人助け
オオカミとの戦闘の後、暗視望遠鏡を召還し、辺りを警戒する。夜だろうが景色を見れる代物だ。どうやら見える範囲には何もいなそうだ。これはひとまず安全という認識でいいのかな。オオカミの死体を、木製の家に運び込み、灯油をまき、火をつけ家ごと焼く。召還したものは消すことができるが、細かい事はいいのだ。・・・あー、何これ、何ココ、銃つかう世界て、何でこんな軍人みてーな事しなきゃいけないんだよ。まるで軍人、いずれ廃人、ファッキュー。
我ながら、完成度の低いラップを作成してしまった。俺はラップを聞かないからな。そんな話じゃなかった。えっと、町を探さなきゃな~。てか人を探さねえと。めんどくせーけど、俺は楽をするための努力は惜しまんのだ。
望遠鏡で見た限り、まったく町なんか見当たらなかった。これ、歩くのはきついな。距離的にも身の安全的にもだ。あーあ、なんでこんな目に。ボヤいても始まらねえな。
よし、車両を召還しよう。バイクしか乗った事ないけど問題ねえだろ。上半身に刻まれた魔法陣を展開する。そして自分の家で母が運転していた軽自動車を思い浮かべる。すると軽自動車が現れた。何とも言えない色だ、だせーけど仕方ない。
運転席に乗り込み、エンジンをかける・・・。こっからどーすんだ?えっと・・シフトレバーがPのところにあるな。これは停車する時の位置だったな。Rに切り替えてみると、『ピーピー』とバックするときの音が聞こえてきた。しかし、動かない、サイドブレーキの存在に気づき、ペダル式のサイドブレーキを解除する。すると車はゆっくりと後退をはじめた。
「ブレーキ、は左のペダルだよね?くっそ、車は運転した事ねえんだよなー。」
左のペダルを恐る恐る踏むと止まった。Nはニュートラルだな。バイクにもあるから分かる。Dに切り替えると車がゆっくり前進していく。やっと動いたか。よし、アクセルを調節し、ライトを付け辺りを探索する。
ハンドルを切り曲がると。だいたい操作が分かってきた。
「おぉーー、いいねー楽だね!18歳なったらすぐに自動車学校行かなきゃな!」
なんて一人で話していると、後方からシュルシュル聞こえる。直後に車が急に遅くなり止まった。・・・なにこれ、アクセルを踏むが進まない。車を降りて、後輪を見ると完全にぬかるみにハマっている。あーあ、ダメだこりゃ。やっぱ普通車で整備されてない道を走るのはきついか。
荒れた道を走れて、頑丈な車・・・軍人が乗ってる車両だな。まずは、知識!そう思い、軍隊の車両が乗っているような図鑑を召還する。これは、以前友達が貸してくれた奴だな。そう思い、ペラペラと中身を見ていく。これかな・・・頑丈そうだし。
見ていたページにはハンヴィーなる車両が載っていた。けっこう面白いなこの本。ある程度の内容を理解し、召還した。・・・でか!!軽より一回りでかく見えるな。幅が2メートルくらいかな。全長は5メートルくらい?天井には銃座がついている。なんつーかスゲー強そう!
