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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第2章 物質瞬間移動(西暦2027年/ 西暦2094年)

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9話 さようなら

会議室で歓声が上がるなか、破壊されたロボットを包む白い煙の中から閃光が走る。


「何、あれは?」

「母船が破壊される前に、どこかにビーム砲撃をしたみたいです。」

「どこを狙ったか軌道を計算して。」

「ものすごいスピードで、さらに蛇行していて厳密にはわかりませんが、ターゲットは太陽のようです。」

「彩華、このビームを止められないの?」

「物体じゃなくエネルギーだし、しかも、場所を特定できずに猛スピードで進んでいるから、今からでは無理。この感じだと、数分で太陽に到達する。」

「誰か、なんとかできない?」


その場にいた人たちは沈黙を続ける。

そして、2分後にそのビームは太陽に到達した。

地球外生命体は跡形もなく消滅したけど、地球も道連れにするという考えみたい。


ビームは太陽の中心を外した。

でも、太陽は大きく光り、3分の1ぐらいの塊が飛ばされる。

その塊は、ものすごいスピードで太陽系の外に向けて飛んでいった。


その日から太陽の熱量は大幅に下がることになる。

地球の気温も急激に下がっていく。

1週間も経たないうちに30度も下がり、海も凍り始めた。


「彩華、どうしよう。」

「太陽を活性化する方法はわからないから、飛ばされた太陽の欠片を戻すのが一番わかりやすい。太陽は、質量が戻れば、もとの熱量になると思う。でも、応急措置として、地球に熱を温存する対策を講じようと思う。」

「どうするの?」

「私が昔いた地球では温暖化という問題が起きていたの。二酸化炭素の量が増えて、それが温室効果ガスとして地球に熱を閉じ込めてしまい、どんどん地球が熱くなってしまうという現象。とりあえず、それでいきましょう。」

「彩華が自信ありそうだから大丈夫だと思うけど、気温が上がりすぎるということはないの?」

「大丈夫。この世界に来てから、時空の問題だけじゃなく、昔の世界で大問題になっていた地球温暖化についても、地球外生命体のデータベースを使って研究していたの。だから、問題になったらすぐに、温室効果ガスを排除する装置はできている。ただ、私の計算だと、圧倒的に活動が弱くなった今の太陽だったら、そんな心配はなく、ちょうどいい気温を維持できると思う。そして、すぐに太陽の欠片を戻すよう、物体の瞬間移動装置を使う。軌道計算とかで、そちらにはまだ少し時間がかかる。」

「彩華がそこまでいうなら任せる。早く取り掛かって。このままだと、生き残った人も死に絶えてしまう。」

「わかった。」


私は、二酸化炭素、メタン、フロン等を大量に空中に放つ。

1カ月後頃から、徐々に気温は上がり、元に戻すことができるはず。


そして、速やかに太陽の欠片の現状位置を測定した。

私の計算だと、太陽の欠片は現在、3つに分かれているはず。


太陽の質量を戻すだけなら他の方法もある。

木星を太陽に移動させて合体することも考えた。

でも、そうすると、太陽系外からの隕石等が地球に衝突するリスクが増える。

そのリスクを木星とかが守ってくれていたから。


太陽の欠片の位置を特定し、太陽に戻るよう時空を歪める。

戻すためには1カ月はかかる。その後3カ月ぐらいで元の太陽に戻るはず。

そして、その2カ月後に、温室効果ガスを地球外に放出するようセットした。


これで全てが上手くいくはず。

私はみんなのために役立つことができた。


今、この世界に来た時に澪さんから与えられた研究室にいる。

あの時の資料を回収しようと。


窓から海を眺めていた。

凍りついた海に沈む太陽が周りをオレンジ色に染め、美しい。


私は、この美しい地球を守ることができるはず。

私が生まれた意味を初めて実感することができた。


でも、2人の竜也と、郁子さん、美紗さんを救えなかったのは心残り。

一番、大切な人を守れなかった。

地球を守ったことで、このことを無かったことにできるわけじゃない。


でも、こんなに平穏に、快適に過ごすのは久しぶり。

平和ってとっても大切なものなのね。

頭ではわかっていたけど、経験しないと本当のことは分からない。


その時だった。

目の前に見慣れない生物がいることに気付く。

そして、その生物は、私のお腹に弾丸を撃ち付けた。


私は床に倒れ、血が床に流れ出ている。

こんなに大量の血が出ると、私もここまでかな。

これはやばいやつだ。


竜也達を守れなかった報いかもね。

やっと、竜也とあの世で会える。

2人の竜也が私を争って喧嘩するとかはやめてね。

そんなことないか。笑っちゃうわね。


目の前には、床のカーペットしか見えない。

あの美しい夕日をもう一度、見たかったかな。

澪さんにお別れができなかったわ。

でも、充実した人生だった。


改めて振り返ってみると、結局、結婚も出産もしなかったわね。

でも、なんだろう、この達成感は。

私の得意なテクノロジーの研究で、周りの人は褒めたたえてくれた。


そんな自分が誇らしかった。

私が欲していたのは、そういう自分だったのかもしれない。

1つでも最高の願いが叶えば幸せだもの。


私の部屋には、銃声を聞きつけて数人の兵隊が入ってくる。

いきなり現れた地球外生命体に集中砲火を浴びせていた。


もう、その生命体は動いていないから死んでいると思う。

もしかしたら、この生命体の母星が破壊され、復讐だったのかもしれない。

言葉が通じないから、何を考えていたのかは最後までわからなかった。


太陽は海に沈み、辺りは暗くなって星が輝き始める。

凍りついた海に星が映り、上も下も満点の星に包まれる。


地球が、この美しい自然を守った私を暖かく見守っているのね。

そして、今、月から見ると、青い地球が美しく輝いているんだと思う。

美しい地球、澪さんが、これからもずっと美しく輝かせてくれると思う。

さようなら。

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