来る方向、矢の速度、威力、など攻撃の様々な情報が頭に流れてきた。すると景色がスローモーションに感じる、5本の矢を全てを最小の最も無駄のない避け方でよける。歩く速度をほとんど変えず、に避けることができた。
驚いた様子でティアとロイが振り向き、ロイは慌てて剣を抜き辺りを警戒する。
「気配がない。」
「あー、いいよ気にしないで。」
「しかし!君の命を狙った攻撃を見過ごすわけには!」
「ロイ・クシャナルに命じます!マモの敵を・・・」
やばい、ティアは姫様モードで、ロイは騎士モード入っちゃったよ。仕方ないか。
「あー大丈夫、今捕まえるよ。」
(パンドラ起動だ!)
(かしこまりました。)
普段はパンドラの作った分身体が、独立して俺の周囲の危険などを探ってくれている。敵襲のさいは余裕をもって教えてくれる。そして、パンドラ本体を起動すると。脳の稼働率が100パーセントになり、その上でAIのパンドラが補助をしてくれる。全てのナノボットを自分の意志で完璧に操作できる。
一度全力を出そうと思ってやってみたが、世界の時間が止まったように見える。脳の処理能力が飛躍的に上がったためだろうか。ちょっとコレじゃな~。止まってる人間捕まえてもなー。
そう思い、10パーセントくらいの力まで抑えたが、全力で退却する兵士だが、ナノボットを使うと、欠伸が出るほど簡単だった。
実際欠伸しながら5人全員捕まえた。手の平を作って、それを、光学迷彩で隠し、5人を掴んで目の前まで持ってきた。
(問題なくシンクロできたな。)
(はい、お見事です。しかし、これくらいでしたら私にお任せいただければ問題なくこなせましたが?)
(いや、パンドラの本気が見たかったの。それと、今話してる君はパンドラが作った別の意識みたいな感じなの?)
(左様でございます。)
(ややこしいな~。よし、お前今からアルファと呼ぶ事にする。)
(かしこまりました。)
「す、凄い・・。」
「なんだか僕たち、マモに驚かされてばかりだね。」
「んぁ?・・・あぁ、大したことないよ。」
謙遜でなくマジで俺は大したことないのだ。うちのパンドラちゃんが凄すぎるのだ。
「それより・・あなた達!私の恩人に剣を向けるとは、万死に値するわ!」
ティアが厳しい口調で5人の兵士をしかりつける!
「まーまー、そんな怒らなくていいじゃん。俺は気にしないから」
そもそも気にする方が面倒くさい。しかし、何だか歓迎されてないようだなー。
(アルファ、ちょこーーっと警戒強めよっか。)
(かしこまりました。)
「マモ・・・私からも謝るわ、私の兵士が迷惑をかけて、ごめんなさい!」
立ったまま深々と頭を下げる姫に兵士が慌てた様子で
「姫様!おやめください!!」と言っている。
いやいや、お前らのせいで姫様あやまってるんだけど?って言いたかったが、なんか厄介な事になりおそうなので口に出さないことにした。
「貴様ら!この場で首をはねられても文句を言えん事をしたんだぞ!」
加えてロイが兵士を怒鳴りつける。
「ロイもティアも、もういいよ。この人達は俺みたいな人間が姫の近くをウロウロしていて警戒していたんだろうよ。ま、俺の服って目立ってそうだし。俺にも非があるしな。」
学ランを両手でつまみ苦笑いする。
「ま~マモがそう言うなら。」
「う、うん。しかし、貴様らはこのマモ殿に命を救われたと知れ!」
「く、申し訳ありませんでした。」
そういい兵士が頭を下げてきたので二人ともよしとしてくれた。一安心と同時に、さっさと城で休みたいとか考えていたのは内緒だ。
城に入ると、客室へ通され、用意された服に着替えた。部屋には鏡があり、久しぶりに自分の顔を見ると、かなり驚いた。髪が真っ白に変色してた。
おいおい、何だこりゃ!なんでこんなパンクな髪になっちゃってるの!・・・まーいっか。何色でも。にしても前髪伸びてるな~。こんな感じの犬いたなー。髪をかきわけると見慣れた顔が現れた。しかし、真っ黒の髪に、真っ黒の瞳だったはずの顔は、銀灰色の髪に、虹彩の色まで、明るくなってしまっている。雰囲気変わったなー俺。なんというか、目に生気が宿って・・・自分で言ってて悲しくなってきた。
(アルファ、これってお前召還した時から?)
(はい、召還された際と変わらないお姿に見えます。髪や虹彩のいろなど変えられますが、どういたしますか?)
(うそ、そんな事できるの?)
(はい、なんならお好きな容姿や体格に変化させることも可能です)
(へー・・・じゃあさ、エルフみたいな耳にできる?)
