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21. 冷徹青年の裏の顔

 これはつまらぬ昔話。

 とある冷たい少年が日本という国で生まれたそうな。


 赤ん坊の頃には産声さえ上げず、成長した時に友人や家族が同時に事故で死んでも、その場に居合わせたはずなのに、

「ふうん」

としか声を上げなかったこともあった。


 人々は噂した。

 感情を表に出さないどころか、そもそも感情さえ無いのだと。


 人々が噂するのも無理はないほどに、その少年は冷徹に見えた。少年は人知れず悩んだ。自分は人並みに笑い人並みに泣くのに、なぜ周りはそう思うのか、と。

 それはただ自分の行動や態度を振り返っていないだけである。周りがどう思うかについて普段から配慮が出来ていない。少なくともその時点で人々の評判は正しいだろう。


 だが、冷徹であることは今となっては懐かしの過去形だった。


 〝それ〟については本当に信じられないくらいだ。



 冷徹な少年は、そのまま冷徹な青年に育った。

 周囲の評判も変わらないまま、ずっとそのまま―――である、はずだった。

 ある日、出会ってしまった。


「ふぇぇぇ!?」


 瞳に光が灯った。


 その青年は恋愛経験がゼロに近しく、異性愛どころか同性愛もままならなかった。しかしだからこそなのか、胸を射止めたものがあった。


 ただの、PCゲームだった。それもボーイズラブの。

 もう一回言う、ボーイズラブだ。

 なに? 今どきそういう言い方は古いって? そんなことはどうでもいいのだ。


「なにこれなにこれぇ!! すごいビジュ良いしこのキャラたちのギャップと関係性と口調ともう良すぎ何もかも―――」


 突き刺さった、のだった。

 それも王道ではなく邪道側のキャラクター陣営「ヴィラン族」を推した。


 その青年はのちに一流の弁護人として冷たい顔のまま名を馳せた。



 それから青年が人並みに笑い、人並みに泣くようになったこと―――その世界の人間は知っていたのだろうか。

 ただ一つ言えるのは、青年はその生涯で孤独に過ごしたことだけだ。




 ◆◇◆




 〝ゲームの『主人公(プレイヤー)』に生まれたい。〟

 そんな子供じみた夢をひそかに抱えながら、青年のそれは叶わなかった。いまでは全く気にしていないようので、良しとしようか……。


 しかし、本物の『主人公』はどこにいるのだろうか?

 それはまだ、誰にもわからない。

第一章はいかがでしたでしょうか!


ゲーム内容についてあんまり触れないから物足りなかったそこのあなた。補足です。

主人公プレイヤーもこの世界にリアルタイムで存在しています。

本来BLゲーム『蒼き誓約と王子の夜明け』の主人公プレイヤーは、選択制で種族を選んでどちらかに所属することを選べますが、この「現実世界」で実際問題どちらの種族になっているのかは、これから明かされます。(第二章のお楽しみでもあります!)


レオンはゲームの開始時期などはあまり気にしていません。もっとも、自身の冤罪裁判が明けた直後にヴィランたちに依頼されたものなので、記憶の整理が半分追い付いていないままのフルスロットル状態です。


次の章では、ミナの謎とゲームの謎、アレクシス王子の陰謀が同時進行で絡み合って進んでいきます。レオンもそろそろ主人公プレイヤーの存在を意識するんじゃないでしょうか。


第二章の更新は今週中に始まるので、見守っていただけたら嬉しいです。

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