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ぼくだけが獣耳先輩の弱みを知っている〜気になるあの子は義姉でVTuberで探索者〜  作者: 田仲らんが


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8/8

【Day.5】義姉、VTuberバレする+もふもふタイム!【】





 ふと、真夜中に目が覚めてしまった。


 起きるには中途半端な時間なので、二度寝することに決める。


 温もりが心地いいベッドからおさらばして、次の快適な睡眠の為に(きじ)を撃ちにいく。


 自室を出てすぐ、欠伸(あくび)をしていると、隣から光と音が漏れていることに気付く。


 「……」


 ちょっとだけなら、と気になって隙間から覗いてみる。


 ──ハルさんが人の頭部のような物(ダミーヘッドマイク)に囁いていた。


 「…………ぇ???」


 目を擦ってから、もう一度見てみる。


 次はタッピングや耳掻きをしていた。


 ──いや何を四天王(してんの)!?


 開いた口が塞がらない。


 俺も動画視聴を趣味としている者として多少の知識があるが、あれは恐らく自立感覚絶頂反応(ASMR)というやつだろう。


 こんな夜中にやっていることを察するに、荷解きを手伝った時、(かたく)なにこれだけは開封するなと言っていたのはこれのことだろう。


 俺は何も見なかったことにしてトイレに向かおうとしたら、僅かに開いていた扉に足の小指をぶつけてしまった。


 (うずくま)って(イメージとしては)金切り声で唸るように叫ぶ。


 ハルさんの部屋の木製扉が(きし)む音と共に開かれる。


 「イッ!? 〜〜〜〜っ!!!」

 「──っ!? きょ、今日はここまで。皆さんいい夜を〜♪」


 ハルさんは配信を切ってから無表情()つ無言ですたすたと歩いて来て、怒られると思って瞬時に正座で待機していた俺の腕を強引に引っ張る。此奴(こやつ)……強いっ!


 半ば無理矢理、引き()られてハルさんの部屋にお持ち帰りされると、勢いのままベッドにポイっと投げられて()(かか)るように押し倒された。はぇ?


 「……言わないで」

 「へ?」

 「ママに秘密でやってるの。お金を稼ぐにはちょうどいいし」

 「さ、さいですか」

 「……常識的で、私にできることならなんでも一つだけお願いを聞いてあげるから」

 「えっと、そんなことしなくても言わな──」

 「何か対価をあげとけばいざという時、引き合いに出せるでしょ? いいからお願いしなさい」

 「ぁい」


 同居するようになって気付いたが、ハルさんは先走って強引に物事を進めることが多いと感じる。


 俺としてはもう少し話し合った方が良いと思うが、今この時にお願いをしないとハルさんは気が済まないのだろう。


 以前からしてみたい、が恐れ多いと思っていたことを、視線を逸らしながら駄目元でお願いしてみる。


 「その、毎日もふもふさせて欲しい、です……」

 「も、もふもふ……?」


 上から困惑した声が降ってくる。あぁ、恥ずい……っ!


 自分でも呆れながら、(まく)し立てるように早口になりながらも、己の望みを必死に言語化して説明する。


 「ハルさんの耳だったり、尻尾だったり、……できれば手足も、もふもふしたいなー、なんて…………気持ち悪くてごめん」


 怖くて、ハルさんの目を正面(まとも)に見れない。


 言わずもがな、既に後悔をしている。


 上から溜め息が聞こえてくきた。ひぇ!


 「……いいよ」

 「! ……ほ、ホントに?」

 「二度も言わせないで」

 「ぁい」

 「でも、尻尾だけはダメ。わかった?」

 「イエスマム」


 むむむと難しい顔をしていたハルさんから解放されて、逃げるようにトイレへ駆け込む。


 「もふもふ……まじかぁ」


 気持ちが悪い程、ニヤニヤが止まらない。


 表情筋がどうにかなってしまいそうだ。


 俺は余りにも嬉しすぎて、朝まで全く寝付けなかった。


 ────────────


 夜、両親が寝静まった後────。


 お互いの空いてる時間から、もふもふタイムは寝る前にすることになった。


 日中、あのハルさんをもふもふできるという現実にクラクラしながら頭の中で喜びを反芻(はんすう)していた。


 お陰でレツから何かあったのかと怪しまれたが、テキトーな言い訳をして、どうにか誤魔化すことができた。


 自分勝手も承知だが、この関係はハルさんと俺だけのもので、他の誰にも言いたくないと思っている。


 秘め事の決行場所は、マッサージと同様にハルさんの部屋で行うことになった。


 もふもふタイムでは──『三分間だけ』・『尻尾は禁止』・『故意に指定以外のボディタッチはしない』・『ハルさんが嫌と言ったらすぐに辞める』──といったルールが俺も納得した上で設けられた。


