Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 17
4人が足を踏み入れたアキノの部屋は、彼女の精神世界をそのまま物質化したかのような、混沌の要塞だった。壁一面には、世界地図や星図、意味不明な数式が書かれた紙がびっしりと貼られ、それらが赤い糸で複雑に結ばれている。床には、分解されたPCパーツや、オカルト雑誌の山、そして何重にもケーブルが絡み合った複数のモニターが、不気味な光を放っていた。
そして、その中心に立つアキノの頭には――くしゃくしゃのアルミホイルで作られた、
いびつな帽子が乗っていた。
そのあまりにシュールな光景に、張り詰めていたアシュリーの緊張の糸が、ぷつりと切れた。
「ブッ……!はっはっはっはっは!マジかよ、アルミホイルって……ホントにつけるんだこれ!」
大爆笑するアシュリーに、アキノは心底軽蔑したような目を向け、真顔で言い放つ。
「笑いごとじゃないわよ。思考盗聴とサブリミナル電波を防ぐには、これしかないんだから。あなたたちみたいに無防備でいたら、頭、やられるわよ」
「あーウケる。そんなんで防げるわけ……ぐっ……!」
突如、アシュリーの威勢のいい笑い声が、引きつったうめき声に変わった。彼女は、こめかみを押さえてその場にふらつく。
「なんだ……?頭が……ガンガン……!」
その表情から、みるみるうちに血の気が引いていく。そして――。
「痛いっ……!いててて……」
そのあまりの変貌に、3人は血相を変えた。
「アシュリー、どうしたの!?」
本気の心配と恐怖を滲ませ、おせち、さな、はちるが同時に駆け寄る。だが、彼女たちの声は、もうアシュリーには届いていなかった。
焦点の定まらない瞳で虚空を見つめ、彼女は、壊れたラジオのように意味をなさない言葉を紡ぎ始める。
「……7番ゲートのプロペラが逆回転してる……!ダメだ、イルカが、イルカが全部食べちゃう!早く、早くマヨネーズを……!」
明らかに脈絡のない、支離滅裂な言葉。その瞳からは、完全に焦点が失われている。さっきまで威勢の良かった彼女が、一瞬にして狂気の世界に取り込まれてしまった。
その常軌を逸した変貌に、おせち、さな、はちるの3人は、声なき恐怖に呑まれた。
「だから言ったのに!」
アキノは、ベッドの脇に積まれたガラクタの山から、同じようにアルミホイルで作られた帽子をもう1つ取り出すと、それを乱暴に投げ渡した。
「早く、これを被せて!」
おせちは、半信半疑のまま、しかし他に選択肢はなく、そのアルミ帽をアシュリーの頭に被せる。
すると、嘘のように、アシュリーの痙攣がぴたりと止まった。彼女は数回まばたきをすると、何が起きたのかわからない、という顔で首をかしげる。
「……あ?……なんだ?今、あたし……何が見えてた?」
正常に戻ったアシュリーと、その頭に乗った滑稽なアルミ帽。そして、したり顔で頷くアキノ。
4人は、この部屋では、自分たちの世界の常識が、一切通用しないことを悟るしかなかった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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