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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第4章 ブラックホール(西暦3525年)

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3話 束の間の自由

もうすぐ日が落ちて、真っ暗になるため、私達は宇宙船に戻ってくる。

宇宙船を出る時に飛ばしたドローンも戻ってきていた。

この大陸に、目の前のような都市が約2,000箇所あることが分かる。


いずれの都市も、目の前の街と同様に数百年前に滅び、人は誰もいないことが分かった。

何が原因かは分からないけど、全ての生き物が死滅している。

人間だけでなく、小動物のみならず家畜のような動物もいない。


文明レベルも、各都市は同じで、空港がないことも変わらない。

いずれも、家族等と一緒に白骨遺体が横たわる。

文明レベル、文化は均一だったのだと驚かされる。


しかも、同時期に全ての都市が死に絶えたように思える。

ただ、全てが平穏で破壊された跡はなく、戦争とか、災害のようには見えない。

温暖化などで急激に温度が上がったのかもしれない。


逆に、急激な気温低下が襲い、全てが凍りついた後、再び平温に戻ったのかもしれない。

科学者としてあらゆる可能性を洗い出し、検証していかなくてはならない。


でも、この星の自然の風景は美しい。

海の水平線に夕日が沈んでいく。

海が恒星から真っ直ぐのオレンジ色の線が伸びる。


オレンジ色の線は、穏やかな鏡のような水面で輝く。

しばらくすると、周りは真っ暗になり、満天に星が広がる。

波の音しか聞こえない夜に、手が届きそうな星が私たちを包み込んでいた。


宇宙船の近くにあるホテルで遺体がない部屋を探し、そこに泊まることにした。

冷凍食品も見つかり、電子レンジのような装置で豪華なディナーを用意できた。

部屋にはお酒もあって、検査でも安全が確認される。


数百年経つはずなのに、電気が通じているせいか保存状態はいい。

お肉もあって、家畜もあったのだと確認ができた。

高級ステーキとワインに似たような料理で4人で乾杯する。


長期間、宇宙船という閉鎖的空間にいた私たちは、少しだけど自責の念は薄らいでいた。

私たちは、人類のDNAを残す使命でここにいるだけで、ズルをしたわけではない。

ましてや、人類を滅ぼしたのは私達ではない。


一華も、少しは笑顔でいる時間も増えた気がする。

私達より早く目覚め、5ヶ月間、陽翔と2人で悩んで、暗くなる日もあったのだと思う。

どこまで本心かは分からないけど、ここまで気持ちが落ち着いているなら大丈夫。


一方で、この星の人達の遺体に囲まれているけど、私たちへの悪意は感じない。

憎しみ等がなく、穏やかに死んでいったのかしら。


気づくと、ベッドで寝ていて、夜中に目覚める。

部屋を見渡すと、3人はいずれも寝ていた。

悠真と一華はソファーに顔を埋めている。陽翔は床に転がっている。


みんなは笑顔で、話さないけど、まだ罪悪感は感じているのだと思う。

それはそう。私達だけが助かったのだから。

一華と違い、目覚めたばかりの私は、まだ心の整理ができていない。

暗い夢ばかりをみていたし。


コップに水を入れて、ベランダに出て海を眺める。

鏡のような海に星が輝き、もう、自分を責めなくていいと微笑んでいるように見える。

無理に明るく振る舞っていれば、そのうちに気持ちも穏やかになるのかもしれない。

今後の人類は私たちの肩にかかっているのだから。


私と一華は子供を産み、人類を繁栄させていく義務がある。

この星は美しい。私たちの家族で埋め尽くしていこう。

まだ子供がないお腹をさすり、愛おしい気持ちが溢れていく。


最初は数人でも、何百年も経つ中で何万人にもしていく。

そこに幸せも、苦労もあり、物語が生まれる。

アダムとイブのように、その出発点に私達4人はいると考えることにした。


でも、アダムとイブのように約束を破って罪を受けるようなことは避けないと。

こんな地球と全く同じ環境なら、健全な子供を産み、普通に育てていく。

幸いに、宇宙船には、出産をサポートする医療装置もあるから、出産の心配はいらない。


ベッドに入り、寝ることにした。

ふかふかのベッド。この星には高い文明があったのね。

どこまでも沈んでいく感覚の中で、夢に落ちて行った。


「あ、ずるい。1人だけベッドで寝ている。」


明るい一華の声で目が覚める。


「ソファーで寝ちゃった一華が悪いんだろう。乃愛は上品なんだよ。」

「それって、私は下品だというの。失礼ね。」

「だれも下品なんて言っていないだろう。」


誰もが、違和感があるほど、明るく振る舞っている。

地球が崩壊した姿を忘れたくて。


気丈なふりをしても、誰もが使命を果たすために、無理して明るく振る舞っている。

そんなことは分かっているの。分かっているけど、そうしないと自分を保てない。

また、無理している3人の努力に報いたい。


本心と、自分を繕う気持ちが交錯し、時には自分を偽善者だと責めている。

でも、仕方がないじゃない。もう、悩むのはやめて子作りに進もうとする自分もいる。

そのためには、偽の笑顔で自分を奮い立たせ、前に進むしかない。


「さあ、朝ごはんを食べよう。」


陽翔がとびっきりの笑顔でみんなに呼びかける。

それに、一華がスキップをするように私に近寄る。


「朝の海からの風は爽やかね。なんか、本当にリゾート地に来ているみたい。」

「ここに住んでいた人達には、ここは本当のリゾート地なんだと思うよ。」

「そうね。」


一華がケラケラと笑う。

そんな姿は、まだ若い女の子のよう。

そう、一華は苦悩していたけど、本当は、まだ若い、どこにでもいる女の子なの。


ここにいる4人はみんなそう。

ただ、過酷な環境の中で、大きな精神的ストレスの中で過ごしているだけ。

私は、無理をして、3人に微笑みを送る。


悠真がレンチンをした料理を机に置く。

地球での朝ごはんと変わらない。

ベーコンエッグとクロワッサン、オレンジジュースのようにしか見えない。


どうしても、ここの人達が地球に移住したとしか考えられない。

血の色が緑色ということは違うかもしれないし、進化の過程で変わったのかもしれない。

空港がないことを考えると、違うのかもしれない。まだ、絞り込めない。


私は、今日の計画を伝えた。


「ドローンの映像から、ここから15分程北に歩いたところに病院があることが分かったの。そこに、この惑星の生き物が死滅したのかデータがあるかもしれない。調べに行こう。」

「わかった。」


この時には、私たちに襲いかかる悲劇をまだ知らなかった。

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