 咳を一つして、ハルさんと正座をし合って対面に座る。


 羞恥心から互いに視線を逸らしてしまう。


 無言と夜の雰囲気が室内を支配する。


 俺は内側から殴られるように鼓動が鳴っていることを自覚する。


 はち切れそうに突っ張る空気の中、それを断ち切るように意を決して口を開いた。


 「さ、触るね……?」

 「……ん」


 俺は膝を着いて上から目線で獣耳を観察する。


 逆立つような毛並みはふわふわで、風呂上がりだからか艶もある。


 無意識なのか、ピコピコ動く獣耳を(つま)むように抑えて先端を撫で回す。


 思ったよりも柔らかくて、でもしっかりしてて、何時(いつ)までも触り続けたくなる。癖になりそうだ。


 「んっ」


 ハルさんの口から嬌声(きょうせい)が漏れて、二人して頬が赤くなってしまう。


 思わず手を止めてしまうが、|制限時間が三分しかないこと《タイムリミット》を思い出し、欲望を満たすように手を動かすことに専念する。


 毛並みに沿って撫でたり、そのまた逆をしたり、己のやりたかったことを思うがままに実行していく。


 「ふっ……くっ……〜〜っ!」


 (うつむ)いて歯を食い縛っていたハルさんの口から、我慢できずに溢れた声が途切れ途切れに耳朶(じだ)を打つ。


 ハルさんの甘い声が遠慮なく脳を(くすぐ)ってきて、どんどんと思考が鈍くなっていくことを自覚する。


 手が止まらない……ずっと、ずっとハルさんを触っていたい。


 いっそ、このまま────


 「〜〜〜〜っ、──やっ!」

 「! ご、ごめん!!」


 涙目のハルさんにぺちんと手をはたかれて、(ようや)く混濁した意識から正常に戻る。


 「「……」」


 沈黙が場を占めており、何やらハルさんからの圧が凄い。


 正座に戻してチラチラとハルさんの顔を見ていると、ぷいっと顔を逸らした彼女が一言。


 「……感想は?」

 「へ?」

 「……耳、触ったじゃん」

 「──あっ、あぁ〜! ……えと、その、めっちゃ触り心地よくて、ふわふわでっ、こう、すごくって……ずっと触っていたいくらい……よかった」

 「……そう。……ふーん……」


 自分が()べた恥ずかしい感想に()(たま)れず、窮屈(きゅうくつ)な思いで地面を見つめていると、少し表情を和らげたハルさんがニヤリと笑って時計を指した。


 ()られて俺も時計を見やると、そこにはもふもふタイム終了予定時間を超過した時刻に針が指されていた。息を飲む。


 「でも、明日はなしだから。三分、過ぎてるし」

 「そ、そんな……! 確かに悪いのは俺だけど……!! まだ手足をもふもふしてないのに……!!!」

 「そ、そこまで落ち込まなくても…………明後日ね」

 「!」


 明日もふもふ不可という絶望から一転して、目の前の女神の祝福を身に浴びて、己という悪しき存在が浄化されそうになる。ありがたや、ありがたや……。


 滝のような涙を流しながらハルさんに感謝を捧げていると、彼女はふんっと鼻を鳴らして用は済んだとばかりに布団に潜ってしまった。頭まで被ってやがる。


 モゴモゴとくぐもった声が、布団の内部から突き放すように聞こえてくる。


 「もう夜遅いし、終わったんだから早くあっち行ってよね」

 「なんか最近、冷たくない……?」

 「誰のせいだと思ってるのよ……!」


 俺はハルさんの冷えた態度を食らって悲しい気持ちになりながらも、明後日に思いを馳せながら、もぞもぞと動く布団を背に部屋を出て行った。












 【登場人物&用語集(※微ネタバレ有り)】


 ・〈獣人(ライカンスロープ)〉について

  身体的特徴として主に挙げられるのは、


  ──獣のような耳

  ──獣のような尻尾

  ──獣のような体毛

    全身ではなく、部分的。主に四肢。


  が、挙げられる。

  尻尾は特に感度が高く、無闇矢鱈と触られるのを嫌う傾向にある。

  心を許した相手であれば、基本的に撫でられることは嫌いではないとされている。

  

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