プロローグ
都内にある普通の高校。偏差値は高くもなく、低くもない、なんちゃって進学校である。そこに通う一人の男子生徒。名前は工藤 護。彼は、ある一点を除いて普通の高校生だ。
ある一点とは、彼にはやる気がない!生きる気力が足りない!何をやるにも第一声はめんどくせ。といった始末。学校にはポツポツ来るものの、だいたい見れば寝てる。
「ちょっとマモ!学校来てるんだから起きなさい!」
大きな声で護を怒鳴りつけるのは、幼馴染の木下 美香だ。うるさく世話をやいてくれている。本人は面倒くさがっているが。彼女のおかげでマモルが人間でいられるのだと皆が認めている。
「そうだぞマモ、美香の言う事聞かないとダメ人間になんぞ」
世話焼き二人目、彼も同じく幼馴染の新藤 光だ。ヤンキーも恐れる武闘派風紀委員だ。元ヤンで彼もマモの同級生。護の席は窓際の一番後ろ。この席は主人公ポジションのカッコいい奴が座る席。目立つ奴が座る席だ。しかし、目立ってるのは、前の席のヒカルや、その隣のミカくらいだ。
そんな頼りになる中心人物の話を聞いている当の本人はというと。
「・・・なに?え?あぁ!水曜だぞ。」
イヤフォンをばれないようにカモフラージュし、音楽を聞きながら寝ていたのだった。彼らの忠告に適当に返事して、机に突っ伏す。
「だ・れ・が・今日何曜日か聞いたのよ!!」
イヤフォンを耳から引っこ抜かれて怒鳴られるマモ。
今更だが「マモ」というのは彼のニックネームだ。クラス全員がそう呼んでいる。この広まりの理由は、彼の自己紹介が原因だ。
「マモです。頑張ります。」
そう言って机に突っ伏して寝てしまったため、教室が固まり、ヒカルが「ククク」と笑い、ミカが頭を抱えていたのは、クラスメイトの記憶に鮮烈に刻まれている事だろう。
いつもの平穏な日常だ。開いた窓からは気持ちの良い風が入り、教団に立つ先生は古文の教科書を朗読している。
気まぐれで頭を上げると、天井で爆発音が聞こえた。全員が天井を見上げた瞬間、マモも同様天井を見ていた。すると彼の目の前に広がるのは、真っ赤に燃える岩。火の玉にも見える。彼は思った。
「ヤバくね?」
現状はもっとヤバかった。彼の眼前に広がるのはだだっ広い草原。1キロくらい先には森が見える。え?待って、ここどこ?火の玉は?ひょっとして夢の中?うわー、だとしたら寝よ。
『お前!おいお前!』
天から声が聞こえてくる。うるさい。女性の声だな。
「なんか面倒くさそう。」
『あ!貴様!今めんどさいと言ったか!?妾は神じゃぞ!』
「神様が俺に何の用だよ。てか、ここどこ?夢?だったら寝るけど。」
『おい、貴様なんじゃその態度!てか、夢だとして何で寝るんじゃ!夢の中でも寝るってお主どれだけ眠いのだ!?』
「これが本当の二度寝さ!」
『やかまし!何その顔腹立つ!妾がお前の予想していた事を言ってしまったみたいで凄い腹立つ!なんなのじゃお主は!』
「んで、ここどだよ」
『ふん!ここはお前の過ごす世界とは全く別の世界じゃ!』
拗ねてる?神様拗ねてるのこれ。てか、聞き捨てならん事を聞いた気がするんだけど。
「待って、どゆこと?」
『つまり、ここはお主がいた世界と別の世界。異世界じゃ。』
「・・・マジで?」
どうやら俺は異世界に来てしまったらしい。