Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 18
アシュリーが、何事もなかったかのように正常に戻った。その信じがたい光景を前に、おせちは一瞬だけ逡巡したが、すぐに自らの非合理的なプライドを捨て去った。
彼女は無言でガラクタの山に歩み寄り、残りのアルミ帽を手に取ると、さなとはちるに1つずつ手渡す。
2人も、もう逆らうことなく、その奇妙な帽子を、まるでヘルメットでも装着するかのように、
神妙な面持ちで被った。
最後に、おせちも自らの頭にそれを乗せる。
世界を救ってきた4人の英雄が、部屋の隅で、揃いのアルミ帽を被って立つ。そのシュールな光景に、部屋の主であるアキノは、ようやく満足したように、こくりと深く頷いた。
「待って!」
しかし急にアキノは、まるで侵入者を警戒する小動物のように鋭い視線を彼女たちに向ける。
「そこから動かないで。この部屋に座るには、本当は儀式が必要なの。対監視衛星用のステルス迷彩だから」
「はあ?儀式?」
と、正気に戻るなりアシュリーが眉をひそめるが、
アキノは構わず、淀みない口調で指示を飛ばし始めた。
「まず、そこにあるPCパーツの山を、必ず右足からまたいで。次に、
反時計回りに部屋の隅にあるサーバーラックを3周すること。
最後に、北の壁に貼ってあるグレイのポスターに1礼。それが済むまで、呼吸もなるべく浅くして。いい?」
あまりに突拍子もない要求に、4人は一瞬、顔を見合わせる。
だが、先ほどの爬虫類宇宙人やアシュリーの1件で、
この部屋では常識が通用しないことを骨身に染みて理解していた。
おせちは、覚悟を決めたように頷くと、指示通り、慎重に儀式を執り行い始めた。アシュリーは、舌打ちをしながらも渋々続き、さなと、はちるは、まるで奇妙な障害物競走にでも参加するかのように、
どこか楽しげにその後に従った。
ガラクタの山をまたぎ、サーバーの周りをぐるぐると回り、最後に、色褪せた宇宙人のポスターに向かって、深々と頭を下げる。
その一連の滑稽な動きを、アキノは腕を組んで、鑑定士のような厳しい目つきでじっと見つめていた。
やがて、全員が 儀式を終えると、彼女は小さく頷いた。
「いいわ。座って。ただし、そこに積んであるオカルト雑誌の上だけよ。
その力があなたたちを守ってくれる」
促された先には、不安定に積まれた雑誌の塔が4つ。カルテット・マジコは、人類の危機を救うための作戦会議を、その奇妙な玉座の上で始めることになった。
全員がアルミ帽を被り、部屋の異様なルールに順応したことで、ようやく話し合いの準備が整った。おせちは、まず礼 儀として口を開いた。
「あの、アキノさん、どうも帽子ありがとうございます」
「いえ、礼を言いたいのはこちらの方よ――」
「えっ?」
「クマ人間の野望を阻止してくれて、本当にありがとう。
じつは、彼らの存在を最初に見抜いたのは私なのよ。17歳の時にね」
「そうだったんですか!?」
4人の心中を突き抜ける驚愕――。
「……ええ。思えばあの時も、周りの連中は誰も私の訴えなんて信じてくれなかったわ。
理解してくれたのは、フォーラムに集う目覚めた人たちだけ。でもあなたたちはわかってくれた。
そしてなんとかしてくれた」
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