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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第1章 メタバース(西暦2090年)

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4話 男性

陽葵が用意した施設で、AIから切断された生活を始めて1週間が経つ。

陽葵は、5人にそれぞれ役割を示して、みんなは情報収集を始めていた。

1週間が経ったとき、陽葵は5人を集めて中間報告をさせたの。


「今日は、翠の番ね。さあ、この図書館にある資料からわかったことをみんなに説明して。」

「私たちには親がいるんですって。」

「親って?」

「私たちは、親から生まれるらしい。いきなり、この世に出てくるものではないって。」

「神様から創造されると聞いたけど。」

「それはAIが私たちに埋め込んだ嘘。人間は、女性と男性から生まれるの。」


翠は初めて知ったかのように目を丸くしながら話す。

親、男性、聞いたことがない言葉がでて、誰の顔からも疑問符のマークが浮き出ている。

でも、陽葵は、断言しているから、このことを知っていたのね。


「女性、男性、それって何?」

「女性は私たちで、体の中で卵子を出すの。そして、男性から精子をもらって子供を体の中で育てるって書いてあった。」

「男性って、見たことないけど。」

「AIは、男性が反逆するんじゃないかと恐れ、人数を制限して、一定の施設に閉じ込めているらしい。そして、精子ができる年齢になると、2年ぐらい精子をとって、その後に殺すんだって。」

「もう、何を聞いても驚かないけど、卵子って、この体の出すの?」

「お腹のあたり。生理ってあるでしょう。女性は、1月に1回卵子を出すけど、精子がないと子供にならなくて、その子供にならない卵子を外に出すのが生理なんって。」

「そうだったんだ。あんな痛いことがどうして毎月起きるのかと思っていたけど、子供を作る過程だったのね。」


自分の体の中で子供が育つなんて想像もできない。

初めて聞く話しで、遠い世界のことのように思えた。

でも、最近はAIに騙されていたことに気づき、なんでも受け入れられるようになっている。


「それで、どうして女性だけでは子供ができないの。」

「それは、生物としての戦略というか、多様性を作るためらしい。人間は2つの染色体を持っていて、子供には、女性の1つの染色体、男性の1つの染色体が引き継がれる。女性だけで子供を作るとコピーしかできないけど、男性と掛け合わせると無限の組み合わせができるということらしい。」

「よくわからないけど、まあ、だいたいは理解したわ。」


陽葵がここに集めた人は、見た目や性格は別だけど、頭はいい。

論理的に話しは続き、すぐに理解をしていく。


「それで、男性の数を制限していると言っていたけど、それだと生まれる子供も限られちゃうんじゃないの?」

「それがそうじゃないの。女性は1月に基本1個しか卵子を使えないけど、男性は1日に何回も、しかも1回で大量の精子を作れるようなの。だから、男性1人がいれば、女性千人とでも子供を作ることも理論的には可能らしい。でも、男性1人だけでは、男性の染色体のパターンは限られるから、東京には1,000人ぐらいは男性がいるんだって。」


陽葵はいつものとびっきりの笑顔で話し出す。


「ということで、今日は1人の男性を連れてきました。どうぞ入って。」


男性という人が部屋に入ってきた。

体は、女性とそんなに変わらない。

頭、胴体、手足があり、顔に目、鼻、口があるのも同じ。


いつも周りに関心がない莉音も、スマホをいじるのをやめて、男性を見つめている。

陽葵以外の女性は興味津々で、男性を上から下まで見ていた。


「何が違うかというと、大きくは精子を出す部分。ごめんね、脱いでみてくれる。」

「恥ずかしいんだけど。」

「これからの人類の発展のためだと思って。」


声が低い。

みると、喉のあたりが膨らんでいる。

これは、この人の特徴なのか男性はみんなそうなのかはわからない。


男性が服を脱ぐと、確かに下半身に見慣れないものがぶら下がっていた。

また、バストは膨らんでいない。

少しづつ違いはありそう。


「それで、翠には、この男性と子供を作ってもらおうと思うの。書籍で、妊娠、子育てとかも十分に学んでもらったし。本来は、人間は10ヶ月をお腹の中で子供を育てるんだけど、地球外生命体は発達促進剤を使い1ヶ月で出産できるようにしている。翠の負担を減らすのと、何が起きるのかデータを早く取るために、地球外生命体のこの薬を使うことにするわ。そうなると、あと、2ヶ月ぐらい後に、地球外生命体が知らないところで、私たちは子供を産むところをみることができるはずよ。翠、わからないことばかりだけど、よろしくね。」

「不安しかないけど、わかったわ。」

「この男性、祐司さんというんだけど、今日から翠と一緒の部屋で暮らしてもらう。」

「夜になって、牙が生えて食べられちゃうなんてことないのよね。」

「大丈夫。私が調べた範囲では、同じ人間だから、気持ちも分かり合えるはず。」


祐司さんは口を開いた。


「僕らは、いつも1人で暮らしてるんだけど、女性は集団で暮らしているの? みんなで笑いながら楽しそうだね。」

「女性も1人の生活がベースで、それに集団でいる時間があるの。でも、男性って、筋肉も多くて体は堅そうね。」

「たしかに、女性はふっくらとしていて僕らより柔らかそう。」

「女性を見るのは、今日が初めてなんでしょう。初めて女性を見て、どんな風に思った?」


莉音は、いつもと違い積極的に話しかけ、会話は続く。

莉音は、なんでも新しいことに興味がある人。

私たちの中では笑い声が響く。


「どんな風か、まだ分からないな。さっきも言ったけど、みんな仲良しで、楽しそう。」


この5人は、笑いながら、何を考えているのかわからない。

芽衣が、うふふって何? また、本当の自分を隠し、いい人に見せたいの。

翠だって声が1オクターブ高くなっている。いつもの、悪人キャラでなんでいないの。


私は、女性同士の関係は、そんなにきれいなものじゃないと冷めて聞いていた。

むしろ、1人で暮らす男性は羨ましい。


莉音は、さっきから話し続けているけど、祐司さんと子供を産みたいとか?

やめてよ。祐司さんは翠と一緒に子供を産めばいい。

陽葵がそう決めたんだから。

私には関係ないこと。


陽葵は、楽しそうな会話を遮る。

そして、厳しい顔をして続きを話し始めた。


「実は、私たちは20歳を超える時に地球外生命体に殺されていることがわかっているの。正確にいうと、18歳からは別施設に収容されて眠らされ、次々と出産を行う。そして、20歳を超えると殺される。」

「それは、子供だけで教育する方がいいから、18歳を超えると別の場所に行って、そこで働いているって聞いていたけど。」

「いつものAIにとって都合のいい嘘よ。ところで、どうして20歳で殺すかというと、年齢とともに血液の核細胞が減り、食料としては使えなくなるらしい。だから、20歳を超えると用済として殺され、その体は細かく切り刻まれ、私たちが日頃食べているお肉として使われている。」

「え、あのお肉って、先輩たちの体だったの? とんでもないものを毎日食べていたのね。」

「殺されたくない。」

「だから、私たちは戦うの。」


私に課せられた地球外生命体との戦闘について、その時は何も知らなかった。

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