Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 10
現在、作品の誤削除からの復帰対応中につき、復旧版と更新版の2ラインで運用していることはすでにご説明の通りです。
このたび、それに関連した投稿ペースの加速により、3月8日までに復旧版が第3話完結まで到達する予定です。
なお、復旧版が更新版を直接追い抜くタイミングは、それよりも少し早く訪れる見込みです。到達次第、あらためて告知いたします。
以後の更新は復旧版へ移行していただけますよう、お願いいたします。
尊は、最後の石灯籠をサイコキネシスで元の位置へそっと立て直すと、額の汗を拭う仕草をした。荒れ果てていた境内は、彼女の神業によって寸分の狂いもなく修復され、美しく掃き清められた砂利の波紋が、午後の日差しを浴びて静かに輝いている。
「やれやれ、ようやく終わったわ」
「今度こそ、ゆっくり昼寝でも……」
安堵のため息をつき、本堂の階段にでも腰を下ろして一服しようとした、まさにその瞬間だった。
まず、音が消えた。蝉の声も、風の音も、全ての環境音が真空に吸い込まれる。次いで、空気が歪み、
視界の全てが白く染まり始めた。
ゴゴゴゴゴゴォォォッッ!!!
先ほどの衝撃が子供の癇癪に思えるほどの、天そのものが裂けたかのような絶叫が再び境内を襲う。寺全体が、まるで巨大な手に掴まれて垂直に持ち上げられたかのように激しく跳ね上がった。
凄まじい着弾の衝撃が、時間差で境内を駆け抜ける。
「のわぁッ!?」
咄嗟に境内から走って逃げようとする尊だが、彼女の悲鳴は、いよいよ後ろから迫りくる衝撃波によって音になる前にかき消された。その小さな身体は、不可視の壁に叩きつけられたかのように、
次の瞬間には、前方へと大きく突き飛ばされる。
なすすべもなく吹き飛ばされた彼女は、背中から本堂の木製階段へと激しく叩きつけられた。バキバキッ!と数段の踏み板を突き破り、無様にもんどりうって転がる。
その凄まじい振動で、本堂の入り口に鎮座していた年季物の巨大な賽銭箱が、ギシリ、と不吉な音を立てた。それは数秒間、ゆっくりを時間をかけて傾いたかと思うと、ついに重心を失い、階段の下で伸びている尊めがけて、抗いようもなく倒れていく。
「――!」
尊が気づいた時には、全てが手遅れだった。
ジャラジャラジャラァァァァッッ!!!
賽銭箱の口から、黒ずんだ津波が溢れ出した。それは、長年溜め込まれ、ろくに回収もされていなかったおびたしい量の硬貨。
多くは江戸や室町の、穴の空いた古銭。それらが鈍い金属光を放ちながら雪崩を打ち、尊の小さな身体を、あっという間に飲み込んでしまった。
後には、硬貨でできた小山だけが残り、その頂点から、カラン、と1枚の寛永通宝が転がり落ちる。やがて、コインの山がもぞもぞと動き、中からくぐもった声が聞こえた。
耳障りな音を立て、硬貨の山がもぞりと動く。そこから、まるで土の中から蘇るゾンビのように、尊の
白い腕が1本、にゅっと突き出された。彼女が荒い息をしながら銭の山から執念深く這い出すと、境内では、舞い上がっていた土煙がゆっくりと晴れていくところだった。
その中心には、何事もなかったかのように服の埃を払う4人の娘たちの姿がある。
「ただいまー!」
「いやー、やっぱり我が家が1番落ち着くね!」
その、あまりにも呑気な声に、尊の頭頂部からぷつりと何かが切れる音がした。
彼女は、頬に寛永通宝を1枚貼り付け、頭に小鳥の巣でも乗せたかのような姿でよろよろと立ち上がると、震える指で娘たちを指差した。
「こ……この……忘八者どもがァァァァッ!!」
魂そのものとでも言うべき絶叫が、ようやく静けさを取り戻した境内に木霊する。
「わしがどれだけの手間をかけてこの境内を元に戻したと思っておるか!着陸するならせめて『今から帰る』の一言くらい連絡せい!空を飛ぶというなら着陸許可申請はどうした、申請はッ!」
神の威厳と近所の頑固親父の説教が奇跡の融合を果たしたその怒声に、4人は「あ、やべ」という顔を見合わせ、申し訳程度にぺこりと頭を下げるのだった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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