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ブラックリスト  作者: 一宮 沙耶
第2章 物質瞬間移動(西暦2027年/ 西暦2094年)

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5話 戦勝記念日

竜也との共同生活は続き、私を守る竜也へのお礼をしたいと思っていた。


「ねえ、竜也さん、今夜は一緒に夕食を食べましょう。まだ、お酒は飲めないと思うけど、私は飲むわよ。リラックスした気分で、竜也さんのことをもっと知りたいの。」

「わかりました。」


贅沢ではあるけど、夕食は牛肉のステーキにした。

最近は、さすがに人間の肉は食べていないと聞いている。


「竜也さんは、どんな生活をしてきたの?」

「物心ついたときには部屋の中で1人で暮らしてました。」

「敬語じゃなくていいわよ。続けて。」

「後で知ったんだけど、AIによって、男性は他の人と接しないように隔離されていたんだ。女性と違って、集団で反抗する危険があるからって。でも、ある時、澪さん達に解放され、人がいっぱいいることに気付いた。それから2年が経ったけど、まだこの世界には慣れていないかな。」

「この2年は何してきたの?」

「男性は大きく2つに分かれて、1つは瓦礫となった街を片付け、新しい街へと整備をする。もう1つは僕みたいに兵士になる。僕は体力に自信があったから兵士に応募したんだ。」

