第零章 妹の葬式
初投稿です。
色々と不可解な点があると思いますが楽しく読んでください。
彼女は優秀『だった』。
高校一年になるための高校入試は学年を逸脱して、過去の結果まであっさりと塗り替えた。学歴優秀、スポーツ万能など上げたら何個も出てきそうな位すごかった。それに大手大企業の娘でもあった。すなわち、学問、体力に優れ、将来も約束され、何が何でも幸福への道だ。
そんな彼女は今、安らかに眠っている。
俺の目の前で。
周りには黒服を着たお偉いさんまで勢揃いだ。
全てが優秀だった彼女は死んだのだ。
ただ、階段から落ちただけであんなにも丈夫な身体や頭は一瞬して消え去ったのだ。
周りの奴らは「ああ、なんて人間って脆いんだろうね」「おしい、後継者がいなくなったね」「後は鼈だけになっちまったね」など勝手に口走っている。
彼女――美也瀬奈は世間ではこう言われていた。
『月』
その彼女と反対の存在、不真面目で学問もスポーツもできない人間。ただ、大手企業の息子という地位しかない兄。
『鼈』
醜く、哀れで何もできない兄。
綺麗で、何でもできる妹。
相反する二人は『月と鼈』ことわざである通り、一人は凄いが一人はダメなどの意味を含む。
その兄――美也瀬戸が部屋から籠りっぱなしだったが妹が亡くなり嬉しんでいるのか、悲しんでいるのかは分からない。
だが、何故か出てかなければいけない気分だった。
誰かが後押しするように足を勝手に動かし、今ここにいる。
何をしていいのか分からないが妹の顔を見つめる。
長いまつ毛、開いたら可愛らしい目、事故にあったとは思えない綺麗な身体、そしてピンクで可愛い唇、触れたくても弱々しい身体で触ると崩れ落ちそうな感じだ。
「瀬戸様、お母様がお呼びです」
後ろからいきなり声が聞こえたと思ったら母の秘書の夜さんだ。
俺は後ろを向き一礼すると言葉を返す。
「はい、いまいきます」
妹の顔を一瞬見てそこを立ち去る。
なぜ、何にもほとんど会ったことが無い妹のタメに部屋から出て来たのかは分からない。
誰かが仕組んでのか、それとも呼ばれたのか。
そんなことを思いながら母のいる休憩室に向かう。