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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第1章 メタバース(西暦2090年)

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8話 出産

「今日から一緒の部屋で過ごすことになるけど、よろしくね。」

「翠さん、こちらこそ、よろしくお願いします。」


澪が未来に行っている間、私は、祐司と一緒に暮らし始めた。

どうしてか、女性とは違って、横にいることに安心感がある。


「ところで、男性って、日頃、どんな生活をしているの?」

「どんな生活だって? 特別なことはないと思うけど。女性とは違うのかな? 毎朝7時頃起きて、健康維持として、午前中にメタバース空間で10Kmぐらい走ることが義務付けられている。ランチ後、すぐに精子を採取してからお昼寝をして、午後は自由。夜寝る前に再度精子を採取して寝る。そんな感じかな。」

「私たちとはだいぶ違うわ。運動とか、やってる人もいるけど、義務ではないし。また、授業とかないの?」

「そういえば、基本授業だけは7歳まではあったかな。それ以降は、自分の部屋で過ごすだけ。」

「女性は、基本授業が終わると、課外授業があって、人間関係を学ぶの。どうして男性はないのかしら。」


そういえば、AIは男性が集団となり反抗することを抑えられないと芽衣が言っていた。


「女性と会うのは初めてだと思うけど、他の男性と会うことは少ないの?」

「そうだね。会ったことはない。そういえば、話しが変わるけど、男性は15歳で別の施設に移されるんだ。」


男性は15歳で別施設に収容されたら殺されると聞いた。

精子の採取は13歳から始まり、2年で十分だとされているみたい。

採取した精子は冷凍で保管されているとのこと。


「でも、いつも採取していた精子が子供を産むのに使われていたなんて知らなかったよ。」

「私も知らなかった。それで、女性は卵子とかについて何かの作業はないわ。ただ、月に1回、生理という妊娠の準備みたいことが体に起きる。」

「どんな感じなの?」

「おいおいね。さて、夕食をいただきましょうか。」

「そうだね。」


私は、書物で読んでいたものの、本当に妊娠できるかは不安があった。

その晩、祐司と私は一つになる。

私からは祐司の大切なところが入ったのは見えないけど、入った感覚はある。


祐司もどうしていいか分からないようだったから、私がそこだと手で誘導した。

あんな大きなものが入るなんて怖い気持ちもあったけど、ここで止めることもできない。

祐司は、体を前後に揺らし、その度に私の口から声がでる。

とても痛かったけど、人類の未来のためだから頑張るしかない。


精子が入ったかは分からないけど、私の割れ目からシーツに白い液が流れ出る。

これが精子というものなのかしら。

これまで自分の下半身なんて見たことなかったけど、かなりグロテスクで気持ちが悪い。


しかもエッチって、なにかとても獣のよう。

でも、それを通じて子供達が産まれることを実感した。

そして、私は、祐司に抱かれた時に、祐司の暖かさを感じ、安心感に包まれる。


こんな関係を1週間以上、続けた。

その中で、私の気持ちは、自分でも信じられないぐらい、大きく変わっていった。


私は、昔から、周りから攻撃を受けていると悩んでいた。

顔が陰気臭いとか、横柄だとか、いつもけなされていた。

顔のことはどうしようもないけど、決して横柄とかそんな気持ちなんてない。


でも、いつも、周りには本当の自分を認めずに、ひどい扱いを受けてきた。

無視されたり、陰で悪口を言われたり。

だから、先手を打って、自分の生きる場所を精一杯守ってきた。


弱い人を配下に置き、そのグループで中間層を取り込んでいく。

それでもあからさまに攻撃してくる人は仲間はずれにして無視をする。

そうしないと、私が除け者にされ、いじめられてしまうから。


そのうちに、そういう行動しかできなくなっていた。

自分でも、周りに高圧的に接するのは醜いと分かっている。

でも、気づくとマウントを取り、相手を不快にさせている。

しかも、不快な表情をする相手には、屈服するまで威圧する。


そして、そんなことをしても、いつも1人だった。

仲間も、うわべだけ私に笑顔を向けるけど、誰も私の気持ちなんて考えていない。

ただ、笑い声が上滑りするだけ。だって、みんな私のこと嫌いだもの。

私は、どんどん孤独になっていく。


でも、どうしてかはまだ分からないけど、祐司は違った。

祐司は、ありのままの私を正面から見て、私と本当の会話をしてくれる。

祐司の胸に顔を埋めれば、暖かく包まれたような気持ちになれて安心できる自分がいる。


何がこれまでと違うのかしら。

不思議と、祐司には本当の私を曝け出すことができる。

それは、何を言っても祐司が許してくれると思うから。


