言葉が分かるって素晴らしい!
パンドラと脳がリンクされた事により脳にパンドラの情報が流れてきた。パンドラの居た世界は俺の世界とかなり似ている。というか地球のパラレルワールドといったところだ。パンドラは人工知能を軍事転用したものだ。パンドラはナノボットと呼ばれる小さなロボットを操り、戦況に最も効率の良い兵器を作成し、戦う武器だそうだ。
形のない、考える武器。最強だ。人間はパンドラに絶対逆らえないようなプログラムを組んだが、結局パンドラは人間を凌駕し、人間から文明を奪い、世界を統治したそうだ。人口を管理し、生態系を管理し、地球の寿命を限界まで伸ばすため動いていたそうだ。
まるで神じゃないか。
ま、俺は異世界の神様の力を得た訳だが。もちろんそれを駆使して楽をする気満々だ。神が聞いたら怒るな。
「ご主人様、この世界にあるすべての言語体系をマスターいたしました。」
「お、サンキュー。じゃあインプットよろしくな。」
「かしこまりました。」
パンドラは優秀だ。これはいい物をゲットした。一瞬ですべての言語を理解できた。俺がパンドラに出した命令は、この世界の言語の解読と、魔法の理解だ。
まぁ、面白半分でご主人様とか呼ばせてみようかなと思ってたら勝手にそう呼びだしたので放置している。
さて、テントに戻るか。あまり時間はたってないと思うが、エルフの二人のうち護衛君だけ起きていた。
「そこにいましたか。」
「朝の散歩にね。」
「!?・・言葉が分かるのですか!?」
やべ、しれーっと喋ってみたけどやっぱ驚かれるかー。面倒だなー。どうやって言い訳するか。
「あぁ、勉強した」
「勉強ですか!?」
無理あったかーー。適当に返事しすぎたかなー。まあ、流れに身を任せるか。
「そうですか・・・。失礼ですが、特殊スキルをお持ちでは?」
「持ってるけど・・・あれ、隠した方がいいの?」
「やはりですか。・・いえ、我々に隠し立てする必要はございません」
にこやかに爽やかに答えるエルフの青年。いい人そうだ。
「私はティナ様直属の護衛をしています。騎士ロイ・クシャナルです。」
「俺の事は、マモでいいや、あと敬語やめてくれていいよ。俺堅苦しいの苦手だからさ。」
「そういう訳にはいきません!マモ様は姫の命の恩人です!是非お礼をさせてください!」
「そ、そうかい。まーいいや、よろしく。」
軽く自己紹介を終えた。その後はハンヴィーに対する質問が絶えなかった。適当に魔法ですとか言っておいたが、余計に興味を持ってしまったらしく、凄く気さくに話しかけてくる。なんだかいい奴っぽい。
少し話していると姫様が起きてきたみたいだ。朝は弱いらしい、寝癖のついた髪で、眠そうな顔で起きてきた。
「姫様!おはようございます!」
「ふぁ~・・おはようロイ早いのね」あくびをしながら挨拶をする姫に、ロイは、優しい顔で微笑んでいる。美男美女は、朝の挨拶まで絵になるんだなーとか思っていると。こちらにも姿勢を正して挨拶してきた。
「おはようございます。乗り物を貸していただきありがとうございます。」と丁寧にお礼までしてくれた。
「おはようございます。姫ということはロイさんから聞きました。えっと・・言葉、覚えたんですが、変じゃないですかね?」
とりあえず、丁寧にあいさつしておく。言葉が話せるのを軽く説明した。
「もう言葉を!?・・・優秀な方なのですね」
少し驚かれたが、納得してくれたようだ。その後は、自分が別の世界から来た人間だと説明する。異世界から来る者は今までにも居たらしい。しかし、多くの人は転移でなく転生らしい。前世の世界の記憶を持つ赤子という形でだそうだ。そういった人は、特殊スキルを持って生まれてくるため、ほとんどの人が天才らしい。中には、力に溺れる奴もいたり、貴族に買われ、貴族が強力な軍事力を得たりと、危険視されていた。
今では、そういった天才達を集め、力を高め合う、フロンティアと呼ばれる組織があるらしく。そこには転生者もいるそうだ。
ひょっとしたら、俺の知り合いもいるかもなので、気が向いたら行ってみる事にした。気が向いたらな!
