表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくだけが獣耳先輩の弱みを知っている〜気になるあの子は義姉でVTuberで探索者〜  作者: 田仲らんが


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

【Day.1】憧れの先輩が義姉になった件【Part.1】

カクヨム様でも投稿しています。






 4月の某日。


 桜が舞い散る節目の日。


 俺は朝食を簡単に済ませ、防刃・ 防魔の制服に袖を通す。


 学校貸与の収納バングルに必要最低限の荷物を詰め込み、部屋に(こも)っている父に一言告げてから家を出た。


 胸元から携帯を取り出し、連絡用アプリで友人に家を出た(むね)を伝える。


 春らしい適度な気温の中、友人との待ち合わせ場所に向かっていると、前を歩く人物に釘付けになる。


 名前は知らない。


 恐らく先輩だと思われる。


 尾毛のように揺れる紫がかった灰色の髪。


 月のような瞳。


 なによりピコピコと動く獣耳とふさふさの尻尾が特徴的な女性──いわゆる〈獣人(セリアンスロープ)〉だ。


 〈世界改変の日〉、降り注いだ〈神秘の光〉によって(もたら)された新種族の一つであり、差別は少なからずあるものの、強靭な肉体とその見目から人気を博している種族だ。


 (嗚呼(ああ)、今日も美しい。獣耳サイコー)


 俺は心の中で賛美の言葉を独り()ちる。


 そう、なにせ俺は、彼女の凛とした佇まいと美しい見た目も相まって、入学式で見かけた時から憧れのような感情を抱いているのである。


 (だが声をかけたりはしない。ナンパは悪だ。彼女は言わば推し。高尚な存在()である。距離感大事に。こうやって朝から見れるだけで俺は幸せ者だ。存在してくれてありがとう、ありがとう……)


 胸の内で名も知らぬ彼女へ勝手に感謝していると、彼女の制服のポケットからハンカチが(こぼ)れ落ちた。


 俺は咄嗟(とっさ)にハンカチを拾ってしまう。


 (やっべ……!)


 推しに接触するなど言語道断だと逡巡(しゅんじゅん)するも、既に拾ってしまったものは仕方ないと自分を納得させる。


 落し物に気づいていない彼女に声をかける。


 「あっ。……すいません、落としましたよ」

 「あ、ありがとうございます」

 「……どういたしまして」


 なんて清らかな声だろうか。


 俺は声を失う。


 振り向きざまに浴びた彼女の笑顔に尊死(とうとし)してしまったからだ。


 俺は存在が砂のように消えかけるのを踏ん張りながら、緊張からぎこちない笑顔で返事をする。


 彼女は礼を告げると、今度は落とさないように収納バングルにハンカチを入れ、俺に対して一礼すると歩いていった。


 浄化の笑顔に放心し、その場で立ち止まること数秒。


 推しとの不意の接触で存在消滅の危機に瀕し、感動から震える体に鞭を打って待ち合わせ場所に向かう。


 セルフ反省会をしながら歩くこと数分。


 彼女と関われたという事実にウキウキな気持ちと、推しに自ら声をかけてしまったという罪悪感を抱えながら、待ち合わせ場所で携帯をイジっている友人──萩乃(はぎの)蓮月(れつ)に声をかける。


