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それでは恋を始めましょう。  作者: 紫野 月
8/22

 8 大野智美

結花の親友、智美さんの登場です。

彼女は中学、高校は結花と一緒でしたが、今は専門学校に通っています。

 唐突にユカが切り出した。

「ねえサト。いい女ってどんな人の事をいうのかな?」

「いい女? 何、ユカ。あんた、いい女になりたいの?」

 ユカは真面目な顔をして頷く。

 きっとまた何かあったのだろう。だってユカの目が少し赤いもの…


 この夏、ユカに初めて彼氏が出来た。

 写真を見せてもらったが、びっくりするような美形だった。

「私達、運命的な出会いをしたの」幸せそうにユカは笑った。

 しかし、それは長く続かなかった。

 夏休みが終わって大学が始まると、ユカは度々私の家に来て弱音を吐くようになった。どうやら大学で嫌がらせを受けたり、酷い事を言われているらしい。

「彼氏に相談したら? 女を守るのは男の務めでしょう」

 でもユカは、それは出来ないという。

 確かに『貴方と付き合ってるせいで苛められてるの。なんとかして』なんていいにくいか。

 ユカは中学、高校と勉強一筋だったので恋愛経験値は0に等しい。

 だから男性、それも好きな人に甘えて拗ねてお願いして… なんて芸当は当分無理だろう。付き合って三ヶ月も経つというのに、未だに苗字にさん付けで呼んでいるみたいだし、つい先日初めて手を繋いで歩いたと言ってた。『あんたら中学生か!』と、つっこみたくなる。

 まあ、あんな美形が彼氏だったら一緒にいるだけで緊張して何も言えないか、見惚れてしまうかのどちらかだわ。うんうん。


「いい女ねぇ。イメージでいくと容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。センスが良くてエレガント。そして性格も花丸。あっ、あとバリバリのキャリアウーマンとかさ、今時の女は仕事が出来なきゃ駄目よね。仕事も家事もパーフェクト! みたいな」

 私の言葉にユカがあからさまに落ち込む。

 私の友人佐藤結花は自分を過少評価していると思う。とびっきりの美人ではないがなかなか可愛い顔をしているし、スタイルだって悪くない。難関K大に合格するため脇目も降らず勉強しみごと果たした努力家だし。性格だっていい。

 中学の時から友達をやっている私が言うんだから間違いない。

 そのままでも十分いい女だと思うけどね。だけどそう言ってもユカは納得しないんだろうな。

 だから私はひとつの提案をした。


「とりあえず容姿端麗を目指してみたら。あんたいい素材を持ってるんだから、化粧とか服装とかに気を使ったら結構いいセンいくと思うよ」

 途端、ユカの表情がパッと明るくなった。相変わらず単純。

「どうしたらいいかな? 私、お化粧とかファッションのことよく分からないんだ」

「私も得意分野じゃないのよね」

 私達はお互いの格好を見て溜息をついた。

 私もユカも今までオシャレやファッションと無縁の生活をしてきた。決して興味が無いわけではない。ただ私の場合母子家庭なもので、学校とバイトを両立させるのに必死でそんな事をしている時間が無かった。ユカは子供の頃からの夢を実現させるため勉強に打ち込んでいて、やっぱりオシャレをする余裕が無かったんだと思う。

「そうだ。あんたと同じK大に行った竹下さんに聞いてみたら。ソーユーの詳しそうじゃない、あの人」

 ユカは一瞬表情を曇らせると「そうだね…」と、力なく呟いた。私はその様子でピンときた。今回のいい女になりたい発言は、きっと竹下さんと何かあったからに違いないと。


 竹下真美は美人で頭が良くて行動派。高校は一緒だったが同じクラスになった事はない。けれど彼女は目立つ存在だったから顔と名前は知っていた。

 おそらく同じクラスになっても、友達にはなれなかったと思う。だって彼女を見た時、友達センサーが反応しなかったもの。なんか、こう分かるじゃない。あっ、この人とは仲良くなれるとか、この人とは住む世界が違うとかさ。

 ユカは何故か竹下さんに気に入られ仲良くしていた。同じK大に進学するので心強いとも言っていた。

 仲たがいの原因は十中八九ユカの彼氏がらみだろう。確か大学のアイドルだとか言ってたしね。だからここは気付かなかった振りをして、話題を逸らすことにした。


「まあ、今の時代。その気になればいくらでも調べられるじゃない。雑誌とかネットとか… そうだデパートの売り場とかは親切にアドバイスしてくれるらしいよ。ただなんか買わないと心苦しいけどね」

 ユカの表情がまた明るくなった。本当にこの子は表情がくるくる変わって見てて飽きない。それにユカの笑顔を見るとそれだけでなんか癒されちゃうんだよね。

「それより一番いいのは、彼氏の好みに合わせることじゃないかな」

 私のその一言でユカの瞳がキラキラ輝いた。

「そっか… そうだよね。西園寺様に聞けばいいんだ」

「…… 」

 なんか意味を取り違えてないか。

 まさかと思うが、彼氏に化粧法とか聞いたりしないよね?

 どーゆーのが好みか聞くんだよ。分かってる!?


 おそらく今私が言っている言葉は、ユカの耳には届いてないと思う。

 きっと、彼氏にすっとぼけた質問をして笑われちゃうんだろうな…

 まっ、この少し天然なところもユカの魅力のひとつなんだし、ユカに笑顔が戻ってきたんだからよしとしよう。

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