【Day.4】家庭崩壊or和解?【】
短めです。
「あーあ……バレちゃったか」
ハルさんが眠そうな様子を見せずに起き上がった。
俺はこれから起きることに備えて正座に切り替える。
彼女は蹲るように体育座りをして、首をこてんと傾げる。
俺が目を合わせると、見たことがない冷ややかな目をして詰問してきた。
息苦しくて思わず目線を下げそうになるが、ハルさんに誠意を示す為に踏ん張る。
「リク、私になにかした? 六日前」
「……はい、しました。勝手にハルさんの身体に干渉してしまい、申し訳ございませんでした」
「……具体的になにをしたの?」
俺はハルさんに魔力操作の応用について説明する。
「ふーん? だから魔力操作が上手くなったんだ、私」
「え、は? ハルさんの魔力操作が上手くなった……?? それはどういう……???」
「リクにその魔力操作の応用ってやつをされた後から、私の魔力操作がありえないぐらい上達したの。多分、リクのせいというか、お陰? だと思う」
確かに、思い返すとレツも魔力操作の応用をした後から調子が良かった気がする。
ハルさんは溜め息を吐くと、体育座りを崩して足を伸ばす。
俺は気不味くなって視線を外すと、ハルさんが右肩に片足を乗せてきた。
ハルさんの足先が俺の顎を押して、強制的に視線を正面に持っていかれる。
「ねぇ、他にはなにもしてないよね?」
「──誓って」
俺はハルさんの足先を掴んで、足の甲に触れる程度の口付けをする。
ハルさんの足が逃げるように引き戻されて、彼女の胡座の一部となった。……残念。
ハルさんは俺を睨まながらむすっとしていて、そんな不機嫌そうな顔も魅力的だと思ってしまう。
「っ!? ……勝手に私の身体を弄ったことは本来許せないことだけど、私も起きなかったし、結果的には魔力操作が上手くなったから──交換条件で許してあげる」
「交換条件?」
「そ。私はリクがやったことを不問にする代わりに、リクには何個か私の命令を聞いてもらう」
「命令の内容は?」
「とりあえず定期的に魔力操作の応用──もうめんどくさいからマッサージって名称にするけど、それをしてもらう」
「…………正気ですか?」
思わず敬語になってしまうのも仕方ないだろう。
魔力操作の応用、改めてマッサージを受けたハルさんはかなり凄いことになっていたが……本人は自覚していないのだろうか。
……本人の決意は固いようなので話を促す。
「前にも言った通り、私は強くなりたいの。利用できるなら、利用するまでよ」
顔合わせ初日の会話でハルさんは探索者として父の到達階層を超えたいと言っていたから、それが強くなりたい理由だろう。
「……わかった。何個か、ってことはまだなにか?」
「思いついたけど、その時になったら命令するわ」
話が一段落したので、後ろのテーブルに置いていた手提げ箱をまだむすっとしていたハルさんに差し出す。
「……これは?」
「ケーキ。一応、お詫びの品になる……かな。甘いもの、特にケーキが好きなのは教えてもらってたから知ってたんだけど……。肝心なハルさんの味の好みがわからなかったから、定番のショートケーキとチョコケーキの二つを買っといた」
「ありがと。あとで一緒に食べましょ」
「いやいや、二つともハルさ──」
「──一緒に、食べましょ……?」
「……ぁい」
有無を言わさない笑みで凄まれ、ぶるぶると震えながら縮こまって返事するしかない。
まるで蛇に睨まれた蛙……ならぬ、狼に睨まれた人? 状態だ。
俺は正座を崩して、溜め息を吐きながら天井を見上げる。
もうハルさんに逆らえる気がしません……。
ストックが切れましたので、少々お待ちいただけますと幸いです。




