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それでは恋を始めましょう。  作者: 紫野 月
11/22

11 西園寺貴文

この話は10話からの続きです。

西園寺様が人目の無い場所で告白された後、構内を歩いているところです。


そして只今お話の中では11月となっております。季節感がメチャクチャですがお許しくださいませ。

 少し遅くなってしまった。

 僕は腕時計で時間の確認をしながら足早に歩く。

 こんなことなら用事があると言って断ればよかった。

 呼び出されて、三文芝居に付き合わされて… まったくもって時間の無駄だった。

 もっと辛辣に拒絶をすれば早く済んだだろうが、幼い頃から西園寺の名を貶めるような言動は慎むようにと躾けられてきた僕にそれは出来ない。その教えは、まるで呪いの様にこの身体と心に染み付いてしまっているのだ。


『西園寺は室町から続く由緒正しい名門の一族。その名に恥じない行動を心がけるように』

 物心ついた時から、常に言い聞かされてきた言葉。

 僕は素直に従ってきたが、ある時ふと疑問を感じた。

 室町から続くってだから何? それは西園寺に限ってではないだろう。

 どの人間も、どの家も、ある日突然出来たわけじゃない。遡ればどの家にも歴史があって、それこそ原始の時代から脈々と受け継がれて現代に至っているはず。西園寺だけが特別なわけではない。

 西園寺の名。由緒ある名門の家。それがなんだというのだ。こんなに雁字搦めに縛られるくらいなら西園寺などいらない。

 心ではそう叫んでいるが、実際に行動に移すことは出来ない。

 家族を捨て、家を捨て。全てを捨てて一人で生きていく。そんな決心はさすがにつかないのだ。



 ああ、もう止めよう。こんな事を考えるのは…

 これから結花と会う約束をしているのだ。

 週末のデート。

 先ずは結花が見たがっていた映画に行き、それから夕食を… そして今日はその後僕のマンションに誘ってみようと思っている。

 付き合い始めて三ヶ月が過ぎた。もうそろそろいいだろう?


 待ち合わせ場所に急いで行くと、愛しい結花の姿があった。

 そして何故かあの男の姿も。

 結花を海に誘っていたあの男は、結花の所属するサークルの先輩。僕という恋人がいるというのに、未だに結花の周りをうろうろしている。

 諦めの悪い男だ。

 あの男には気をつけるよう常々言っているのだが、「ただのサークルの先輩ですよ」と言って結花は真剣に取り合ってくれない。

 それなら僕が牽制するしかない。

 僕は最上級の笑顔を作った。


「ごめん、結花。遅くなった」

「あっ、西園寺さん!」

 花が綻ぶような笑顔を見せる結花。それとは対照的に男の顔が曇る。

「森さんお久し振りです。結花に何か用事ですか?」

「えっ、ああ、そう。ちょっとサークルのことで。それじゃ佐藤さん、考えておいてね」

 彼は不自然にその場を立ち去った。その後姿を見ながら結花に問いかける。

「森さん、何だって?」

「来月、サークルでクリスマスパーティーを開くことになったので、一緒に幹事をしてもらえないかって…」

「その話し、受けたの?」

「ううん。話の途中で西園寺さんが来たからまだ… そうだ! 話の途中だったのになんで先輩行っちゃたんだろう?」

「……」

 危ないところだった。

 もし、そのまま結花が承諾していたら責任感の強い彼女のことだ、僕が何を言っても「一度引き受けたからには断れないの」と言って幹事をやるだろう…あいつと一緒に。

 まったく。油断も隙もない。


 あいつの不審行動に未だに首を傾げている結花に手を差し出す。気付いた結花が少し恥らいながら僕の手を握る。

 小さくて柔らかい結花の手。

 僕が指を絡ませるようにして握りかえすと、結花は真っ赤になって固まった。

 かわいい…

 ああ、今すぐマンションに連れて帰りたい!

 そんな衝動をグッと堪えて僕は紳士のフリをする。

「それじゃ、行こうか」

「うん。映画、楽しみ」











 メインストリートの先にある広場には大きなクリスマスツリーがその存在感を誇示している。

 クリスマスを一ヵ月後に控えた街は美しいイルミネーションと大勢の人で活気に満ちていて、その中を僕と結花は人込みに紛れないようにしっかりと手を繋いで歩いていた。

「結花、今日はこのまま離れたくない。ねえ、これから僕のマンションに来ない?」

 綺麗な街並みとお祭り気分の喧騒を背景に、結花の耳元で甘く囁く。

 我ながら上手く誘えたと思う。

 けれど結花は雰囲気に流されてはくれなかった。

「9時が門限だからもう電車に乗らないと間に合わないの。ごめんなさい」名残惜しそうにしてはくれたが、門限を破る事は出来ないそうだ。帰りが遅くなる時や外泊したい時はあらかじめ両親に許可を取らなければならないという。

 それなら来月のクリスマスにしよう。

 一生思い出に残る最高の一日にしてみせようじゃないか。

 

 

前回の名前の出なかった彼女に対する時と結花といる時の西園寺様の『落差』みたいなものを書きたかったのですが、上手くできたでしょうか?

そして、たとえ王子と言われていても、やっぱり考えることはアノコトみたいな…

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