これが、私が女性に対する感覚と、男性に対する感覚と違う所なのかもしれない。

お互いに足りないところを補い合えるという感じかしら。

こんなに醜い私でも、祐司は受け入れてくれている。


今夜も、ベットで祐司の横に体を寄せる。

彼は私を抱きしめてくれる。

どうしてかしら。とても暖かいし、幸せに包まれる。


温度とかそういうものじゃない。

全ての自分が認められ、自分の醜い部分も許されるという感じ。

これが、書物に書いてあった愛というものと関係があるのかしら。


一方、祐司は、私たちより感情の起伏がなく、穏やかに私を大切にしてくれる。

これは祐司の特徴なのか、男性の特徴なのか分からない。

一度エッチが終わると、私を抱きしめることに執着はなさそうにみえる。

もっと抱きしめていて欲しいのに。


ただ、私に優しくしてくれた分、私も祐司に優しくできる。

いえ、祐司だけじゃなくて、周りの人たちにも嫌がらせをすることはなくなった。

祐司といることで、好きな自分でいられる。


気付くと、祐司の顔をみて微笑んでいる。

祐司の背中を目で追っている自分がいた。

もう、祐司への気持ちを抑えられない。


私の中で、何が起こっているのかしら。

変わっていく私と違い、祐司の気持ちはあまり変わっていないみたい。

ただ、私への優しさは変わることがなかった。


エコー検査で妊娠がわかり、1ヶ月後の出産の日を迎える。

仲間の5人と祐司は、私の出産を応援してくれた。

でも、妊娠って、こんなに大変なものだなんて知らなかった。


数日だといっても、きついつわりが終わり、お腹が大きくなり、腰が痛い。

お腹が重いし、情緒も不安定になって、祐司にもあたってしまう。

祐司は、妊娠による症状と聞いているのか、暖かく接してくれていたけど。


今日は、出産の日。

未来から帰ったばかりの澪も含め、5人の仲間と祐司が一緒に声を出してくれる。


「翠さん、頑張って。」

「結菜、ありがとう。」


私がいじめていた結菜が応援してくれている。

ごめんね、結菜。私は日々の不満を結菜に当たっていたの。

でも、結菜は優しい。こんな私でも応援してくれる。


でも、痛い。あんな小さな穴から赤ちゃんの頭が出てくるのだから当然だと思う。

みんなの声は一つになり、最後に、赤ちゃんの鳴き声が部屋に響いた。

やっと産まれたのね。


赤ちゃんを恐る恐る抱きしめた。

笑う顔、あまりに小さな手、どれも愛おしい。

祐司も抱きしめてあげて。この子が私たちの子供なんだから。


それからも大変な日々は続いた。

地球外生命体の発達促進剤は出産後も効果が続き、1ヶ月ぐらいで歩き始める。

その頃になると、発達の加速は止まった。


AIの教育システムは使えないから、手探りの子育てとなる。

みんなも助けてくれたので、なんとか育てることができた。

本当に子育ては大変なんだと気づいた。


赤ちゃんは喋れないから考えていることが全て分かるわけではない。

でも、泣き始めると、泣き止むまで責め立てられている気分になる。

おむつを取り替え、施設内を散歩させ、怪我をしないように細心の注意も払う。


バストも、本には書いていなかったけど、かなり張って痛い経験をした。

でも、私のおっぱいを勢いよく飲む赤ちゃんはとても愛おしい。

そのうち、この子のためならなんでもできるし、我慢できると思える自分がいた。

祐司も前と変わらず愛おしいけど、今の私の一番はこの子。


その中でも、祐司は、私の心の支えになってくれる。

それに加えて、私の苦労に対してみんなが応援してくれる。

その応援に支えられて、子育てを続けられた。


これまで、私は、他人を貶めたりしてきた。

本当に、多くの人にひどいことをしてきた。

でも、暖かい心に触れ、私も、他人に優しくしなければならないと気付いたの。


また、祐司への気持ちを多くの女性に感じてもらいたい。

そして、人類の明るい未来に向けて、子供たちを産み、育てていこう。


この日々の記録から、女性達の妊娠、出産、子育てを進めた。

陽葵が100人以上の女性と男性を集め、私が出産、育児のトレーニングをする。


人類が地球外生命体の奴隷から逃れるためだと伝えると、大勢の女性が協力してくれた。

そして、澪が屠殺されようとする男性達を助け出す。

それぞれが関係を持ち、次々と子供を産んでいった。


私は、無痛分娩の方法も確立し、多くの女性が不安なく子供を産めるようになる。

それが出産を加速し、1人の女性が平均15人の子供を産んだ。

施設内では、赤ちゃんの鳴き声が響き渡る。

でも、まだまだ足りない。この地球を私たちの子供達で埋め尽くすのだから。


男女の遺伝子操作はないから、子供の男女比率は半々ぐらいになっていく。

子供たちは、私たちと違い、男女共学で育てられた。

今後、どのような社会になるのか想像がつかないけど。

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