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19. ‐小休止‐元奴隷少女のつぶやき

 夜更けの時間になり、グルムはミナをアジトまで送る役目をウィリアムに任せられた。

 近隣の路地にて、二人は街灯ランプの下で歩き、他愛ない話をしながら笑い合う。


 これまでにない判決で、無関係らしきヴィランの人々までもが噂を聞きつけ、外套を被って正体を伏せながらも、裁判所近くの酒場で馬鹿騒ぎしている。


 外気が冷たい中、さりげなしにグルムは白い息を吐きながら伏せた目で、ミナにひとりごちた。


「……実は自分、もともと裁判記録官でね。ヴィランの立場ながら頑張ってたんだ。だけど英雄族の司法官どもにやっぱり失望して、情報屋に転向した。……でもな、今日のですこし元気づけられたよ。いままでの裁判は、初めから答えが決まってる茶番だった。何十回、無実の奴が潰されるのを見たことか……」


 グルムは苦く笑う。


「あいつは……それを本気で覆した。それも初回の第一審で。あんなの、初めてだ……」


 しかしすぐに口元を緩めた。


「弁護士サマはただ者じゃねぇよな。ホント、民の味方だぜ」


 そしていつものように、くくっと胡散臭く笑う。


「ま、情報提供した自分のおかげな所もあるけど。でも、あいつにはヘンなカリスマ性? 説得力? があるというか」


 ミナはグルムの横で得意げにうなずく。




「……やっぱり、レオンさまってすごいです」


 次の瞬間。


「―――だけど」


 ミナの表情から笑みが消えた。正の感情を欠片さえも残さずに、平常時の見る者を癒す雰囲気を、いまだけ一切纏わずに――




「……ミナは、役に立てたでしょうか」



 そのまま、真っ黒な瞳で呟いた。






 酒場の笑い声と楽器の音が、遠くで泡のように弾けていた。

 しかしこの路地は、街灯の下にだけ小さな光が落ちているだけだ。


 グルムは目の前の少女に対する答えを探したが、なぜか喉が凍りついたように動かなかった。


 また、何かが起こる予感がした。

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