(かしこまりました。)
そういわれると一瞬耳が熱をもった気がした。再度鏡を見ると、エルフっぽい少し尖った、長さのある耳になっていた。触るとちゃんと感覚まであるから驚きだ。
(これって・・・)
(パンドラのナノボットにより細胞を変化させました。)
(これ医療に応用できそうだな)
(可能です。)
(これで俺の体頑丈にできるんだよね?)
(はい、すでにナノテクノロジーを用いて強化してあります)
(俺ってすでにサイボーグなんだな。)
(いえ、もっと高位な存在だと言えるでしょう。パンドラを起動している際のご主人様は、まさに完璧な生命体と言えます。)
(そーかい、引き続き魔法を詳しく解明しろ。更に進化できるかもだから。)
(かしこまりました。)
アルファとの脳内会話が終了したところで、ドアがノックされた。
「お客様、浴場の準備ができました。」
「え?」
酷い目に遭った。国王にお会いになるんです!身支度を整えていただきます!とメイド達に風呂場まで連れていかれて、体を洗うのも頭を洗うのも自分達の仕事だと言い出すのだ。いや、おばさんメイドとかおじさん従者がそれを言うなら、そういうもんか、貴族は凄いな~で終わるよ。
しかし、それを凄く美人なメイドが言うんだよ?照れるってか恥ずかしいっていうか、危ないだろ!流石の俺もそれは、ちょっと待ったするよ。
体は自分で洗うと譲らなかったら渋々首を縦に振ってくれた。しかし、3人のメイドが俺の頭を洗うのだ。取り合う様に。こいつら何でこんなに頭洗いたがるの?なんでこんなに仕事熱心なの!?なんてッころの中で絶叫した。
服を着替えると「髪を整えます」と、これまた美人、というか美少女メイドが髪を整えてくれた。しかし、可愛らしい外見以上に目を引くのは、彼女の髪の毛の色と瞳の色だ。なんつーか、銀髪かぶるってすげーな異世界・・・真っ白な髪の毛に、左右非対称な瞳、オッドアイってやつだ。金色の瞳と、赤い瞳がひと際目立っている。
「あの、メイドさん。この世界で白い髪の毛の人って多いの?」
そう言いつつ鏡の前に座ると、若干俺の髪の毛の方が灰色がかっている気がした。
「この辺りでは珍しいです。北方では珍しくないのですが。お客様の髪色は灰色帯びてますね。凄く・・・綺麗です。」
「そうか、髪の毛洗うの大変だから短くしちゃって。」乾かねえし、とか思いながら注文をすると。
「お言葉ですがお客様。短くするとネズミみたいになってしまうので、綺麗に髪が伸ばせるように切らせていただきます。」
「あれぇ!?綺麗とか言ってなかったっけ!?」
抑揚の少ない口調で聞き捨てならない事を言うので思わずオーバーにツッコミを入れてしまった。
身支度を整えて、部屋にいると、同じく身支度を整えたロイが部屋を訪ねて来た。
「失礼するよ。マモ!見違えたね!!その耳は!?」
「あー、魔法でね。人間は割る目立ちするみたいだからね」そう言って耳をかいていると、触っていい?とか、感覚はあるの?ここは?よくできてるなー、本物と言われても分からないよ。などと終始感動してた。
なんか俺の口数が少なくても会話が進むから一緒にいてらくでいい。
しばらく雑談していると、再びドアがノックされ、綺麗に着飾ったティアが入ってきた。思わず見とれてしまった。凄く綺麗だ。なんか人間離れしてるなー。あ、人間じゃなかった。
「ティア凄いなーお姫様って感じだ。綺麗だよ」
「そう言うマモも、凄く変わった・・・その、かっこよくなった」
「おぉ、ありがとう。」
やばい、なにこれ、凄く照れくさい。この間まで一緒に旅してたとは思えないぞ。なんだこれ。
そんな、戸惑うマモには、顔を赤くし、マモを見つめる視線には気づかなかった。
「見てよ姫様!マモの耳!触ってみなよ!魔法で化けてるなんて信じられないから!」
すごーい!と言い耳を好き放題触られ、なんだか動物になった気分だった。
「ま、エルフにしては、あまり顔が綺麗じゃないからへんかな?」
「マモはもう少し自信をもちなさいよ。せっかく、綺麗なんだから。」なんてティアがぼそぼそ言っているが当の本人は聞こえてないらしく、風呂での話をしていた。
風呂までメイドが手伝う事なんて、主人が頼まなきゃ滅多に無いそうだ。随分メイドに気に入られているんだね!なんてロイが言い、ルーシーが若干機嫌を悪くし、マモが嘘だろ、やられた。と頭を抱えていた。
その時ドアがノックされ、国王様の準備ができました。とドアを開けずに声をかけてきた。
「分かったわ!」
とティアが返事をし「行きましょう。」と緊張した顔で言い歩き出した。
いよいよエルフの王に会うのかー。僕はエルフですと言うべきか、言わざるべきか。何を聞かれるんだ?あー、面接の前みたいで疲れるな。
そんな事を思いながら、ロイとルーシーの後をついていった。