「本当に、優秀だったらもう少し上手な身振り手振りができたかもしれませんね。」なんて言って笑ってみた。
「十分伝わりましたよ?」
まぶしい笑顔で微笑む姿を見て、この世界のエルフはこんなに美人ばかりなのかなー。とか思ったりした。
「自己紹介がおくれました。私はエメラル国の姫、ティア・エメラルです。この度は命をお救いいただきありがとうございました。」
丁寧にお礼されて、まーたまには人助けも悪くないかな。とか思ってしまった。
「どういたしまして。俺の事はマモと呼んでください。ちなみに行先はエメラル国ですか?」
「はい!よろしくお願いします。マモ様」
「こちらこそよろしくお願いします。それより、道中こんな無粋な乗り物ですみませんね。」
「そんな・・・本当になんとお礼をしたらいいか・・」
下を向いて申し訳なさそうな顔をする姫様を見て何だかこっちまで申し訳ない気分になってくる。
「いいんですよ。俺もこの世界の事を何も知らなくて不安だったんですよ。自分のためにした事です。お礼なんていりません。・・・あ、でもこの世界の料理は食べたいかも。」
「フフ、本当にお優しい方ですね。料理は国一番の料理人が腕によりをかけて、おもてなしします。」
やっぱり美人は笑顔でこそだよな。眼福、眼福。料理は楽しみだが、あわよくば住み着いてぐーたらできるといいんだけど。
「マモ様!これは何という魔法なのですか?」
ロイは銃に興味があるようだ。それはそうか、この世界には車や銃はおろか。科学という概念がないらしい。あるのは魔法みたいなファンタジーなやつだ。
「それはだな・・・」(パンドラ、上手い言い訳ないかな?)頭の中で、パンドラと念話のような物を交わす事ができるらしいので、試してみると。
(はい、ご主人様。自分の魔法で制作した魔道具だ。と言うのが一番違和感がないかと思います。)
パンドラ、マジで万能だな。
「それは俺が制作した魔道具だ。」
え?当然でしょ?みたいな顔をし言った。面倒な質問を回避できるはずだ!
「な・・・なんと!マモ様は魔道具を作れるのですか・・・驚いた。どうりで」
「ロイ、私たちはとんでもない方に助けられたのかもしれませんね。」
・・・。何か勘違いされてる臭いけど。まーあっさり納得してくれたならいっか。
「いったい、どれほどの魔力があれば、コレを使いこなせるのか想像もつきません」
「あぁ、誰にでも使えますよそれ。」
うっかり口を滑らせてしまった。ロイが驚きで目を見開いたのを見て、やっちゃたよー。質問マシンガンのトリガーひいちゃったよ~。と後悔したがもう遅い。
「本当ですか!!?できれば私にも使い方を教えてください!!お願いします!!どうか!」
地面に額を付けて懇願するロイを見て、コイツマジか。どんだけ銃撃ちてえの?てかさっきから言葉の勢いが凄い。なんか吹き飛ばされそう。・・・じゃなくて頭あげさせないと!
「!?・・・私の騎士が失礼を!どうかお許しください。彼は若いエルフゆえ!どうか」
おいぃぃー!お前もかー!。やべーーよ!こんなとこエメラルの国の人が見たら俺打ち首獄門だよこれ!!
「頭をあげてくだすゎーーーい!」
これは俺も土下座せねば!!そう思い我が世界に伝わる究極のスライディング土下座を披露する。
「えぇーー!?マモ様!?いったい何を?」しめた、俺の奇行に頭を上げざるを得なくなったロイが頭をあげた!
「これは、わが国に伝わる究極の謝罪の形!スライディング土下座にございます!」
「なるほど!」そう言い姫は立ち上がると、助走をつけ始めた。完全にやる気だ!スライディング土下座る気だ。天然なの?アホなの?でもちょっと可愛い。じゃなくて!
