(18)第四考査――前(2)
ようやく第四考査を始めるというアナウンスが入って、ロジオン達は他の考査中の魔法使い達と、協会の外の広場に集まる。
「……なんか人、減ってませんか?」
アデラが視線を巡らせながら口を開いた。
「そう言えばそうですよね」
気づいたのか、エマ達も揃って周囲に視線を向ける。
「この総評を配ったの、辞退を促そうとする目的もあったのかも」
とロジオン。
「自分の得点を確認したら、やっぱり他の考査中の魔法使いの点数も気になりますもんね」
「それで、互いに見せ合いっこして『これは無理』と判断して魔法使い自ら辞退をさせるってことね~。ドレイクあざとーい」
エマのブーイングにロジオンは、
「それだけ、次の考査は難しいのか――大怪我を覚悟しておけってことかもしれないよ?」
と言う。
「冗談はやめてくださいよ」
皆、冷や汗を掻きながらギョッとしたが「それはあり得る」と誰もが思っていた。
「――じゃあ、辞退者の受付で考査が遅れたんでしょうか?」
とディル。
「どうなんだろう?」
ロジオンも首を傾げた。
ようやく、設置された壇上にドレイクが現れる。
「今度こそ、本物のドレイク様ですよね? そうですよね? ロジオン様!」
ラーレがキャイキャイと黄色い声で、ロジオンを揺さぶりながら尋ねてきた。
「ああ、そうね。ドレイクだね」
ロジオンは首がカックンカックンするほど揺さぶられながら答えて、アデラに叱られ、ようやく止めてくれた。
「……ねー、ロジオン。なんかドレイク……おかしくない?」
「えっ? また『なりすまし』?」
エマに言われ、ロジオンは目を眇める。だが、正真正銘のドレイク本人だ。
――でも、確かに様子がおかしい。
「顔色……悪い?」
疑問詞なのは仕方ない。普段からそうそう表情が変わらない相手だ。
それでもなんだかいつもより、顔色が土気色な気がする。
「ドレイク、具合悪いのかな?」
とゾフィも彼の機微が分かるようで、心配そうに眉尻を下げる。
はぁ、とドレイクが落ち着きを取り戻すように一つ大息を吐いた。
「――あ、いつものドレイクに戻った気がする」
とゾフィ。
「いったい何があったんだろうね」
「腹痛とか?」
まさかーと、クスクス笑いながらドレイクを見上げる。
「静粛に」とドレイクの助手が声を張り上げ、一斉に静まる。
「では、第四考査を始めます。これが最終考査となります」
これで最後――皆、緊張した面もちでドレイクが口を開くのを待った。