「頼もしいわね。筋肉とかすごそうだものね。」

「体、見てみる?」

「いえ、そこまでしなくていいわよ。女性と付き合ったことあるの?」

「この2年は兵士としての訓練に専念していて、女性との接点はなかった。こんなにずっと女性と一緒にいるのは、彩華さんが初めてだね。」

「そうなんだ。こんな年上でごめんなさいね。」

「年上っていけないことなの?」

「そうじゃないけど。同じ年齢の女性の方が興味あるでしょう。」

「よくわからない。」

「まあ、気になる女性ができたら言ってね。応援するから。それとも、誰か紹介しようか。」


きょとんとして、まだ何のことかわからないという顔をしている。

こういうことは自然な流れがいいわね。

でも、少しワインに酔ったみたい。


トイレに行こうと席を立ち歩くときに、少しよろけてしまった。

そんな私を竜也はしっかりと受け止めてくれる。


「お酒を飲むと、体のバランスをなくすの?」

「そうかな。」


竜也の堅い腕に抱きかかえられて、元カレとの思い出が蘇る。

あれから時間が経っているのに、また涙がでてきた。


「どうして泣いているの? どこか痛かった?」

「いえ、そうじゃないの。昔のこと思い出しちゃって。」

「女性って、よくわからないな。まあ、もう泣かないで、僕に笑顔を見せて。」

「そうするわ。ありがとう。」


純心な彼には、素敵な人生が待っているはずだから、私が汚したりしてはだめ。

久しぶりに目の前の男性に抱きしめられたい気持ちを抑える。

お酒でふらつく足取りで、竜也に支えられながら自分の部屋に戻っていった。


翌日、もう一人、前の世界から女性がこの世界に来たと聞く。

ただ、私は重力波の研究で会いに行く余裕はなかった。

私と一緒に仕事をすることはなかったから、いつの間にか忘れていく。


最近は、多忙な日々のなかで、もう前の世界のことは関心がなくなっていた。

今更あの世界に戻れるわけではないし、未練もない。


なんか、遠い世界のことのようで、今暮らしているこの世界が一番大切。

そんなことを考えながら、戦勝記念の日を迎えた。


「柚月さん、ホログラムを準備して。」

「はい。」

「じゃあ、スピーチをしてくるわ。彩華さんも、映像をみていてね。」

「はい。」


地球外生命体との戦争がどういうものだったのかは見当がつかない。

でも、これだけのテクノロジーを持つ敵と戦うのはすごいことだと思う。

しかも、人々が殺されるのを目の当たりにして、敵に突進していったと聞いた。


私には、そんな怖いことはできない。

澪さんも、最初は、人と接するのが苦手だったらしい。

そんな人がいきなり戦場で戦うなんて、どんなに苦労したことか。


でも、弱音なんてはける余裕はなかったのだと思う。

それで、敵から人類を解放した。

その後、この世界を復興することにも力を注いだ。


そんな澪さんはすごいと思う。

日々見ていても、澪さんへの周りの尊敬の念、頼る気持ちは強く感じる。

戦勝記念日も、澪さんを讃えたいという人々で溢れているのだと思う。


そんな中で警護の竜也の様子が少しおかしいことに気づく。


「最近、何か隠し事とかない?」

「いや、特に。」

「でも、様子が少しおかしいわよ。何かあったら、なんでも言って。」

「なにか違和感を感じるんだけど、それが何か分からなくて。気のせいかもしれないから、忘れて。原因がはっきりしたら、言うから。」

「そうなんだ。でも、私には何でも相談してね。2人の仲じゃない。」

「ありがとう。」


竜也は首をかしげ、自分の気のせいかもと頭を下げている。

何もなかったのなら、それでいい。

そんな私たちの姿を微笑ましいというように笑顔で澪さんは私に話しかける。


「彩華さん、これを付けて。私たちは、脳にチップが埋め込まれているから、装置とかつけなくても見れるんだけど、彩華さんはチップが入っていないし。もし、彩華さんが良いっていうなら、脳にチップを入れるから言ってね。このメガネは違和感があると思うけど、今日は我慢して。」


柚月さんは、ゴーグルのような装置を私の目に装着する。

耳にも、イヤホンのようなものが入れられた。

電源が入ると、想像をはるかに超える光景が広がっていた。


今、部屋にいるはずなのに、大きな空間が360度広がる。すごい熱気。

こんなにリアルな感覚とは思わなかった。まさに現地にいるみたい。

1,000万人を超える市民が澪さんのスピーチを聞こうと待ち構えている。


司会者が話し始める。


「では、今から戦勝記念日を開幕します。まず、最初に、私たちを地球外生命体から解放してくれた澪さんに、開幕にあたって最初のスピーチをお願いしたいと思います。では、澪さん、よろしくお願いします。」


澪さんが壇上に上がる。

現地参加はできずにホログラムでの参加という説明はない。

みんなががっかりするからかもしれない。


でも、ホログラムでも、いかにも現地にいるみたい。

澪さんは、マイクに歩み寄り、ゆっくりと話し始めた。


私たちは、互いに協力しあうことで、偉大な成果に結びつけることができた。

1人の力では成し遂げられないことも、組織ならできることは多い。


そして、周りの人を大切に思う気持ちが一番大切。

それがあれば、必ず豊かな社会に迷うことなく進んでいける。


この世界は大きく変わった。

昔と違って、目の前にいるのは圧倒的に女性ばかりだけど、大勢の男性もいる。

そして、人々は、男女の恋愛も知った。


これまで接することがなかった男女が一緒にいることの幸せ。

今は一夫多妻だけど、それは時間が解決する。

失恋とか辛いこともあるけど、お互いに支え合うことも増え、生活に彩りが加えられた。


男女が付き合うことで、親子の関係もできた。

子供のためなら命を捧げることもできる。


夫婦、子供、いずれも大切なこと、守りたい気持ちを知った。

守りたいものがたくさんできた。


みんな、昔と違い、家庭を持ち、子供を囲み、笑顔に溢れる生活を送っている。

空中を移動する車で生活圏も広まった。


自分たちの生活は自分たちで守り、より豊かにしていかなければならない。

みんなで、これからも、一致団結して、この地球を、より豊かな星にしていきましょう。


そうスピーチをし終えると、澪さんは、市民の大きな歓声に囲まれる。

そして、横には、澪さんの双子の息子を抱きかかえた旦那さんが微笑んでいる。


澪さんは、雲ひとつない青空を見上げた。それを見て、私も空を見上げる。

その時、まばゆい陽の光に加え、こちらに向かって一筋の炎が見えた。

逃げる間もなく、目の前は光に包まれ、きのこ雲が上がる。


目の前が眩い光で包まれ、しばらく、目が見えない。

私は、ようやく目が見えるようになると、メタバース装置を外して澪さんに駆け寄った。

澪さんは叫び、体を震わせている。


「まずい。ここにいる人たちを避難させないと。」

「早くホログラムの装置を切って、柚月さん。」

「はい。」


ホログラム装置を外した澪さんは、涙ぐみ、咳込んでいた。


「あそこにいた大勢の人達を助けられなかった。この宇宙には、地球を狙っていた敵は1つではなかったのね。人類の闘いは、まだスタートラインに立ったばかり。」

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