Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 07
深夜、そして夜明け前。ミネソタ州最大の都市、セントポールは、まだ深い眠りの中にあった。
……もっとも、先ほど響き渡ったあの目覚ましが、市民の鼓膜を無事に通り過ぎてくれていればの話だが。
地上数100m。その頂部、巨大な窓が床から天井まで続く「グローバル・エアウェイズ」社長室。磨き上げられ
たマホガニーのデスクに、深々とした革張りの椅子が、主のいない玉座のように静まり返っている。窓の外では、灰色
の雲から降り注ぐ毒の雨が、街の灯りを滲ませながら、ガラス面を執拗に叩き続けていた。
その静謐な空間に、今まさに、4人の少女たち――カルテット・マジコが招かれていた。
いや、招かれたというより――。彼女たちは、つい先ほど、3発の流星となってこのビルの眼下にある広場へと「着弾」し
たのだ。社長は、その想像を絶する移動劇の一部始終を、この窓から遠景に目の当たりにしたばかりだった。衝撃で噴
水が砕け、コンクリートコートがめくれ上がる光景。そして、もうもうと立ち上る土煙の中から、4人の少女が平然と現れた時の、あ
の現実感のない感覚。日本の夕暮れから、アメリカの夜明け前へ、わずか30分。彼の理性は、まだその事実を受け入れ
きれずにいた。
呆然と窓際に立ち尽くす彼は、やがて、自らの動揺を糊塗するかのように、無理に作った諧謔を口にする。
「信じがたい……。まさか、本当に30分で到着なさるとは。……もしよろしければ、その移動方法を、弊社の次世代フラッ
グシップ・サービスとして事業提携しませんかな?」
重苦しい天候も、世界の危機も、どこか遠くの出来事であるかのような、ビジネスマン特有の口調。それに対し、お
せちは窓の向こうの、雨に濡れて眠る都市を一瞥すると、静かながらも毅然とした声で答えた。
「技術的には可能ですが、ペイロードには厳格な制限があります。たとえば社長にご利用いただくには、まず……
機体の、10kgほどの軽量化が必要になりますね」
一瞬の沈黙。社長は、自分が今、世界を救うと目される英雄に、極めて丁寧に体重の指摘をされたのだと理解するのに、数秒を要した。
窓の外で、雨音だけが、そのユーモアと現実の狭間を、静かに埋めていた。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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