 レツはスパイキーショートの髪型がよく似合う親友だ。


 運動神経が抜群で、認めたくはないが彫りが深くて整った容姿をしているのでよくモテるのがムカつく。


 レツとは家も近いので毎朝一緒に登校している。


 「おは……よう……ッ」

 「おはよう。さっきお前の大好きな先輩通ったよな──って、なんだその百面相(かお)は」

 「その先輩に声をかけてしまったからだ……ッ」

 「おぉ! やっと声かけたのか!! ……ん? じゃあなんでそんな難しそうな顔してんだよ」

 「推しと絡めた喜びと絡んでしまったという罪悪感がせめぎ合ってる」

 「ハッ、くだらな」


 そんな他愛もない話をしながら学校の門を(くぐ)り、以前よりも一つ上の階の教室に向かう。


 俺はクラス替えの張り紙を見てレツと同じクラスであることを確認し、流れるようにレツとハイタッチを交わす。


 二人で新クラスに入ると、見知った顔が何人か居たのでそいつらとも挨拶を交わす。


 俺は黒板に書かれた席順である窓側の席に座ると、遅れて来たレツが俺の机に乗って足をぶらぶらさせながら話しかけてくる。


 「お前と反対方向の廊下側でしかも前の方とか最悪なんだけどー」

 「授業中は話せないんだから良いだろ別に」

 「まぁなー。それよりさっきの話の続きなんだけどさ。お前の大好きな先輩とは何があったん?」

 「あぁ──」


 俺はレツに今朝の出来事を所々(俺の想いを)端折(はしょ)って手短に説明する。


 「──ってことがあった」

 「なーんだ結局、進展なしかよ。このままじゃ、その先輩の名前さえ知らずに卒業しそうだなー」

 「いいんだよ。イエス推しノータッチはこの世の真理だ」

 「ま、俺には理解できない考え方だわ」


 話も一段落したところで、何の気なしにレツとは解散。


 早く俺の机から退けと蓮月の尻を叩くと、自席に戻る前におでこをデコピンされた。イタイ。


 程無くして新担任が教室に入ってきた。


 小柄な体型に、若干黄色っぽい銀髪に金色の(まなこ)


 そして、ぴくぴくと動く猫耳に緊張からかピーンと伸びた尻尾が特徴的な猫獣人の彼女──又村(またむら)璃子(りこ)先生だ。


 その愛らしい容姿と男子の気を引く仕草、緊張しいなところから、男女ともに人気な先生の一人だ。


 彼女は顔を赤く染めながら黒板に名前を書いて、俯きがちに自己紹介と挨拶を述べて紙を配布し、これからの予定などを掻い摘んで説明した。


 璃子先生による説明が終われば、本日の授業は終了。


 早めの下校に気分を上げながら、蓮月と隣合って帰り道を歩く。


 「そーいやさ、この前スーパーの帰り道にちっちゃい子が絡まれてるから助けたらめっちゃ懐かれたんだよね」

 「はいはい、妄想(たくま)しいな」

 「ホントだって! まぁ、助けた相手が男の子だったからなー。これが美少女だったら! けど、ま、その助けた男の子も美少女に見紛(みまが)う可愛さだったんだけどね。あと家が金持ちっぽい」

 「招待された感じか、それ?」

 「そーそー、助けたお礼にってさ。豪邸すぎてビビったわ。出された食事とか覚えてねーもん」

 「ふっ、テンパりすぎだろ」

 「笑うなっ! ってか前に話してた再婚の話はどうなってんの?」

 「んー、ホントはもっと早く合流する予定だったらしいけど、お相手も忙しいらしくてもうちょいかかるらしい」

 「そか。ま、この歳になって家族が増えんのも大変だろーが頑張れよ。じゃ!」

 「ん、また明日ー」


 手をひらひらと振ってレツと分かれ、心做(こころな)しか寂れた帰路を淡々と歩いてゆく。


 「再婚……か。上手くいくといいけど……」


 俺は家に着くと父に帰宅したことを伝え、夕飯まで動画を見ながら無心で筋トレをした。












 【登場人物&用語集(※微ネタバレ有り)】


 ・萩乃蓮月レツ:主人公の親友 ♂︎

 ・又村璃子リコ:教師 猫の獣人 ♀︎


 ・収納バングル

  代表的な魔導具。魔力を通すことで開閉可能。

  学校から生徒に対して一人につき一つ貸与される。

  個人の魔力パターンを登録することで所有者専用となる

  (卒業時にリセット。高額な為、使い回し)。


 ・〈世界改変の日〉

  世歴(せいれき)2000年1月1日のことを指す。

  世界の()り方が変わった日。


 ・〈神秘の光〉

  〈世界改変の日〉に起きた降り注ぐ光の現象を指す。

  人間の在り方が変わった。


 ・〈獣人〉(セリアンスロープ)

  〈神秘の光〉によって生まれた新種族。

  様々な種族が存在し、今も尚、生まれている。

  圧倒的な膂力(りょりょく)と獣のような身体的特徴を持つ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