朝日が出てき。もう夜が明けたのか。ハンヴィーに乗り込むと、自然と操作方法が分かった。この感覚はハンドガンを手に取った時にもあった。手が触れた瞬間に使い方が分かり、即座に使いこなすことが出来た。
これは仮説だが、武器なら使いこなせるのか?もしくは戦う事を想定して作られたものなら利用することができるのかもしれない。そこで実験をしてみる事にした。ハンヴィーから降りて、剣を召還する。しかし、別に上手く振れた訳じゃなかった。うーん、自分の身体能力を超える事は出来ないみたいだな。
それならと、弓を召還してみよう。弓など撃ったことない。しかし、上手い事矢を放つことができた。威力のある矢が放てたわけじゃないけどね。
能力の欠点と利点が大まかに見えてきた。召還する物は対象物の事をあまり知らなくても召還できる。召還したものは戦闘することを想定して作られたら物なら、使い方が理解できる。と、普通凄い能力ゲットしたら使い方をマスターしてー、悪党に立ち向かい、ソレを打倒するため努力し正義を振りかざすんだろうな~。
「なんつーか、俺はこのままでいいや、でもせっかく貰った能力だからな。これも利用しつつ、ぐーたらすりゃいいか。」そう言い、欠伸をしてると、天から声が聞こえてきた。
『こんの、たわけがぁぁぁ!!!』
すげー大きな声が頭の中に響き激しい頭痛と怒りがが込み上げてきた。
「うるせぇぇぇぇ!!」
『貴様!ちょっと不思議な魔道具生み出したからって調子にのりおって!今一度力の使い方を考え直すのじゃ!世界のために!』
顎に手を当てて考え込んでいると、天の声、たぶん姫神が、そうそう、よーく考えよ。と言っている。
「なーるほど、じゃあ俺のぐーたらを邪魔する奴を倒せればいいや。」
『・・・それ、正義の味方が邪魔したらどーするんじゃ?』
「んなもん、邪魔する正義を滅ぼし新しい正義を設立する」
『お前が諸悪の根源になり下がっとるじゃないかぁ!!』
「冗談だって!んなデカい声出さなくても聞こえてますよ。魔王を倒せりゃいいんでしょ」
『そうじゃ!何か策でもあるのか?』
「あるにはある!けど、神様が殺せば済む話じゃね?」
『我々神は、下界に直接的な介入はできんのじゃ。』
「ま、やれるならそうしてるか。てか神様、突然で悪いけど町はどっちだ?」
『真東に10キロ行ったところで街道にぶつかるが、本当に突然じゃな。その重そうな道具は置いてった方がいいと思うぞ。貴様には持ち運べまい。』
「そーか、街道へ出たらそれに沿って進めばいいんだな。助かった。魔王の件だけど、倒したらぐーたらしていいんだな?」
『いいが、強いぞ?この世界の全てを敵に回してもねじ伏せるような奴じゃ。』
「なにそれ怖。俺じゃ勝てないな、諦めよう。」
『折れるの早すぎじゃ!さては最初から魔王倒すつもりなかったじゃろ貴様!』
「そんな事ないって、俺みたいな凡人Aが魔王倒すのに必死になる訳ないでしょーが」
『そんな神をも上回る可能性のある超次元魔法使える奴おらぬ!』
「分かった分かった。ところで神様は俺にスキルってくれないの?くれたのこの魔法陣だけじゃん。」
『だけって、お主な・・・それは原理的に魔法とは呼んでいるが、神の御業みたいなものじゃぞ?しかし、お主スキル持っていなかったのか!?』
「持ってるかどうかも知らねえな。」
『そうか、特別に鑑定してやろう・・・おぉ、持ってるではないか。特殊スキル、武器の支配者じゃ。特殊スキルは突然変異みたいな物じゃ。ご利益は妾にも分からんがの。』
「ふーん。心当たりはあるな。あれ、スキルのご利益だったか、戦闘向きとか、厄介ごとに巻き込まれそうで面倒くせーな。」
『またお主は・・・』
「これが俺なの、諦めてけろ。ま、魔王が俺の安寧を邪魔するなら倒してやるから安心していいよ。」
『おぉ!そうか!魔王を倒すか!とにかく、期待しておるぞ!』
そういて声の主は嬉しそうに言い残し声が途絶えた。会話が終わったみたいだな。にしても武器の支配者とか、まんまだな。ま、神様もネーミング面倒だったんだろうよ。
「とりあえず町に向かうか。」
