6話 自爆
目覚めた、その時だった。また、埃ぽい部屋で大きな出発の合図が響き渡る。
武器をしっかりと持ち、眩しい外での戦闘に参加した。
顔の横を弾丸が飛んでいく。
頬にかすり傷がついている。
あと1cm顔に近づいていたら、頬はなくなっていたと思う。
本当に死と隣り合わせの戦場。
リーダーがブロック塀から顔を出した時、弾丸がその目を射抜く。
血が飛び散り、目から血が流れる顔を空に向けて地面に体が転がった。
コンクリートのブロックの上で、リーダーの頭から血が勢いよく流れる。
体が倒れるとき、スローモーションのように見えた。
即死だと思うけど、先に脱落したことを私に謝っていたみたい。
悔しいような、苦笑いしているような。
あの優しそうな人が、目の前で死ぬなんて。
私も、いつまで生きられるかわからない。
死と隣り合わせになった時間が永遠と続く。
撃たれたのは1人ではない。
見えるだけでも5人は地面に倒れ、放置されている。
でも、前に進み、攻撃することはやめられない。
こんな過酷な状況から逃げ出したい。
でも、私の役割を引き継いでくれる人はいない。
逃げ出せば、代わりに同僚が死ぬ。
私みたいに逃げることを考えている人はいないように見える。
みんなが、自分の大切な人を守ろうと勇敢に前に進む。
私は、仲間達が、筋肉がはち切れそうな足で土を踏みしめ、前進する姿に圧倒された。
怖さを乗り越える大義がみんなにはある。
戦わなければ、家族、パートナーといった人達が殺されてしまう。
それはなんとしても阻止しなければという気迫が周りを包み込む。
サブリーダーが率いる中で、2手に分かれ、敵を挟み込み銃撃戦に持ち込んだ。
双方から攻められた敵は一時退却を始めた。
そして、私達も避難所に戻った。
「リーダーは亡くなり、俺がリーダーを務める。苦しい戦いだが、頑張るぞ。よろしく。」
みんなを見守っていたリーダーは、もういない。あまりにも、過酷な現実。
みんなは疲弊していることもあり、一言も喋らずに新リーダーを見つめる。
聞こえるのは、新リーダーの声と、仲間達の乱れた息の音だけ。
「戦況は悪化するばかりだ。武器のエネルギーは、もう底をついてきた。今、できることは、一人ひとりが、武器そのものになって、敵の中に飛び込み、ビーム手榴弾を投げ、この武器で打ちまくることしかない。もちろん、敵の中に飛び込むときに敵の銃弾を受け、生きていける可能性はゼロに近いと思う。だから、納得できない人は離脱してもいい。無理強いはしない。どう、やってくれるか?」
「もう、それしかないんですね。もちろん、僕も、みんなも、その作戦をやり抜きます。いいよな、みんな。」
「俺も、やる。」
「ありがとう。みんなで相互に援護射撃もして、敵に少しでも近づくぞ。分かったな。」
「はい。」
自分の命を犠牲にする指示にも、明るく従うしかない。
私達には、もう他の選択肢は残っていないから。
でも、決して逆説的ではなく、納得のうえ、明るい未来に向けた歓喜の渦に包み込まれる。
今夜は、缶詰の肉が配られた。
それを食べていると、昨日、喧嘩していた2人が肩に手をかけて大笑いしている。
女性だと、あんなひどい喧嘩になれば、もう関係は修復できない。
男性って、こんなに簡単に仲直りできるの?
それとも、こんな過酷な環境だから?
みんなの笑い声も増えていった。
人がいっぱい亡くなったのに、現実を忘れるように、みんなの顔は明るかった。
「木村。少し暗いんじゃねぇ? 明るく行くぞ。」
「そうだね。でも、怖くない?」
「そりゃ、怖いよ。でも、ここで何もしなければ、守らなければいけない人も全て失っちゃう。俺は、明るい未来のためなんて、かっこいいことは考えていない。大切な人たちを守りたいだけなんだ。そもそも、怖がっていても、逃げられるわけじゃないだろう。だったら、怖がるだけ損じゃないか。」
みんなの目はやる気に溢れ、大切な人を守ろうとしている。
死は怖いなんていう雰囲気は全くない。男性って、すごいと初めて気づいた。
みんな、自分のことは考えず、ゴールに向かって直進していく。
男性って、こんな風に厳しい現状を打破することができるのかしら。
明るい未来だけを見て前に進む生き物なのかもしれない。
男性のことは何も知らなかったけど、この世界で尊敬できる存在だと知った。
みんな汗まみれで、お風呂も入れないようだし、汗臭さが充満していた。
だけど、そんなに嫌な匂いじゃない。
むしろ、みんなが仲間だと感じられる。
みんなも怖いと思うけど、誰一人、逃げようとしない。
本当に、みんな頼もしい顔をしていて、明るく活気がある。
薄暗く感じたこの避難所は、とても暖かい空間に思えた。
それに比べ、これまでの私は現実から逃げていただけ。
自分のことばかりで、他の人のためなんて考えたこともなかった。
だから、地球外生命体につけ込まれ、飼われるだけの存在になっていたのだと思う。
大切な人を守ろうとする力に憧れてしまう。
私も、男性に守られたい。
そして、私も周りの人たちを守るために、力強く前に進まなければならない。
みんなと一緒に戦場に向かった。
敵は、突進してくる私たちに困惑し、逃げ道を失い、大混乱となった。
敵の世界では、自分を犠牲にして戦うという考えがなかったのかもしれない。
各地で爆破があり、敵は壊滅状態になったのは間違いないと思う。
でも、私は、この戦いで得た情報を持ち帰らなければならない。
だから死ぬわけにはいかなかった。
避難所に戻った時、私達は2人だけになっていた。
1人は、手を吹き飛ばされたのか、血を流し、フラフラと戻ってくる。
このまま死んでしまうかもしれない。
仲間が大勢死んでしまった。
私が生き残っていることが申し訳ない。
私は、涙を流し、その場で気分が悪くなり、陽の光が差し込む砂の上に倒れた。




