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ストロベリーエンドレス

作者: あまつ

「・・・はあ」

今日こそと意気込んだものの期待は裏切られる。

俺は今とあるケーキ屋の前にいた。

その店は地元内で有名なケーキ屋。

有名なパティシエはいないのだがそこのケーキ屋には所謂定番商品がある。

ケーキの定番「苺のショートケーキ」

名前の通り見た目も白いクリームに包まれ真っ赤な苺の乗った普通のケーキだ。

だけどその味は濃厚なクリームとふわふわなスポンジの食感。

ケーキ屋の主人自ら栽培している甘みと酸味がちょうどいい苺。

その三つが奇跡の出会いを起こしてなどというと少し信じがたいがそれくらいにこのケーキは美味しい。

初めて食べたのは1年前。祖母がお土産にと持ってきたのがきっかけ。

それっきりは食べていないが毎週火曜日、このケーキが限定30個で発売される日に俺は朝から並んでいる。

行列に並んで前をみる目の前には20人くらいいるかいないかの頭の数。

ひとりひとつなどというルールはないわけで当然家族の分だといってひとりで4つも買うひともいるだろうからケーキが手に入る保証はない。

だが、今日こそと俺は淡い夢を脳内に描きながら行列に並ぶ。

後ろのひとが俺に話しかけてきた。

彼は俺よりか少し背が高く綺麗な黒髪を持っていた。

瞳はぱっちりとしていて全体的に整った顔たちをしている青年だ。

「君もこの行列に並んでるの?」

「そうです」

青年はふーんとどうでもよさそうな顔をして俺をじーっとみる。

「君さ、本当に苺のショートケーキ好きなの?」

「好きですよ!」

「そんな怒らなくてもいいよーただねよく使いっ走りで並んでる人とかいるじゃん。そういうひとは可哀相だなあって思うけどその使いっ走りを頼んだ奴はふざけてると思わない?自分の手でケーキを手に入れろよとか思うよ、まあね君が苺のショートケーキを本当に好きならそれでいいよ」

「そうですか・・」

なんだかこの青年は少しおかしい。

ケーキにそこまでの愛を込めているのか?いや、俺もこのケーキは譲れない。

この苺のショートケーキが好きなだけであってほかのケーキ屋のやつはいやだしね。

「本当さここの苺のショートケーキいいよね、クリームもスポンジも勿論良いんだけど特にいいのはここの苺だね。主人が自ら考えて栽培してるだけあってさ酸っぱさと甘さがちょうどいい感じになっててそれを最後にぱくりと食べるとさ口内に広がる上品な味・・あ、開店したみたいだよ」

青年がそう言うと前の行列はぞろぞろと前に進んでいく。

俺もその列に続いて前へと歩みを進める。

そして入り口までついて中へと自動ドアが開く。

少し横から顔をだしてみるとショウウィンドーの中には苺のショートケーキが10個まだあった。

前には4人。

店員さんに「苺のショートケーキをみっつ」と言ったのは主婦。

きっと子供のために買っていくのだろう。

そこでケーキは10-3の7個。

そのあとは近くの会社に勤めていそうなOLふたりが苺のショートケーキをひとつずつと他のケーキを買った。

そこで残り5個。

ケーキは次のおじさんによって3つ買われる。

おじさんは「お店の子に頼まれたんだよねー」なんて笑う。

どうやらキャバクラなどの女に入れ込んでいるらしい。まったく。

そして俺の番。

ケーキは残り2つ。

ついにやった。

念願のケーキが手に入れられる。

ここまで年月を費やしたかいがあった。

後ろのひとには申し訳ないけど俺は「苺のショートケーキをふたつ」と店員に告げた。

本当のところひとつでもいいのだがこの味を教えてくれた祖母にもあげたい。

店員はニコリと微笑んで「わかりました」といってケーキを包装した。

「苺のケーキふたつで980円です」

そう言われ俺は1000円を出す。

店員にレシートともに10円玉を2枚もらい財布にいれてケーキの箱をもらう。

「本日の苺のケーキは終わりです、ありがとうございました」

という店員の声が響き俺のうしろに並んでいた人達ははあと溜息をついてそろそろと帰っていく。

なかには他のケーキでもいいと並ぶひともいるのだが。

俺が店から出ようとすると先ほどの青年に話しかけられる。

「すみません」

なんだかそんな言葉が思わずでてきた。

「いいんだよ、しょうがないもの」

青年は笑顔でそう言った。よかった。でもならなんで俺に話しかけたんだ?

「なかなか運命って変わらないね。このケーキのために俺の能力を幾度使ったか、今回で23569回目。だけど俺の能力は時を戻すだけ。過去の書き換えはできないからね」

青年は意味のわからないことを言いはじめた。

過去?23569回目?能力?

「だからこうやって幾度も繰り返して待ってるんだ過去が変わることを。君の後ろに並んだときが一番ケーキを手に入れる順番としては近かったからね、君には悪いとおもってるんだよ?」

クスクスと笑う青年。

「本当はさケーキを奪ってもいいんだけどそれは犯罪だしさあ、だから俺はどうしようもない使えないこの能力をひたすら使ってるわけだ」

青年はぱちりとウィンクをしてこう言った。

「俺がケーキを手に入れられるまで君の体にこのケーキが入ることはないんだよ、ごめんね」

どういうことだ?

「まあだからさ、宜しくね。俺もこの説明何回目だろうね疲れたよ。だからもう過去に戻るから、それじゃあまたこのケーキ屋で会おうね、またね」

青年が爽やかな笑みを浮かべて右手を振った。


「・・・はあ」

この溜息も23570回目。



                                         END



このサイトでの初めての小説です。

基本的にどうしようもないことを小説にするのが私の書くものの特徴です。

これから宜しくお願いします。

作品の感想とかもらえるとすごっく嬉しいです。

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