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1. 僕は清廉潔白です!

初投稿です。

よろしくお願いいたします!

 ―――この世界は英雄族とヴィラン族に分かれ、今までおよそ2000年にわたり争っている。

 そんな世界情勢も、若い下級兵の自分には関係ないことかもしれない。


 外でぽつぽつと小雨が降っていた。

 錆びの匂いがする人気のない地下牢の檻の中で、自分は隅にあぐらをかいて深くうなだれていた。

 ゆっくりと頭を掻き、息を吐く。

「はぁ……」

 まさか、通り魔殺人の罪を着せられるとは。

 

 散々看守たちに釈明したが、生まれ持っての口下手で中々上手くいかなかった。


 これじゃどうすんだ――家族にも迷惑をかける。貧しい家計でやっと英雄族中層の下級兵士になれて、小さくてかわいい兄弟たちはみんな喜んでいたのに。


 母は、弟たちは、今の自分に何と言うのだろう。

「ぅ」

 気が付かぬうちに小さい嗚咽が漏れた。

 つまらない人生だ。どれだけ守りたいものがあっても、現実はうまくいくことなんて無いに等しい。少なくとも自分の人生ではそうなのだ。


 せめて。

 こんな薄暗い場所から、出たい。

 自分は立ち上がり、周囲をこそこそと物色する。何か檻を開けるものを探すために。

 錠前に合う鍵は当然ながら無い。鍵代わりに使えそうな、尖った鋭利なものも無い。

「……どうしたらいいんだ……」

 そうだ。

 自分はふらつく足取りで、檻に頭を近づけた。横に手をつき、ごんごんと打ち付けた。石頭には自信があったつもりだった。

 自分の気が狂ったことには気が付かなかった。

 出たい、出たい。

 出るんだ、ここから。

 目の前にとうとう星が散った時、看守たちの声がうっすらと聞こえた。


「うわぁ。あいつ、〝ヴィラン〟の輩に負けず劣らずの狂いようですね」


「同じ〝英雄族〟だとは思いたくないな」


 ん?

 ちょっと待て。

 ヴィランとか英雄とかって好まない単語だったのに、やけに一瞬なじみがあるように感じたのはなんでだ?

 その時。

 激痛が走っている頭に何かの光景が鮮明に浮かび上がった。

 なんだ?

 鉄か石か何かでできたような高い建物が並んだ街の光景が見える。それとせわしなく歩く人々の様子。立ち並ぶ店を電子音楽の雑音が支配しているこの、風景は。


「東京……」

 え、なんで自分は町の名前を知ってる?


 まるで雷に打たれたみたいですごく強いめまいがする。強制的に長い長い映像が流れ込んだ。


 それは遥か彼方の異世界、慣れ親しんだ日本の記憶。


 ()()で―――

 〝僕〟は法廷の若い一流弁護士として名を馳せていた。

 だが、仕事に埋もれた独りっきりの人生だった。冷徹すぎる愛想のない弁護士だと好き勝手に噂されていたけど、実際そんなことはなかった。

 人並みに泣くし、人並みに笑うのに。 


 僕の孤独を癒してくれたのは、とあるPCゲームだった。

 キャラクターの内面もゲーム画面のビジュアルも組み込まれたシナリオも、全部が台風みたいに僕を刺激した。

 誰もいないオフィスで、モニターに映る推しの笑顔だけが僕を救った夜があった。


 王道BLファンタジーゲーム『蒼き誓約と王子の夜明け』。キャラクターはおおまかに二つの種族に分かれていて、プレイヤーはどちらかに所属することができる。―――英雄族と、ヴィラン族。

 確か、この世界は魔族であるヴィランが忌み嫌われていて奴隷売買などひどい扱いを受けていた。英雄族など名ばかりである。


 そこまで思い出してから、僕は不意に声を上げた。

「えっ…ここ、僕のやり込んでたBLゲームの世界じゃん…!?」

 もんのすごくセクシーでかっこいいヴィラン達は〝僕〟にとって箱推しで愛すべき信仰対象だった。

 あぁ、転生なんて、ホントにあるんだ。

 じゃあ。

 〝僕〟は何がしたい?

 すうっと意識が遠のいていく。

「……推し…さまを…この手で…弁護したいぃ………!」

 頭の情報処理が追いつかずに、僕はそこで気絶した。看守たちは様子がおかしい僕を、檻の外から戸惑った顔で見下ろしていた。




 夜明けの牢獄にて、高い位置にある小さい窓から日光が差している。

 ぱちっと目が覚めた。あれから気を失っていたらしい。


「んー」


 僕は背中をぐっと伸ばしてから起き上がり、檻の向こう側の椅子に座っている見張り番の看守に思い切って声を掛けた。


「…あのっ」


 看守はあくびをしながら迷惑そうに振り向く。僕は続けた。 


「頼みたいことがあります」


「…なんだ?刑罰免除の相談かぁ?残念だがそういうのは弁護人に頼むんだな」


「いいえ」


 正座して姿勢を整える。立派な社会人として人に話を聞いてもらうからには、こちらが一番相手の顔を見てはっきり喋ることが大切だ。


「弁護人はいりません。その代わり――僕自身に、弁論の余地をいただく時間が欲しいです」


 看守はぽかんとした顔になる。


「………頭を打っておかしくなっちまったか?」


「十回程度打ちましたね。だけどそんなこと言っても、僕は曲がりませんよ」


 真っ直ぐ澄んだ目で僕は、看守を見据えた。

 まずは―――法廷で僕の冤罪を証明しなければ。


 さぁ、巻き返せ……!

次回、法廷で主人公はどう行動するのか。

BL転生ものでなぜか法廷ですが、よろしければブックマークしていただけたら嬉しいです。

第一章までストックがあるので、第二章を執筆しながら一日につき二、三回程度投稿していきます。

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