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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第4章 ブラックホール(西暦3525年)

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4話 感染

1時間後にホテルから出発し、病院の建物に入る。

そこは悲劇が広がっていた。

廊下には歩けないぐらいの数の白骨遺体が重なる。


私たちは、仕方がないので、骨を踏みながら前に進んだ。

骨は思ったより柔らかく、踏み込むと粉々になる。

長い時間が経っていたからかもしれない。


廊下の先には、診察室のような部屋があり、棚の冷蔵庫には多くの試験管が並んでいる。

試験管には緑色の液体が入り、キャップがされ、冷蔵されているので液体のまま。

昨日の探索の様子では、この惑星の人達の血液なのだと思う。


病院にこれだけの人が押し寄せているとすれば、考えられるのは1つ。

なにかの感染症が蔓延したに違いない。

感染力が強く、あっという間に広がり、短時間で死に至ったのだと思う。

全ての生き物が死に、その後、宿主を失ったウィルスも死滅したとしか考えられない。


この部屋の椅子には、両腕を垂らした医者らしい白骨遺体が座る。

研究の末、何もできずに、自らも死に至ったのだと思う。

無念だったに違いない。


ただ、1つの不安が頭をよぎった。

これだけ地球と同じ環境なら、この感染症は私達にも襲いかかる。

この空中では死滅していても、病院なら、研究のためにウィルスは保管されているはず。


まずは、この病院からすぐに出た方がいい。

できるだけ、保管されたウィルスを放出してしまうリスクを避けるべき。

ただ、その場合でも、地震とかで、私達と関係なく放出してしまうリスクは残る。


人類の数を増やす長い時間の中で、どう対処すればいいのかしら。

病院は、立ち入り禁止エリアだと語り継ぐのかしら。

保管されたウイルスをどこか遠い所に輸送し、宇宙船のエンジンで焼き切るとか。


いずれにしても、そう簡単なことじゃない。

一つでも漏れがあれば、ここで死滅した生命体と同じ運命が待ち構えている。


そんなことを考えて、私が目を離しているときだった。

陽翔が冷蔵庫を開けて試験管を取り出していた。


「危ない。」


そう言った時だった。陽翔の手から1本の試験管が床に落ちる。

試験管は割れ、緑色の液体が飛び散った。

同時に腕に付けた装置が鳴り響く。


「危険、危険、みなさんはウィルスに感染しました。今から45分以内に、みなさんは死に至ります。この星にある宇宙船には治療キットは積みこまれていません。生き残るには、アンドロイドに脳を移植するしか方法はありません。」


警告は何度も鳴り響く。


「ごめん。なんていうことを。」

「そんなこと、どうでもいいから、早く宇宙船に戻り、アンドロイドに脳を移植しないと。」


私たちは、全速力で宇宙船に戻る。

私は、白骨遺体で転んでしまったけど、陽翔が手を差し伸べてくれて再び走り始める。

15分程して宇宙船に乗り込み、4人は移植のカプセルに入り込んだ。

移植開始ボタンを押したからもう大丈夫なはず。


横をみると4人とも、青いランプが付き、無事に移植が進んでいるみたい。

悠真は、私を見て笑顔で、新しい体で再会しようと言っているように見える。


私たちは、カプセルの中で、麻酔を打たれ、気が遠のいていく。

頭蓋骨から脳を取り出し、無数の糸の先にある針が芸術的に神経を紡いでいく。

外で見ていた人がいたら、その美しさに感動したに違いない。


気がつくと、私は薄ぼんやりと明るさだけを感じる。

まだ、神経が繋がるためには1週間はかかると思う。

だるいから、眠ることにしよう。


どのぐらい時間が経ったのかしら。少し、音も聞こえるようになった。

体には力が入らない。横を見ると、3人も動かない。

あと2日ぐらいかしら。眠たい。

私は、肩を叩かれて目が覚める。


「乃愛、そろそろ大丈夫みたいだけど、起きられる?」


一華が笑顔で笑いかけてくれている。


「この技術、本当にすごいわよね。顔も、脳を移植した人の顔に変わっているし、身長も同じぐらいになっている。どこからみても、乃愛にしか見えないわ。」

「そうね。この技術をマスターすれば永遠に生きられるのに、そこまでできていないのは残念。」

「仕方がないわ。限界というものもある。」


私は、このアンドロイドの問題点を知っている。

地球外生命体がスイッチを押すと、一定割合のアンドロイドが操られる。

その結果、周りの人々を殺害することもある。


そのスイッチはどこか判明していなし、地球外生命体は私達のことに気づいていないはず。

だから、このアンドロイドを操作するなんて事態にはならないと思う。

だから、みんなにはこのことは言わないでおく。

不安にさせることもないし、疑心暗鬼になればチームの連帯感も損なわれる。


「陽翔と悠真を起こそうか。」

「そうね。悠真、起きて。」


声をかけられた2人の男性も、眠たそうに起き始める。

4人は、陽が照りつける宇宙船の外に1週間ぶりに出る。

まるで、1週間前の4人がそのまま歩いているようで、不思議な感覚。


波が一定周期で寄せる砂浜。

ヤシの木から、暖かい陽の光が漏れる。

昨日と何も変わらない。ウィルスがあたりを漂っているだけ。

でも、そのウィルスも宿主がいない今では、そのうち死滅すると思う。


しかも、このアンドロイドの体で、子作りはできると聞いている。

ただ、ウィルスがどのぐらいで死滅するかを調べ、その後に子作りをすることになる。

産まれた子供は普通の人間だから、アンドロイドがなくても繁殖していけるはず。


ただ、さっき、私が考えたリスクは排除しておかなければいけない。

だから、ウィルスに感染しないこの体で、保管された全てのウィルスを排除しておく。

それが、当面の私達のやること。この星には大量の病院がある。


でも、想像していたよりも遥かに体調はよく、気持ちはいい。

力がみなぎり、なんでもできそうな気持ちがする。

しかも、アンドロイドだから、生きていける時間は500年ぐらいで、時間はたっぷりある。


私の計画を伝え、みんなも同意する。

その晩も、豪華な食べ物、お酒で私たちの再起を願った。

人類のDNAがこの星で根付き、人類が繁栄するために。


リクライ人ングベッドに横たわりながら、食後に4人は、海辺から星空を見ていた。

賑わいの後の静けさを波の音が演出する。

この4人で、この惑星で人類を繁栄させていく責任を噛み締めていた。


「陽翔は、地球陸軍での体力測定では歴代一位の成績をだしたのよね。あの日のこと思い出しちゃった。」

「そうだったっけ。」

「忘れたの? まだ、完全にアンドロイドに定着していないのかな。しっかりしてね。」

「ああ。そういえば、明日、別の建物を調べに行きたいから、だれか一緒に来てくれないか。」


眠そうにしていた陽翔が唐突に話し始めた。


「何を調べたいの?」

「まだ自信がないから、この時点では秘密にさせて。」

「なんか、慎重すぎて陽翔らしくないわね。」

「なんかバカにしていないか?」


陽翔と一華が笑いながら、お互いに茶化している。

その中に入るのを躊躇いながら、悠真が答えた。


「僕だったら同行できる。」

「陽翔、ごめん、私は研究をしたいことがあって、宇宙船にずっといるから同行できない。」

「私も。武器の手入れをしないとだから、悠真と2人で行ってきて。」

「わかった、そうする。」


ビーチで静かな波の音を聞いて4人は眠りにつく。

翌日、陽翔と悠真は2人で出かけ、悠真は帰ってこないなんて思うこともなく。

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