Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 04
「でも……チャーター機、断ったんでしょ?」
と、話に耳をそばだてていたさなが訝しげに訊ねる。
「じゃあ、どうするの!?」
はちるも思わず声を上げる。
おせちはふっと息をつき、姉妹たちの方を振り返った。
「今日こそ――前にみんなで話してた、遠隔地への緊急出動法を試す時だよ。あの方法なら、元々のはちるの力でもできることだから別にリスクだってないはず!」
「「えぇええええ……!!」」
はちるとさなの2人が、揃って苦い顔をする。
だがその中で、アシュリーだけはにやりと悪戯っぽく笑って、
「おっいいね、“アレ”!!記念すべき初フライト、しっかり動画も撮っとこう」
と太鼓判を押す。
そして、おせちは真剣なまなざしで全員を見渡し、言葉を重ねる。
「――世界が私たちを待ってるんだからさ。じゃ、準備するよ?」
しばしの沈黙ののち、はちるもさなも渋々ながら頷き、
「……やるしかないかぁ」
「失敗したらアシュリーのせいだからね」
と、ぼやきながらも準備に取りかかるのだった。
*
毒の雨がようやく晴れ上がり、澄み切った青空が戻ってきた土曜日の午後。その空気は、まるで浄化されたかのように清々しく、世界から色が失われていた数時間が嘘のようだった。
吉濱家の境内、学校の運動場のように広い石砂利の庭には、作戦の決行を前にした緊張と、遠足前の高揚感をどこかない交ぜにした空気が漂っている。色鮮やかなコスチュームに身を包んだ4人のヒーローが、それぞれのやり方でその時を待っていた。
「じゃあ、練習したとおりにやるよ!」
はちるが、肩がけのバッグから自前のタブレットを取り出し、境内の片隅にしゃがみ込む。
彼女が画面に触れると、その指先の動きに呼応するように、作戦に必要な地球規模の環境データが、色鮮やかなレイヤーとなって次々と展開されていく。
コリオリの力によって生まれる大気の渦、成層圏から対流圏へと続く温度のグラデーション、
そして地磁気が描く光のカーテン。彼女はそれら全てを瞬時に統合し、最適な解を導き出していく。
やがて、すべてのデータが統合されたホログラムの地球儀が画面に浮かび上がった。
彼女の人差し指がその表面を滑らかになぞると、
その軌跡を追うようにして、1本の光の線が描き出されていく。
それは、日本を発ち、一旦大きく地球の外縁を迂回し、初速のみを頼りにして、弾道ミサイルさながらに目的地へと達する――そのための最短かつ完璧なルートだった。
さらに、タブレットのAR機能を起動すると、瓦塀の向こうに連なる――例の毒の雨で、すっかり枯れ果ててしまった雑木林。その一角、最末端のケヤキの梢へと、投擲角度を示す鮮烈な赤いラインが画面上に走った。
「向きはこっち!さなから来て!」
はちるはタブレットを胸の前に据え、その赤い軌道ラインと己の正中線を、
ミリ単位の精度でぴたりと合わせていく。風向、湿度、高度、発射角、時刻――画面に並ぶあらゆるのパラメータが目まぐるしく数値を更新し、やがて一切の変動が緑色のインジケーターに収束する。
端末には
「推奨軌道/誤差0.04%以下」
の文字が、絶対的な信頼性をもって表示された。
その顔は、まさにミッションコントローラーとしての緊張と没入に満ちていた。だが、次の瞬間、彼女がくるりと振り
返ると、その真剣な空気は弾けるように消え去った。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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