水の音
実話です。
子供の頃から霊感は強い方だったけど、最近は頻繁に目があう。もう、諦めるしかないって感じなんだけど……。
あれは、私が高校1年の時だったな。
結構頻繁に霊に会ってるから、いい加減慣れてきてはいたんだけど。それでも、不健康そうな顔してるのが、目の前に急に現れたりしたら不気味じゃない。
あの夜もそんな感じだった。
私の趣味はネイルなんだけどね。
爪を買ってきて、そこに塗ったり付けたり貼ったりして飾るの。これが結構人気があって、最近では個人的にネットで売ったりしてる。お小遣い程度にはなってるの。
あ、これ税務署とうちの親には内緒ね。
その夜もネイルを楽しんでた。
夜は眠れない方だから、かなり遅い時間まで起きてるんだけど、その時も2時近かったな。俗に言う、丑三つ時ってやつね。
夏だったけど、うちって周りが緑豊かな田舎なわけよ。しかも隣はお墓。霊感少女には絶妙な立ち位置。てか、死にそうな境遇……。
でもさ、子供の頃からここに住んでるわけだし、いまさらね。ビビってもしょうがないじゃない。お風呂でバッタリ出会ったり、トイレに入りたくてドアを開けたら先客が居たりって、こういうの日常だったから。
怖い?
私的には笑うしかないんだけど。
そういう訳で、窓を開ければそれなりに涼しいわけよ。
だから、その日も窓を開けてた。風はそれなりに入ってきてた。カーテンはしめてなかったな。閉めちゃうと風の通りが悪いから。
扇風機も必要ないくらい。というか、扇風機をつけてると、人工的な風がネイルの邪魔になるからつけたくないわけね。
その夜も、そんなシチュエーションで楽しんでた。家の人は全員寝てた。
うちは兄と両親と犬が二匹。兄は爆睡。両親はお酒飲んで夢の中。犬は両親の寝室で夫婦の仲を邪魔すべく、いびきをかいて寝てる。
つまり、家の中には私だけが現実世界で遊んでたわけ。
ちょうど切りの良いところで喉が渇いた私は、台所へと向かった。階段を下りて、廊下を右に曲がる。進んでいくと台所。
台所で冷たい水を飲もうと冷凍庫を開けて、氷を取り出した。さて、コップに氷を入れましょうと思ったら、さっき出したコップがない。
変だな……
早くも健忘症?
ないない! だって、まだ花も恥じらう女子高生よ!
とか、自分に突っ込んでみながらコップを探すと、なんと出したはずのコップに水が入ってる。氷を入れる前に水が……?
まぁ、入れたことを忘れちゃったのかもしれない。
そんなことはないだろうけど、そう思うしかないじゃない。
コップに氷を入れて、歩き出した。
そうだ、小腹がすいたからって思って、戸棚からお菓子の袋をチョイス。
さて、二階へ戻ろうと階段を歩いていると、お風呂場から水の音。
(あれ? お母さんがお風呂? 寝てるはずだけど……。それともお兄ちゃんかなぁ)
ってことで、とりあえず確認確認。
「誰か入ってるの?」
先に言っておくけど、うちって夜中にお風呂に入る習慣がないわけよ。それなのに、お風呂から水の音がしてくるってことは、最悪水を出しっぱなしにしてることも考えられるわけね。それって、限りある資源を無駄にしてるわけじゃない。だから、出しっぱなしになってるならちゃんと水道を閉めておかないと……もったいないし。
ということで、再度
「誰か入ってるの?」
ところが、お風呂場の電気は消えてる。水道の音だけが聞こえてくる。
(やっぱり誰か出しっぱなしなんだな。ダメじゃん!)
ということで、風呂場の電気をつけて中に入ろうとドアを開けると、水の音どころか、床が濡れている形跡もない。
(変だな。さっきまで水道の音がしてたのに)
と、電気を消すとまたしても水道の音。
はっきり言って、気持ち悪い。
そこで、一言。
「水道代、高いんだから! 出しっぱなしにしないでよね!」
と言ったら止まった水の音。
心の中では……わぁぁぁぁぁぁお!!!
と叫んでいたけど、平常心。