そう言い方位磁石を召還する。ちょっと待て、この世界で方位磁石使えるのか?そう思ったが、ここの世界でも無事に針は回り北と南を指示した。合ってるか知らんけど。
地球と構造は同じなのかな?そんな事を思いながら東へ向かって車を走らせて行った。草原は地面が少しゆるいが、ハンヴィーは問題なく走行してくれている。流石だ。10キロか、時速80キロで走っているためすぐに町につきそうだ。10分もせずに街道にぶつかった。街道とは言ったものの、草を刈り、地面を固めただけのお粗末なものだった。この世界で科学は発展していないらしい。魔法の世界だもんな。
しかし、踏み固められた地面は草原を移動する時よりも随分スイスイ進むことが出来た。こりゃいいやなんて思っていると、目の前に馬車が見えてきた。
「様子がおかしいな・・・。」
馬車の周りには育ちの悪そうな、薄汚い、がたいのいい男たちが取り囲んでいた。
うわーーまた面倒事だよ。なにこれ、あの姫神様こっそり俺に、厄介事に巻き込まれるスキルとか付けただろこれ。そう思い、やり過ごそうと思ったが男たちはこちらに気づいてしまった。
馬車までの距離は20メートルくらいだがエンジン音でこちらに気づいてしまったみたいだ。こんなことなら馬車でも召還しとくんだった。あ、ダメだ俺猫以外の動物嫌いだった。猫が好きな理由は、俺が生まれ変わったらなりたいもの、ナンバーワンンだからだ。
「#####!」
なんか叫んでるな。言葉通じないのかな?試してみよう。停車後サイドブレーキを引き、後部座席に移り、天井の蓋を開け、銃座につく。そこで拡声器を召還してコンタクトをとってみる。
「あ、あ、テステス。お前ら!おふくろさんが泣いてるぞ!」
思い浮かんだ一回言ってみたかったセリフを言ってみた。てか銃座についた奴に言われたら犯人迷わず話聞かずに逃げるよね?お前のおふくろさんが見てみたいわ!ってなるよね。とか冷静な事を考えていると返答が返ってきた。
「######!!」
やっぱり話は通じないか。あれ、弓ひいてるくね?やば、臨戦態勢じゃん!チンピラ相手に大口径のマシンガンぶっ放すとかヤバすぎだもんなー。ヒュンと音を立てて矢がハンヴィーに当たる。もちろん簡単に弾くが。するとチンピラの馬に乗った奴2人が、剣を抜きこちらに向かって走ってきた。
馬には申し訳ないが、次は猫に生まれ変われるといいな。安らかに眠れよ。そんな適当な祈りを捧げ、馬に機関銃を打ち込む。
ダダダダと連射し薬莢がカラカラ音をたて飛び散る馬二頭が倒れ、2人が落馬した。チンピラの一人は恐怖で顔を真っ青にして、もう一人は、何が起こったか分からなかったみたいだが、慌てて逃げだした。残りのチンピラも慌てて逃げていった。
本に書いてあったが、さっき撃った機関銃はM2と呼ばれるものらしい。でも銃座の後ろから弓矢で射貫かれたら死ぬよね、むき出しだもん。コレ発展途上の少し古い型なんだなー、と理解することにした。
馬車に乗っていた人が降りてこちらを見ている。ハンヴィーで馬車の近くまで向かい、敵意がない事を伝えるため、両手を広げ、頭の高さまであげて、元居た世界の敵意はありませんポーズで降車すると、少し安心したようだ。
助けた人の人数、正確には馬車に乗っていた生存者の人数は約2人、要人っぽい人、人?人ではなく要人っぽいエルフだ。耳が長く、整った顔立ちをしている。長いブロンドヘアーは、上品なオーラを出している。高貴なエルフなんだろう。ボディーガードがついている。そいつもエルフだ、警戒した顔で、いつでも剣を抜けるような態勢だ。短い金髪のツンツン頭で、美男子だが目つきが鋭い。
何か話しかけてきたが、やはり言葉が分からず首をかしげる。俺も日本語で、「大丈夫でしたか?」
と聞いたが伝わらなかった。ここで日本語はつうじないらしい。面倒だ。それから身振り手振りでコンタクトをとる。
どうやら、馬車の車輪が溝にはまり、動けなくなっていたところを襲われたそうだ。なのでハンヴィーに荷物を積ませ、目的地まで案内してもらう事にした。馬車で3日かかる道らしいが、ハンヴィーならもっと早くつくだろう。
まあ、この人達町に向かうだろうし、そうすれば町にスムーズに入れそうだ。とか思っての行動だ。