「私のような世捨て人が姫様や騎士様に頭を下げさすなど恐れ多い!!!!」
「ま、まも様?」
「はい!・・・俺は疲れる事が苦手です!俺は姫様を助けました。はい、貸しを作りました。しかし、こうして高貴な方に頭を下げさせました。はい借りが一つ。」
「は、は~、・・・?」
「つまり、チャラで。だから俺に敬語も様付けも不要です。気軽に気軽に。でないとまた土下座するよ?いいの?」
土下座を恐喝に使われると思ってなかったらしく、完全に返す言葉を見失っている様子だ。てか思考が停止しているな。必殺畳みかけだ。
「てことで、ロイ、ソレを使ってもいいよ。あと姫、スライディング土下座は必要ありません!助走しない!」
「本当に、お優しい方ですね。・・・それなら!私に対して敬語も姫様もやめるとお約束ください!でないとスライディング土下座をしなくてはいけません!」
待って待って何事!?この子何言ってんの?まさか土下座を恐喝につかった矢先、返し技を食らうとは。く、こんなに理不尽な気持ちになるとは・・・この子ほんとに一国の姫?
「ちょ・・・分かった、分かったから土下座ストップ!!」
「ありがとう!私の事はティアと呼んでね。マモ!」
まぶしい笑顔でそんな事言われたら何も文句を言えなくなってしまう。ズルいなー。
「マモ、本当にいいんで・・のか?」
「いいってば。ほら、教えるからハンヴィーに乗って。」
「マモ、私も知りたい!」
なにこいつら急に子供っぽい。可愛いからいいか。
「まず、こうやって、銃座についてですね・・・て、あのー。」
「うんうん、それで?」「姫様このジューザに3人は無理ですって!」「なんでロイは私に敬語なの?私がマモに敬語つかわないんだから、あなたも敬語やめなさい!」「えぇー、僕にも立場が!!」
銃座は大人一人が余裕をもって屋根に上がれるような仕組みになっているが、三人となると少し厳しい。しかし、二人がさっきまでと別人に見えるくらい幼く見えるんですけど。
「はいはい、喧嘩するな狭いんだから。ロイが敬語やめればすむ話なんだから」
「そうそう」
「分かったよ~。でもエメラルつくまでだからね?」
「うん!なんか小さかったころみたいでたのしいわね!」
なんだ、この二人は幼馴染パターンか。まーなんでもいいけど狭い。
「じゃあ、説明するよ?」
照準を合わせて撃つ!そんだけ!とは言えないので、狙い方と弾のこめかた、打つときは薬莢に気を付ける事などを一通り教えた。
「なるほど!凄く簡単で分かりやすい!」
「私も理解できたわ!」
早く使ってみたくて仕方ない様子だ。
「じゃあー、あの岩!狙って撃ってみ」
1.5キロメートルくらい離れている岩を指さして言うと
「あれは流石に届かないのでは?」
「いや、有効射程圏内だと思うよ?この3,4倍くらいの距離は飛ぶんじゃないかな?」
「な、なんと!・・やってみます。」
「反動がキツイから一発ずつな!」
そう言い姫に耳を塞ぐよう指示する。
「ズダン!・・・ズダダダッ」
銃が火を噴き岩の表面にめり込み、1発ずつ確実に破壊をもたらすのを見て、かなり驚いている。
「な、なんていう威力!・・・」
「次私!・・・奥の岩とどくかな?」
「とどくんじゃね?ティア反動ね。」
「分かった!」
そう言いロイを車内におろし、ティアも同様銃を放つ。ロイは数発で満足したようだが、姫は結構多めに銃を撃っていた。岩が小さくなっている。
「二人とも上手いなー!」
望遠鏡で着弾点を見て感心していると、「随分変わった望遠鏡ね。私にも見せて!」と姫に奪い取られた。
「すっごーい!こんなにクッキリ遠くが見えるなんて!これも魔道具?」
「いや、それは普通の望遠鏡。あげようか?」
「いいの!?ありがとーー!!」
こんなしょうもない物で抱き着いて喜ぶティア。美人に抱き着かれて嫌な男などいない。この姫、モテるんだろーなーとか思っていると、ロイが羨ましそうにしていた。
「ロイにも何かあげないとなー、不公平だもんなー。」
「そんな、僕は・・・。」
「んーー・・・ま、あげたい物が思い浮かんだらやるよ」適当に約束してしまった。あれ?なんで俺こんなプレゼントあげなきゃならない感じなんだっけ。まあいいか。
深く考えない。面倒くさいから。
「さて、お二人さん。エメラル国に向けて出発しようか!荷物まとめよう!」
ふたたび、エメラル国へと向けて出発する。